第6話 <王都陥落>

 王都ゲルバンテールへと戻ってきたグルバリアス。即座に王都の封鎖令を発令する。

 玉座に座ると、戦場での恐怖が甦ってきた。


「ふざけるな……。あんな化け物にどうやって勝つんだよ……」


 父の忠告を思い出す。降伏しろとの忠告は、間違ってなどいなかった。

 もう、すべてが手遅れだろう。

 あまりの恐怖で心細くなる。

 グルバリアスは、妹たちに慰めてもらおうと部屋へと向かう。

 いつも困っている時に慰めてくれる妹たちは、グルバリアスの心の支えでもあった。


「ユーリ。ミネア。入ってもいいか?」


 ノックをして返答を待つ。だが、いつまでも返事はない。


「ユーリ?ミネア?」


 おかしい。いつもならすぐに返事してくれるのだ。眠っているなんてことは……。

 その時、グルバリアスに嫌な考えが浮かぶ。

 親衛隊がいると報告は受けていたが、戦場でその姿は見ていなかった。

 ならば、奴らは何をしていたんだ?

 いてもたってもいられず、部屋に飛び込むグルバリアス。

 部屋の中は、至って静かだった。グルバリアスが予想していた血痕のような類いもない。

 

「なんだトイレか?……脅かすなよ……」


 グルバリアスは部屋の中央へ進む。そして、あることに気がついた。

 部屋の窓が開けっぱなしになっており、カーテンが揺れている。

 実は、ユーリは以前無謀な強姦魔に部屋に侵入され、犯されそうになったことがあった。

 その時の強姦魔はすぐにグルバリアスに殺され被害はなかったが、それ以来開いた窓がトラウマになってしまっていた。

 つまり、ユーリが窓を開けたままにするなどないはずなのだ。


「おいおいまさか…!拐われたのかよ!」


 人質として連れ去られたのなら、これ以上ない効果を発揮するだろう。

 親衛隊なら、警備の硬い城から二人を連れ去ることも容易だったのだろう。

 すぐに部屋を出て玉座へと戻る。

 王の部屋の扉を開けると、中には数人の将軍が集まっていた。皆、光が宿っていない目でグルバリアスを見る。


「何だ?どうした?」

「……ここまでです。王都が……完全に包囲されました……」


 顔色を変えて窓からの景色を見るグルバリアス。

 将軍たちの言う通り、王都の周囲を取り囲むように軍が展開されていた。掲げる旗は、ドラムグード王国九割、ブリューク王国一割だ。

 王都の正門の前、一際戦力が整った集団の中から数名の兵士たちと親衛隊、龍牙とブリューク王国の国防長官が歩み出てくる。

 その後ろから引かれてくる物に、グルバリアスは目を見開いた。

 木で作られたそれには、両手を縛られ吊り下げられたユーリとミネアの姿。やはり拐われていたのだ。

 拡声魔法を使い、龍牙が呼び掛けてくる。


「ボーティク王国の王よ!見えるか!お前の大事な妹たちは預かっているぞ!助けてほしかったらそのガラクタの寄せ集めのような城から飛び降りろ!そしたら考えてやらんこともないぞ?」


 龍牙の言葉に笑い出すドラムグード王国軍。

 その言葉を聞いた将軍たちは、必死でグルバリアスを止める。


「お待ちを!罠ですぞ!」

「だが!このままではユーリとミネアが!」

「ふーん?妹たちに話を聞こうか?今の気持ちは?」


 龍牙が拡声魔法をユーリたちに使う。

 ユーリたちは、思っていることをすべてありのままに叫ぶ。


「お兄様!私たちのことはいいから!国のために!」

「こんな非道な連中に屈しないで!お兄様は生きてぇぇぇっ!!」

「……だそうだ。正直つまらん。……ミネアとやらを降ろせ。ギャレル!」


 ミネアの拘束が解かれ、地面に倒される。

 龍牙の横に控えていたギャレルが刀を抜き、その刃をミネアの首筋に添えた。

 遂に耐えきれずにバルコニーに飛び出すグルバリアス。大声で懇願する。


「やめてくれ!ミネアは……ユーリは助けてくれ!」

「だったら、そこから飛び降り自殺すればいいだろう?」

「やめてお兄様!お兄様ぁぁぁ!」


 グルバリアスは、今までにないほどの笑顔を見せる。その手をバルコニーの柵にかけて。

 そして、一気に柵を飛び越えた。

 王都に鈍い音が響き、住民たちの悲鳴が聞こえてきた。


「あ……あぁ……お兄様ぁぁぁ!」

「うるさい……黙れ……」


 泣き叫ぶミネアの腹に、龍牙は蹴りを入れる。

 血を吐いて意識を失うミネア。

 吊り下げられたユーリも、ギャレルが刀の峰で意識を刈り取る。


「龍牙様。こいつらどうします?」

「兵器を買いすぎた。少し軍資金が心許ない……」

「了解しました。またドーク商会に卸しておきますね」

「頼んだ。……あの廃材の街を焼き払え!」


 ドラムグード王国軍から、多数の歩行戦車が歩いてくる。

 ビームを乱射モードに切り替えて、王都全域に撃ち始めた。

 住居が砕かれ、住民たちが消し炭にされていく。街を赤い炎が覆い尽くしていく。住民たちの悲鳴が聞こえてくる。

 ブリューク王国の兵士たちは、もう何も言葉は出ない。


「ルミナ様がいなければ……俺たちも…!」


 龍牙は、オマケと言わんばかりに爆撃魔法をゲルバンテールへと叩き込む。

 城壁の内側には、もはや塵しか残っていない。


「さーてと。アスラ様に報告しに行くぞ。ついでにこの星丸ごと軍事施設に変えてしまえ。丁度<マシンホエーラ>の整備施設が足りないと相談されていたし……」


 龍牙と親衛隊、そしてブリューク王国軍はブリューク王国へと引き上げていく。

 残ったドラムグード王国軍は、ボーティク王国で残った街すべてを破壊するために軍を各地に派遣していった。

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