第58話11月18日記憶が麻痺してしまいました。
日々内臓に蓄積された泥を吐き出す作業をこちらに委ねています。
そうすることで精神が軽くなるかと思っています。
今日、18日、今。
麻痺をしていることに気づき、茫としました。
朝、炊事洗濯をして愛猫の世話をして仕事。
夕方、バスで病院へ。
病院で母とリハビリ、夕食。
帰宅して仕事の続きや事務・手続き作業、そして就寝。
それが現在の、僕の生活です。
思い出せないんです。
それ以前の、母や愛猫と過ごした日常が。
愛猫が廊下を闊歩し、母が洗濯物を干していたはずなんです。
目を凝らせばなくもない。
でも、思い出というよりも記憶というよりも記録じみて、作業的に断片的にパズル的にそこにある。
そんな感じなんです。
記憶が麻痺してしまいました。
忘れてしまったのだろうか。
なくしていくのだろうか。
嫌な汗が背中に噴き出しました。
これからの生活こそが現実であることは理解しています。
拒否するつもりもありません。
けれど、これまでの生活を消し去るつもりもないんです。
当然ながら。
どうしよう。
これじゃあ小中学校の時と同じになる。
それより前の記憶がひどくあいまいで、家族とか生活とかが他人事以上に他人事でしかない、あれと同じになる。
嫌だ。
と思っても、母の半分とともに、僕の半生もなくなっていく。
つらい、悲しい、苦しい、ではなく、怖い。
とても怖いです。
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