第15話何もしてあげられない
病室で 大失敗しちゃったと 号泣する母
家に帰りたくないと ここで死ぬと言う
帰ったってもう人生終わってるしもう廃人なんだからという
何もできない草むしりもできない
花も育てられない
猫の世話もできないと泣く
病室から俺が早く帰りたそうに見えるらしい
そう叫んで鬼のような顔で泣く
確かにある程度帰宅の時間を厳守をしないといつまでもいてしまうからその辺はちゃんとしたいと思ってはいる
それが 嫌なイメージになってしまったんだろうと思うと申し訳ない
この地獄がこれからずっと続くんだろうなと思うとただひたすらに辛い
何をどうもできない
母が死ぬのはいやだ
生きていても何もしてあげられない
手話やスポーツ観戦の話をすると現実に即した話をされたくないと嫌な顔する
とても気位の高い人なのでおそらくそういう場には今後出ていかないかもしれない
僕がしてあげられることは何もない
どんなにいいことをね
お見舞いで言ってるくれても頑張れって言ってくれてもさ
他人ごとだもんなと思ってしまう俺らからしたら
もちろん俺だってそうだよな 大変でどうにもならないのは母で人生終わったんだよと 鬼のような顔で叫ぶのは もう本当に気持ちが痛いほどわかるけれども多分それも俺のひとりよがり
同じ病気であの人はこういう風に回復したとかあの人はこう頑張ってるって言われたってね 自分の身にしてみたらね
車の免許なくして草むしりもできなくなって猫の世話もできなくなって花も育てられなくなって そう叫ぶ母になにが届くというのだろう
それができなくなったのは母で俺らじゃない
何言われてもだよな本当に
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