第49話
門の中に通されて、琴晴はちょっとした違和感に気がついた。
上級貴族が好む寝殿造りでは無い事だ。
上皇様が最も寵愛なされ、今上帝様がお兄君様とお慕い申し上げておられる、神楽の君様のお屋敷にしては、陰陽博士にもなれぬ陰陽師の琴晴の屋敷よりもショボいかもしれない。
寝殿造りの特徴の北、東、西の
大体超絶貴族の屋敷は壁がある渡殿で、通路の片側に
それだけではない、女房や
そんな下世話な事を考えて、大貴族には欠かせない、自然とマッチした風情ある庭や池なども無い、門から距離だけはある屋敷へ向かっていると、
……何とも罪深きお美しさよ……
琴晴は見惚れる様に釘付けになって、そのお姿から視線を逸らす事ができずに歩を進める。
そして付けぬが恥とされているにも関わらず、烏帽子などの冠をお付けになられない為、長い黒髪が揺れて、それは艶かしい。
「陰陽師ではないか?」
「主上様の妖の精の折には……」
「……そなた、あれを未だに妖の精と申しておるか?」
神楽の君様は、それはつぶらな目を、わざとらしく見開かれて言われた。
「はっ?」
簀子の広縁までたどり着いた琴晴が立ち尽くす。
「……その様な陰陽師が何用であろうか?」
再び面白おかしくお聞きになられる。
さすがの琴晴も、ご身分が違い過ぎると知りながら、ムッとした表情を隠せない。
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