第10話 <現状>

 アリアたちを乗せた輸送船は、ワープ航法から通常航行に移った。

 眼下には、宇宙連邦中心国家の一つであるレザリア王国の前線拠点、惑星テラが見える。

 テラは、現在避難民の一時待機場所兼神兵団及びレザリア航宙軍の最前線基地になっていた。


「輸送船03よりコントロール。作戦成功。着陸可能なポイントへの誘導を求む」


 アリアが、地上の管制官に向けて呼び掛ける。返事はすぐに返ってきた。


『コントロールより輸送船03。六番パドッグに着陸可能。その際、四番滑走路を避けて着陸せよ』

「四番?了解……」


 管制官からの指示を操縦士に伝え、六番パドッグに向かってもらう。

 ギアを下ろし、パドッグと接続。側面から階段を伸ばして避難民を施設に誘導する。

 子供たちを抱えてラズウェルが降りてくる。それに続くように、お年寄りの手を引いてアリアが降りる。

 地上で待機していた兵士に引き継ぎ、アリアたちは報告のために基地へと入ろうとした。

 その時、けたたましくサイレンが鳴り響き、緊急時の消火用車両が慌ただしく滑走路を走っていった。

 アリアが空を見上げると、翼から出火している戦闘機が四番滑走路に進入するところだった。


「そういうこと。確かに輸送船は邪魔よね」


 見た限り、機体をふらつかせていたので相当危ないのだろう。

 仮に四番滑走路付近を輸送船が通過していれば、激突していた可能性もあった。

 消防官の声が聞こえ、反対からは整備士たちの声が聞こえてくる。


「とっとと空けろ!まだ次がくる!」

「四番はダメだ!管制に他の滑走路に誘導するよう伝えろ!」

「おい!帰投する機体少なくねぇか!?」


 どうやら、あの戦闘機編隊はスクランブル発進した機体のようだ。

 整備士たちの話から察する限り、かなりこっぴどくやられてしまったようだが。

 ラズウェルは、近くにいた護神聖騎士団の少年に話を聞いていた。


「スクランブル?何を相手にしたんだ?」

「あぁ!あれは領空に侵入してきたドラムグード王国の戦闘機隊を迎撃に上がった機体ですね。あれはひどい……」


 さらに話を聞くと、アリアたちがオルステイン王国で救助に当たっている間、ドラムグード王国の戦闘機による攻撃は三回あったそうだ。

 そのうちの一回は全滅寸前まで追い詰められたとか。


「でも、良かったです。基地が暗い雰囲気だったので、お二人の作戦成功は明るさを呼んでくれるかと」


 少年は、アリアたちに頭を下げると、自分の任務へと戻っていった。


「とりあえず、カレンに報告に行きましょ?」

「うん、だな」


 二人は基地に入り、特祭隊に割り当てられた一角へと向かった。






「ご苦労様。これで、シールド外の住民の八割が回収完了したな」


 アリアからの報告書を片手に話しているのは、特祭隊の隊長リーダーであるカレン。だが、華々しい戦果のはずなのに、カレンの表情はどこか沈んでいた。


「カレン?何かあったの?」

「実はな、また勇者候補を潰された……」


 それは、アリアたちが出発して四時間後のことらしい。

 世界樹は神託で新たな勇者の誕生を予見した。そこで、カレンはすぐに護神聖騎士団に保護を依頼したという。

 神託にあった地で無事勇者候補を発見。連れ帰ろうとしたところ、突如ドラムグード王国の奇襲を受け、部隊を全滅させられたという。

 勇者候補をドラムグード王国によって潰されるのは、これでもう五人目だ。


「あいつら……分かっててやってるのかしら?」

「そうだろうね。僕のミスだよこれは」


 カレンがうなだれる。

 少年の言っていた通り、基地の空気は重かった。かなりの被害を受けているらしい。

 特に被害が大きいのがレザリア航宙軍で、戦闘機の四割を喪失したとか。

 カレンの愚痴漏らしが始まり、長くなりそうなので、アリアたちはひとまず先に退散する。

 カレンは、アリアたちがいなくなったことに気づかないまま愚痴り続けていた。

 そっと扉を閉めると、後ろから別の人物に話しかけられる。


「アリア御姉様。戻ってたんですね」

「ええ。確か……ミーシャも任務だったわね?どうだった?」


 アリアたちに話しかけたのは、特祭隊の主守護手メインブロッカーのミーシャ。

 彼女は、惑星ビルピンへの潜入任務から帰ってきたところだった。


「危なかったですよ。敵に正体を看破されて上階兵と交戦したんですから……」

「上階!?よく無事だったね……」

「まったくですよ」


 ミーシャは、カレンへ報告するために部屋へと入っていく。

 扉を開けたとたん、カレンの愚痴が再び聞こえてきた。巻き込まれないように部屋から離れるアリアたち。

 作戦が終わったので、しばらくは休暇をもらえたはずだ。

 二人は、テラに建てた別荘に向かう。久しぶりに、我が子の姿を見るために。

 ここ最近、任務続きでまともに会えていなかったのだ。親子の時間をそろそろもたなくては。

 基地から出てタクシーを捕まえる。そして、二人はそのまま別荘に向けてタクシーに走ってもらった。

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