第45話自分自分自分 母を慮ることもない

11月12日

お昼

母の部屋へ入る

もってきてもらいたい資料があるとのこと

毎日母の猫のお世話で入ってはいるけれど

その時も極力部屋は漁らずに後にする

母の指定した机の上のカゴを漁ると、本当にたくさんの活動の痕跡がある

福祉推進会

その役員会

こどもクラブ役員会

防災ボランティア

認知症サポーター

それぞれの抱えるイベント参加

手話

それらを掘り返すたびに嘔吐とめまい

とてもしっかり整理され、それぞれのノートにびっしりと情報が

母の字を目にするたびにぎゃあと叫んでしまう

誇張ではなく心臓が痛い

強い強く不整脈

もう二度と書くことができないノート

もう二度と書くことができない字を思うと

どんなに励ましてもどんなに頑張ってもそこには到達できないことを思うと

指先が震えてくる

いまこうして言葉を吐き出しながらも不整脈が内側からどんどんと強く叩く

息苦しい

自分のことばかりだ

自分自分自分

母を慮ることもない

こんなのが俺だったんだと知る

死ねばいいのに

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