幕間

 とある山奥に三人の若い男がいた。


「やってらんねぇ」


 ドレッドヘアの男、篠崎はナイフを弄びながらつぶやいた。


「それな。

 ――ほんとな」


 福田は多重人格者である故に相槌を二度打った。


「流石にそろそろ限界だね」


 木原は眼鏡を人差し指で持ち上げながらそうつぶやく。


 彼らは『白金遊戯の会』の残存メンバーである。白金治正が結成した会だ。


 3人は若くして人を殺した。木原、篠崎は無期懲役、福田は死刑である。

 治正はその権力を発揮し、脱獄に近い形で三人を出した。

 そして、治正の息子である敬之助と共に人を殺し、その映像を治正に提供していた。


 ある日、死体がみつかり、指紋から敬之助、篠崎、木原の三名に足がついた。

 治正は敬之助の犯罪のみ・・を隠蔽しようとした。その際、篠崎、木原は切られてしまったため、今は殺人犯としてでだけでなく脱獄犯としても追われている。

 福田は運よく足が付かなかったものの、バックについていた治正が死んだ以上脱獄犯として追われるのも時間の問題だろう。


 木原、篠崎は指名手配されてから3週間。

 今日までで顔を見られた警官を4名ほど殺害した。


「もう金がねぇよなぁ」


「殺せばいいだろ。

 ――バカ! それいつまで続ける気だよ! 限界は来るぜ!

 ――自首しよう……」


「そうなんだよ。思ったより厳しい――」


 山小屋がノックされた。

 三人に緊張が走る。警察か。それとも。

 篠崎はナイフを手に取る。


「福田君。この中だと君の顔はまだ割れてないんだ。行ってもらえる?」


「りょーかい!

 ――えぇ……」


 福田がドアを開ける。木原は物陰に隠れた。


「――ボンジョルノ! 犯罪者さん達」


 赤いローブを着た男が二人立っていた。

 警察ではなさそうだ。「それではなんだこいつらは」、木原はそう思った。

 篠崎は思考することなくナイフを投げた。


 ナイフは何か見えない壁に弾かれた。


「?!」


 三人は動揺した。

 木原は隠れていたソファの後ろで心臓に手を当て、心を落ち着かせた。今のはなんだ。


「驚きました? 私たち魔術師なんです」


 赤いローブを着た二人の男はみたところ外人だった。

 

「魔術師……?」


「申し遅れました。私はシャルハットと言います」


 金髪の男はそう名乗った。


「あなた達に魔術の力を差し上げましょう。その代わり、私たちに協力してもらいたい」

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