第40話 空模様
その日、文緒は縞柄のTシャツを着ていた。いわゆるボーダーだ。白地に青い線が夏らしくていいと思った。
休日だったので、とくに急ぎの用や約束があるわけではなく、気の向くままに買い物を楽しんでいた。
ショッピングモールのなかにあるフードコートで、コーヒーとドーナツの軽い昼食をとった。
そのとき、ガラス張りの外壁から外をながめた。
地上には多くの人が歩き、車道に車もあふれている。
いつもの休日の風景。
だが、なんとなく奇異な感じがしたのは空模様だ。まさしく、空に模様がついている。まるで文緒の着ているボーダーのTシャツのように、空に太い線の濃淡がくっきりと描かれ、縞模様になっていた。たまたま白い雲と雨雲が折りかさなり、そんなふうに見えるのだろうが、それにしても空の上から下まで、等間隔に何本もキレイに線が横切っている。
淡いブルーグレー、黒、淡いブルーグレー、黒、たまに白。そしてまた淡いブルーグレー、黒……。
あまりにも描かれたような模様だったので、文緒は数分のあいだ、まじまじと空を見つめていた。
すると、雲の境界が妙にトゲトゲして見えた。一直線ではなく、よく見れば波打っている。
何かの毛のようだと文緒は思った。動物の毛がビッシリと空一面に生えている……?
まるで空を覆いつくすほど巨大な縞模様の何かが、そこに立っているかのような?
すると、その瞬間、空の上部から黒い長い触手のようなものが伸びてきて、歩道を歩く人々をからめとった。
舌だ。
アリクイが蟻を捕食するときのように、舌で器用に人間を吸いとっている。
文緒はあまりのことに呆然としてしまった。
そのうち、空の横縞は薄れて消えた。
以来、文緒はボーダーを着ない。
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