第2話

「やあ、車に轢かれたがもう大丈夫なのかい。」


ここは病室、先程の受刑者が轢いた被害者の個室だ。


「ああ、でももう釘は打てそうにない。残念だよ槌を使ってアレを壊せないのは。」


右肩に巻かれた包帯をさすりながら話す。


「君の生涯はアレに変えられてしまったからね。」


「そう、言葉のナイフを何度もね。多数決を盾に突き進む馬鹿共にブッ刺す釘を作っていたんだよ。」


彼は握り拳から血が滲み出る程に握りつぶしていた。


「そう、君はそれだけの為に人生を捧げてしまった。」


「あんな奴らが幸せになっていること自体おこがましい。思春期を奪ったんだ、人生を奪っても悪くない。」


「難しいね。人生を奪うのかとは思うけれど人生に一番悩み、悔やみ、そして選択を迫られる時期。それを壊しされたら未来を狭められたのと同義とは言える。」


「いじめは処されることは無い。だから復讐したくなるんだ。貴方に出会わずとも俺は奴らに復讐した。」


「まあ、遅いか早いかの違いだしね。彼らは法に守られて過ぎていたことを自覚していなかった。」


「そうだ、法の壁はなんぞ俺の復讐心の前では何の意味もなさない。」


「それで君はあんな兵器を作り出したのだから。まあ止めはしないが難しいね人生は。」


「それに関しては同感だ。俺が復讐の心を冷めさせることができたのなら家庭でも築いていたかもしれない。でも俺は過去を振り返って過去の自分が弱く脆く、何故我慢し何故孤立しなければならなかったかが当時は分からなかった。」


「そう、僕もそうだけど中途半端に突き出た思考を持つと彼らは異端として扱う。まるで哲学者見たいなんだけど彼らとの違いは大人で考えたのか子供の未熟な経験から考えたのかが仲間というグループを形成する上で大きな歪みを生む。」


「俺は彼らとの足並みを揃えられなかった。彼らには犯罪的思考に見えても歴史的思考とは捉えられなかった。」


怒りが収まってきたのか拳を握るのを辞める。


「経験だけでは愚者、知識だけでは賢者。有に疑問すれば哲学者。果たしてどれが正解なのかね。ゆとりの前までは賢者でよかったかもしれないけど、今の社会の考えは本当に分かりづらい。」


「俺にもあんたの考えは分からないが社会が難しいってのはわかる。」


「知らなくても生きていけることだしね。分からなくても困らないし大丈夫だよ。じゃあいい最期を願っているよ。」


「ああありがとう。」


彼は今までにないくらいの笑顔だった。


それを見届けて病室を出た。

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