第28話
リーナとそれからも雑談し、お昼をご馳走になって、帰路に着いた。
何か気になる事があったらまた相談しようと話し合えたのは、本当に助かる。
家に着いてから思ったのは、エリザベートが転生者かどうか、ルディかフリードに訊けば分かるのではないかと言う事だ。
二人共、相手の事が分かる異能を持っていたし、おそらく分かると思うのだ。
夜にでも訊いてみようと思い、色々ありすぎて摩耗した頭を休めるために、昼寝して英気を養った。
おやつを食べ終わり、一息つく。
夕飯前に、せっかくだからフェルに連絡してみる事にしたのだ。
リーナと名乗りあってから雑談で確認したのだが、攻略対象者で、トラウマを現在抱えていると思われるのは五人。
フリードリヒ、フェルディナント、シュテファン、ロタール、そしてイザークだ。
フェルディナントは、女性の様な容貌を気にしていて、シュテファンは自分の夢を否定されている事、ロタールは勿論、攫われた事だ。
そしてイザークは家で孤独な事。
一番の問題のフリードリヒはルディアスより劣る自分。
ロタールの攫われた事についてのトラウマは、どうしたら良いか分からない。
リーナも一番最初にクリアしたし、タイプじゃないから良く覚えていないというのも大きい。
だから現状、ロタールに気を配って、悩みがあるなら聴く感じで大丈夫だろうとの事だ。
彼のルートはそれ程問題とかは無かった、はず。朧げな記憶だが、とのリーナの言葉を信じるしかない。
シュテファンについては、以前トラウマを吹っ切った気がするのだ。
私の単純な言葉で、元々心が柔軟らしいシューは、思い切りよく魔石の研究も戦闘訓練も頑張る気になったらしく、今も努力しているのは知っているから、大丈夫、だと思う。
リーナも、吹っ切ったのなら大丈夫じゃない、との事だ。
この世界がゲームと類似した世界じゃないかと気が付いてから、急いで思い出せる限りメモをしたらしいのだが、その時点で既に色々忘れていたらしく、不完全だがと、メモをコピーしてもらった。
スキャンして、電子化させた方が良いのではとリーナは言うが、ディート先生とかは機械系に強いから、ちょっと見られたら困る気がするのだ。
信じてくれるかもしれないが、やっぱり否定された時が怖いから、秘密にしておきたい。
日本語でのメモだが、一応、だけれど、心配は心配なのだ。
ルーやフリードは、私の記憶も丸っと見えているらしいので、今更である。
イザークの孤独は、どうなのだろう。
私の事を家族と認めてくれている様な、気はするのだが……
私としても、イザークは家族だと思っているし、そう接している。
以前より、雷雨でも平気になってきた様だし、大丈夫、だと思うのだが、どうなのだろう。
フリードのコンプレックスは、難しい。
一朝一夕にはいかない気もするし、私なりに言葉を以前届けたが、果たしてどうフリードが思っているのか……
なので消去法的に、割とコンプレックス自体は軽かったはず、とのリーナ評のフェルに、ちょっと探りを入れてみようと思ったのだ。
勿論成果はリーナに連絡するのも、お互い確認している。
さて、フェルは今出てくれるだろうか。
そう思いながら、通信機でフェルに繋ぐ。
「どうしたんですか、エルザ?」
フェルは直ぐに出てくれた。
「フェル、ちょっと長話になるかもしれないけれど、大丈夫?」
「ええ、構いませんよ」
フェルが楽しそうに言った言葉に勇気をもらう。
「うん、フェル、気になっている事とか、気にしている事とか、ある?」
単刀直入に訊いた。
回りくどいのは、どうも苦手である。
というか、下手なので、難しい事は考えても失敗するのが目に見えている。
「気にしている事、ですか……」
フェルが難しい顔になった。
「何かあるの?」
どうも気にしている事がありそうな感じだ。
「ええ、その、なんと言いますか……一族で集まった時に、女性方が、私とは結婚したくない、という話題がよく出まして……」
その言葉に素直に驚いた。
「え、何故? フェル、気が利くし、思いやりもあるし、良い子なのに」
私の言葉に苦笑しながらフェルが言った。
「ありがとうございます。まあ、その、私と並んだ時に、夫より確実にブスと言われるから、だそうです」
首を傾げた。
「ルディやフリードの方が綺麗だよね? 二人も、というか、紫の瞳の男性は皆そうじゃない?」
「ああ、それはですね、他は、まあ、私と違い、容姿が整っていても、男性的な容姿だからまだマシだと言われました」
成程。
確かにフェル以外は男性だと分かる感じだ。
あれ? でも
「シューも女の子っぽい顔よね? それは良いのかな?」
私の疑問にフェルは諦めた様に笑いながら
「シューは、可愛い系なので、まだ良いらしいです。綺麗系は、絶対にブスだと思われるから、無理、だとか……妻よりも美人な夫とか嫌だ、と言われました」
「そう思うのは、人それぞれじゃない? フェルの良い所を見てくれて、容姿なんて関係無い! っていう人だっていると思うよ」
私の言葉を聞いたフェルは、どこかホッとした様な、安堵な表情になる。
「そうですよね。私を見てくれる人だっていますよね。ありがとうございます、エルザ。なんだか楽になりました!」
珍しくテンションが高い。
かなり気にしていたのかもしれない。
目を丸くしていた私を見て、フェルはクスリと笑った。
「フェル、どうしたの? 私の顔に何か付いてる?」
「いえ。何も付いていませんよ。ただ、エルザの言葉は、いつも素直に心に届いて、心を温かくしてくれるな、と思いまして」
フェルは心底嬉しそうに言うのだ。
「そう? 私、いつも思った事を言っているだけよ?」
フェルは、温かい笑みを浮かべながら
「エルザは基本的に素直だからかもしれませんね。不思議と一緒にいるのは心地好いですよ」
私は首を傾げながら、思った事を言った。
「ありがとう。でも、わたし、我が儘だと思うよ。自分勝手だし。だから素直に見えるのだと思う」
フェルは苦笑しながら
「エルザが我が儘で自分勝手なら、皆そうですよ。エルザは、どうか、そのままでいて下さい。あ、でも、もう少し自分を評価して下さいね。後、自分を大切にして下さい、お願いします」
何やら真剣に頼まれた。
「あまり自覚が無いけれど、ありがとう。あの、頑張ってみる」
フェルが、私を案じて告げてくれた言葉に、私は有り難く思いながら、肯いた。
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