第50話
「後院の
「後院の女御様?母君様に言われたか?」
尚も面白いものを見る様に、琴晴を見つめて言われる。
「陰陽師、母君様はその呼び名をお好みではない」
「はっ?」
お揶揄いになられている事は承知しながら、琴晴は再び立ち尽くす。
「後院の女御だ……〝妃〟はえらくお気に召されておるから、そう呼ぶ方がいいぞ」
「……さ、さようでございますか?」
恐縮したりの琴晴を、神楽の君様は可笑しそうに一瞥される。
「人間と我らとは感覚が違うからな……まぁ上がれ」
そう言われると、
琴晴は
するとフッと、何やら
「………」
簀子の広縁に立ち尽くして眉間を寄せる。
琴晴が額に指を当てて思案を巡らせていると、可憐で中世的な女房が、
「お前達陰陽師は、式神とかを使うそうだが……」
女房は
当然の事ながら琴晴は見入っている。
「真の精は美しかろう?」
「精?」
「木霊だ……」
神楽の君様は嘲笑する様に言われた。
「そなたが気に入ったのであらば、仲を取り持ってやらぬわけではない」
「は?」
「奴らは縛りが無いからな、神か大神が許せばそなたに嫁せるぞ」
神楽の君様は、それは意味深く笑みを浮かばれて言われる。
「はあ……」
「まっ……木霊も気にいらんと駄目だがな。以前、銀悌が神山に赴いておった時に、屋敷を荒れ放題にしてしこたま叱られた」
琴晴は神楽の君様を凝視した。
先程と打って変わって、それは愛らしい言い方をされる。
それ程に銀悌との絆は深いらしい。
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