第94話12月2日一緒に死んでと言ってくれないだろうか

病院に着くと泣いている母が車イスで廊下にいた

涙を止めようとしている

でも止まらない

病室で、お見舞い客の話をする

みんな優しい

よくしてくれる

それが、回り回って、つらい

なんで優しいのかよくしてくれるのか

自分が入院しているからだ

退院した後も元通りにならないからだ

なんでここにいるのか

家に帰りたい

帰るだけじゃない

元に戻りたい


一緒に死んでと言ってくれないだろうか

たったひと月で

俺もたっぷり疲弊した

めまいはずっと

手足、顔にしびれ

全身に倦怠感

気持ちは沈んだまま

あり得ない妄想ばかりしてしまう

ここを抜ければ

辛いのは今だけ

じゃないよね

終わりはこないよね

母も俺も全開で笑えることはもうないよね

笑うシチュエーションに合わせて笑顔作るだけだよね

多分さ

楽になれるのは母が死んだときなんだ

でも俺はそれじゃ楽になれない

そこで俺も死ぬ

そうしてやっと

楽になれる

ずっとそんな思いにとらわれている

俺の判断は意外と間違っていないので

それが

正解は正解なんだよ

だって俺らはニコイチだから


そんなことない、生きていれば楽しいことあるというひとへ

生きたとして

俺たちの人生に責任もってくれるのかい

苦しいだけで生きて

死んでいっても何もしてはくれないよね

俺たちの人生

代わってはもらえないもんね

そういうことなんだ





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る