第2話 <親衛隊選抜>

 玉座の間は、異様なボルテージに包まれていた。

 それもそのはず。これから、親衛隊選抜を開始するからである。

 親衛隊への入隊。それ自体が、ドラムグード王国では最高峰の栄誉である。故に、ドラムグード王国の兵士たちは、親衛隊への入隊を目指して研鑽を重ね、ライバルを蹴落としている。

 まぁ、親衛隊は四天龍が決めるので、どれだけ努力しても選ばれなかったり、意味不明な理由で選ばれたりすることもあるのだが……。

 

「ではまず、紫の親衛隊からよ」


 リリカが言うと、紫の邪神龍ソーマが前に歩み出る。

 紫の親衛隊の発表と聞いたとたん、兵士たちのテンションが下がった。

 そう。このソーマこそが毎度毎度意味不明な理由で親衛隊を決めている犯人なのだ。

 その選考条件は、(強くて可愛い女の子)。

 龍牙と明日葉が、この条件を聞いて盛大なため息を漏らしたことは言うまでもない。

 そしてまた、意味不明な理由による選抜が始まる。


「じゃあいくよー。呼ばれたら前へ。

第十席!〔灼熱の踊り子〕マルカ=ヒーニア!

第九席!〔剣神の頭脳〕御剣切歌みつるぎ きりか

第八席!〔快楽の殺人鬼〕エミリア・アールス・シャスター!

第七席!〔嫉妬の魔女〕ルヴィス・B・ゴラニオ!

第六席!〔双賢の妹〕高橋魔衣たかはし まい

第五席!〔双賢の姉〕高橋癒美たかはし ゆみ

第四席!〔永遠の命〕ニヴィ=エルダ!

第三席!〔死を運ぶ死神〕ステラ・ステリオ!

第二席!〔異次元からの攻撃〕メトラ=エクセル!

そして……首席!〔殲滅の剣神〕御剣裂夜みつるぎ さくや

以上の十名を今期の紫の親衛隊とする!」


 紫の親衛隊に選ばれた十名が、リリカに向かって一礼。元の位置へと整列し直す。

 そして、ソーマがリリカの横にある四天龍専用の席につくと、リリカが続きの発表を促す。

 その言葉に従い、次は赤の邪神龍である明日葉が発表を始める。

 同時に、兵士たちの盛り上がりが再燃する。

 明日葉は、意味不明な理由では絶対に選ばない。つまりここで呼ばれれば、キャリアコースは確定だ。


「次は赤の親衛隊ね。

第十席!〔紅の騎士〕マーキス=オルター!

第九席!〔泡沫の幸福〕ゲルニカ・アールス・シャスター!

第八席!〔鮮血の乙女〕カミラ・ジャネット!

第七席!〔血に濡れた呪い師〕暁緣あかつき よすが

第六席!〔炎の戦車〕ガルマリオ=アレックス!

第五席!〔狂気の道化〕マティアス・A・ベクター!

第四席!〔烈火の侍〕大和武蔵やまと むさし

第三席!〔豪腕の魔人〕ジーク=エルモンド!

第二席!〔破滅の兄妹〕神崎美炎かんざき みほの

首席!〔破滅の兄妹〕神崎蒼炎かんざき アレン

以上の十名!よろしくね」


 発表の終わりと同時に、爆発的な歓声と落胆の声が聞こえる。

 赤の親衛隊に選ばれた十名は、紫の親衛隊に選ばれた十名と同じようにリリカへ一礼。元の位置へと整列し直す。

 そして最後に、青の親衛隊の発表だ。

 今までは前夜祭のようなもの。

 兵士たちは、ホントは青の親衛隊への入隊を夢見ている。青の親衛隊は、ドラムグード王国一の人気部隊なのだ。


「じゃあ発表する。

第十席!〔死神代行〕メルレス=スコボ!

第九席!〔超常の魔法使い〕浅田ミコ!

第八席!〔災渦の呼び人〕ヤミヤミ・アークル・ヘリド!

第七席!〔天を焼き払う者〕ガブリエル!

第六席!〔疑心暗鬼〕ルルシア・アールス・シャスター!

第五席!〔狂歌の指揮者〕アマデウス=ディートリヒ!

第四席!〔幻魔〕フィニア=ハインケル!

第三席!〔生と死の女王〕セシリア=クロイチィア!

第二席!〔霧夜の死神〕ヒルダ=ジャック!

首席!〔魔眼の王〕ギャレル=アストレイ!

青の親衛隊は以上だ。いろいろ大変だろうが、頑張ってくれ」


 龍牙が発表を終える。

 青の親衛隊に選ばれた十名は、今回大幅に入れ替えられた。

 憧れの親衛隊、それも青の親衛隊に入隊できたことにより、初めて選ばれたメンバーは興奮状態だ。

 親衛隊に選ばれたメンバーは、同じくリリカに一礼。

 すべての発表を終え、今回の集会を閉じる。


「第一陣は、これより一週間後に出陣する!各自準備を整えて、戦に備えよ!」

「「おーっ!!」」






 集会が終わり、兵士たちが戦争の準備を進めていく。

 四天龍の三人も、出陣の用意をしようと動き出すが、リリカが止めた。


「どうしましたリリカ様?」

「あなたたちに頼みがあるのよ。聞いてくれない?」

「分かりました。こっちでやるから二人は帰っていいよ」


 リリカの話を聞くのは龍牙に決まった。

 龍牙は、そのままリリカの話に耳を傾ける。


「実はね、弟のアスラが恋に目覚めたようなの。それで、挨拶に行くための護衛をお願いしたいな~……って」

「護衛ですか?自分あんまりやったことないですけど。それに……」


 龍牙が思い浮かべるのは、あの時に守れなかった涼奈のこと。

 あの一件がトラウマとなり、龍牙は護衛任務から遠ざかっていた。


「そこをお願い!今は護衛専門のガーディーさんが封印されてるから……」


 確かに、今までは護衛を白の邪神龍ガーディーが受け持っていた。

 しかし、今はガーディーは封印状態だ。適任がいなかった。


「分かりました。新規親衛隊を連れて任務にあたりますね」


 龍牙は、すぐに部隊を編成しようと動き始める。

 ……龍牙が退室したあと、リリカは呟く。


「ごめんね龍牙さん。今回のこの任務、貴方の心の傷を消すためでもあるから……」


 リリカは気づいていた。龍牙の心の刀に、わずかな錆びがあることを。

 それを磨き、より強大な力とする。

 その力を以て、すべての宇宙を支配することこそが、リリカの真の狙いだった。

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