連邦ストーリー1

光の再集結

第9話 <勇者再臨>

 ビルピンがドラムグード王国に占領され、軍事基地へと作り替えられてから、今日で二ヶ月。

 その間に、ドラムグード王国はさらに軍を進め、連邦加盟国をさらに四つほど占領した。

 この緊急事態に、宇宙連邦軍は神兵団と聖天龍の出動を検討するまでに追い詰められた。

 だが、ドラムグード王国軍は突如後退。ビルピンに建造した基地に兵力を一部残し、本国へと撤退していった。

 この機を利用して、世界樹はシールドを縮小。新たに強固に張り直した。

 そして現在、ドラムグード王国はビルピンの兵力を動かしてシールド外の連邦国家に襲いかかり、連邦軍は救助と国土放棄を進めていた。







「てめぇら!ガキどもを逃がすな!」


 ここは、シールド外の国であるオルステイン王国の王都アーダン。

 現在この地は、ドラムグード王国軍による侵略を受けていた。

 町中で部下に指示を出し、自らも破壊と殺戮に明け暮れるこの男は、今回の軍の指揮官を務めるイスファーという。

 ドラムグード王国は、兵士を階級別に分けていた。

 上から、四天龍・神階・天階・上階・下階の順に分けられている。

 イスファーは、その中でも下階に属する兵士だった。だが、その実力は本物で、戦闘に向いていない上階の兵士と張り合えるほどだ。

 そして今、とある姉妹がイスファーの魔の手に落ちようとしていた……。


「いや……お姉ちゃん……」

「やめて!妹には!」

「うるせぇよ。部下たちの訓練も俺の仕事なんだ。てめぇらはそのための木偶人形になるんだ!」


 イスファーは、その手を泣き叫ぶ妹の肩にかける。


「っ!やめて!」


 すぐに姉が妹を庇うが、イスファーの配下にすぐに取り押さえられてしまう。

 邪悪な笑みを浮かべるイスファーに対し、新手の兵士が襲撃を仕掛ける。彼は、オルステイン王国軍だ。


「貴様!その子から手を離せ!」


 だが、イスファーはそんな兵士に顔を向けることもなく、唐突に回し蹴りを見舞った。

 その衝撃波は、風の刃となって兵士に到達。体を上下に引き裂いた。


「俺は魔拳闘ブラックファイトのプロフェッショナル!そんなちゃちい剣で止められると思うな!」


 イスファーは、その体を怯える姉妹に向ける。そして、その手に魔力を集中させた。


「久しぶりに練習だ!"星拳突き"!」


 星をも砕くと噂される一撃が、無抵抗の姉妹に迫る。死を覚悟して、目をつぶる姉妹。

 だが、肉と血が飛び散る音の代わりに聞こえてきたのは、イスファーの配下の悲鳴と金属音。

 イスファー渾身の一撃は、血に染まった金色の剣に止められていた。

 その血は、恐らくイスファーの配下のものだろう。

 イスファーは、その剣の持ち主である少女を睨み付ける。


「てめぇ…!俺の部下をよくもやったな!てめぇも殺してやらぁ!」


 半歩下がって攻撃体勢に入る。

 放つのは、イスファー最強の一撃。全力をもって敵を排除する。


「砕け散れや!"幻想の破壊拳オーロラフィスト"ォォォ!!!」


 莫大な魔力の影響で虹色に見えるイスファーの一撃は、結果を言うと意味がなかった。

 拳は少女に届いたが、少女は手にした剣で軽く流しただけ。少しもダメージを受けなかった。

 そして、反撃として剣を一振り。イスファーの体に赤い線が引かれ、宙に赤い花が咲く。


「っ!がはっ!?てめぇ……」

「闇の手先の兵士め……。ちゃちい剣に倒される気分はどう?」


 澄んだ少女の声。だが、その内容はイスファーにとって死刑宣告だった。

 意識を失い、赤い水溜まりに沈むイスファー。それっきり、動くことはない。

 指揮官であったイスファーを倒され、混乱に陥ったドラムグード王国軍。即座に後退に転じた。

 少女は、剣を鞘に納めて姉妹に近寄る。


「もう大丈夫。悪い人はやっつけたから。貴女たちは、この先に向かって。そこに仲間のお兄さんがいるからね」

「ありがとうお姉さん!」

「勇者様ですよね?お名前を…!」


 姉の女の子が、遠慮がちに聞いてくる。

 少女は、ふっと微笑んでから、優しい目を姉妹に向ける。


「私はアリアよ。特祭隊の副隊長サブリーダーなの」


 少女――アリアは、姉妹を送り出してから、逃げ遅れたドラムグード王国軍を狙う。


「よくもここまでやったわね!報いを受けなさい!」


 アリアの煌聖剣シャイニングソードから、光の矢が放たれる。

 それは、逃げ遅れていたドラムグード兵たちを貫き、骸へと変えていく。

 アリアの攻撃が終わる頃には、町中のドラムグード軍は一掃されていた。

 救助対象がもういないことを確認し、自らも脱出船に向かうアリア。途中で先ほどの姉妹に追いつき、一緒に手を握って走った。

 脱出船の入り口には、一人の男性が立っている。彼は、アリアたちの姿を確認して、操縦室に何かメッセージを送った。

 アリアは、姉妹を船に乗せて、外にいた男性に町の状態を知らせた。


「もう全員収容した!彼女たちで最後よ!ラズウェル急いで!」

「分かった!脱出だ!」


 全員の搭乗を確認し、ゆっくりと浮かび上がる脱出用の輸送船。そのレーダーは、接近する航空機を捉えて警告を発する。

 ドラムグード王国は、戦闘機二機をぶつけて沈めようという魂胆のようだ。


「させるか!"荷電流パルス"!」


 ラズウェルが放った魔法により、接近する戦闘機が不具合を起こす。飛行はできるが、攻撃はできないようだ。

 今が逃げるチャンス。逃してはならない。


『ワープに入ります!着席を!』


 操縦室からの連絡を受け、アリアたちは手近な椅子に座る。直後に、輸送船はワープに突入した。

 こうして、アリアたちはオルステインの住民の救助と脱出に成功した。

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