第61話

折角だからと真行寺が北京観光に連れて行ってくれ、一泊してから帰国する事になったが、寅彦はなんとなく浮かない顔をしている。


「寅、どうした?」


龍介が心配して聞くと、少し笑って答えた。


「いや、真行寺さんのヒントと、グランパの人脈のお陰で、親父に情報官勝負は勝てたけど、結局負けた気がしてさ。」


「ー離婚届?」


「うん…。加奈ちゃんが組長と行ったって分かった時から、もうそのつもりで、加奈ちゃん探してたんだなと思ったらさ…。」


「そうだな…。あんなに仲良さそうだったし、多分、加来さんだって、京極さんと同じ位加奈ちゃんの事好きだったんだろうにな…。」


「そうなんだ…。」


黙って聞いていた真行寺が、北京しゃぶしゃぶを取り分けてやりながらボソッと言った。


「だからかもしれんよ。」


亀一が、妙に訳知り顔で頷く。


「好きだから幸せにと思う訳ですね。うんうん。」


真行寺を始め、全員で吹き出してしまった。


「あんだよっ。」


代表して龍介が笑いながら言った。


「だって、きいっちゃん、母さんとお父さんの邪魔してるか、怒ってるかじゃねえかよ。」


「それはまだ子供だからだよっ!」


「全くあんたって人は、都合がいい時だけ子供なるなあ。」


「うるせっ。この、かのおりゅうちゅけが!」


今度は龍介が怒り出す。


龍介は、小学校上がる直前まで、加納龍介と言えず、かのおりゅうちゅけと名乗っていた。


「人の黒歴史ほじくり返すんじゃねえよ!」


真行寺も寅彦もゲラゲラ笑い出してしまった。


「可愛いじゃないか、龍介。竜朗が心配して言って来たから、龍彦もそうだったから心配無いって話したんだよ。」


「え…。」


驚く龍介に反し、亀一は面白がって聞きたがった。


「なんつってたんです?スケベ親父は。」


「黄さんじゃないが、ちんぎょうじたちゅひこだよ。

こいつはバカなんじゃないかと、俺も真剣に悩んだが、小学校入った途端、ちゃんと言えるようになったから不思議だ。」


「言いづれえんだよ。龍彦とか、龍介とか…。」


「まあな。でも、俺は真行寺龍之介と、ちゃんと言えてたぜ。」


「う…。」


真行寺は微笑むと、話を元に戻した。


「そういう加来君みたいな愛情は、きいっちゃん位の年じゃ無理だし、穏やかで、本当に優しい加来君ならではという面も大きいな。

きいっちゃんはきいっちゃんでいいんだよ。」


「ありがとうございます!」


「うん。それで…。寅はどうする?帰ってやるかい?」


「そうですね…。帰ってやろうかな。ユキと親父の2人だけじゃ、あの家大荒れになっちまうし。」




と言った寅彦だったが、北京から帰って来て、直ぐに加納家から自宅へ帰ったが、2時間程でまた大荷物で戻ってきてしまった。


「どしたんだよ、寅…。」


「もうヤダ…。親父の奴、鬱陶しいったらありゃしねえ。

あんなかっこいい事言って、離婚届渡したくせに、ジメジメジメジメと、加奈ちゃんのエプロン抱き締めて、やっぱ離婚なんかすんじゃなかったとかブツブツと…。

あれじゃ家中カビちまうぜ。」


「それ、そのまんま寅じゃねえか…。」


呆気にとられながら言う龍介に、目を剥いて反論する。


「俺あんなかあ!?」


頷く龍介の後ろで、しずかと龍彦、真行寺、竜朗まで頷いている。


「……。」


「……。」


沈黙の後、寅彦は目を逸らしてボソッと言った。


「かもな…。」


竜朗が頷きながら手招きした。


「そこだけ加来に似たんだな。まあ暫くうちに居な。」




結局、寅彦はしずかの勧めもあり、また、寅彦の苦手な寅次郎叔父が、加来家に一緒に住む事になってしまったので、加納家に完全に下宿する事になって引っ越して来たが、毎日よく出かける。


「どこ行ってんの、寅は。アキバ?」


亀一が遊びに来ても、殆ど居ない。


「いや。デートだそうだ。」


「鸞ちゃんと?」


「他の女としてたらマズイだろ。」


「そりゃそうだな。ふーん…。」


「でもよく飽きねえよな。

俺たちとだって、学校以外で毎日会ってたら、いい加減やる事なくなってきて、飽きねえ?」


「龍、恋人同士というのは、そういう問題では無いのだ。」


「はあ…。」


龍介が難しい顔になってきてしまった。

亀一は、そっと溜息をつく。


ー唐沢は大変だな…。あいつの根気は、龍が大人になるまで持つんだろうか…。




亀一が心配している頃、実は、寅彦は純粋なデートをしていたわけではなく、瑠璃と鸞の3人でアキバを物色していたのだった。

鸞は暫くは堪えていた。

訳の分からない小汚いパーツの山の前で、狂喜乱舞して目の色を変えている2人の後ろで、自分も何か興味を惹かれる物は無いかと懸命に探してもみた。


しかし、ある訳が無い。


どうにか1つだけ、うさぎが潰れた様に寝そべっている可愛いピンク色のぬいぐるみという欲しい物を見つけると、寅彦が喜び勇んで、真行寺から貰ったバイト代で買ってくれた。

お詫びのつもりらしい。


付き合わせて悪いなと思っているのも分かるし、鸞としても、つまらない素振りを見せるのも、申し訳ないような気がして、頑張っていたのだが、とうとうどうしようもなく退屈になってきてしまった。


それにこの暑さ。

なんだかアキバだけ異様に暑いような気がしてしまう。


「ごめんなさい。決して退屈してる訳じゃないんだけど、日本の暑さに慣れてなくて。

そこの喫茶店で涼んでるから、2人でお買い物続けてね。

時間気にしなくていいから。

焦らないでね。私、本読んでるから。」


申し訳なさそうな2人に必死に退屈していないという事とゆっくり見て回れというのを強調し、喫茶店に入り、人心地。


ーなんだか和洋折衷って感じで面白いわね…。


鸞が入った喫茶店は、かなり昔から、そのままの内装である様で、昭和の香りがプンプンしている。

メニューを見ても、コーヒーなどの他に、昆布茶とか、あんみつなんかもある。


ー昆布茶って何かしら…?

梅とレギュラーとあるわよ?

あんみつって何?あ、写真がある…。

なんだろう…。

あんことアイスクリームと、この透明な四角いものと、黒いお豆みたいなのと、極彩色の四角い物は何かしら…。

こっちはかき氷抹茶宇治金時?

どうして緑色なの?

抹茶と宇治って違う物なの?

ううーん、まるで暗号だわ…。


寅彦たちにメールで聞いてみようかと思ったが、邪魔しても悪いかと止めた。


「決まったあ?」


悩んでる内に大分時間が経ってしまったらしく、人の良さそうなおばちゃん店員が聞きに来てしまった。


「ええっと…。昆布茶とかき氷抹茶宇治金時というのをください。」


「はーい。」




暫くして、抹茶宇治金時と、昆布茶が来た。

昆布茶は湯のみに入っており、湯気が出ている。


ー熱いのね!?そっか、温かいお飲み物コーナーに書いてあったっけ…。


そして、宇治金時の大きさに驚く。


ーうわあ!大きいのね!


ボールの様なガラスの器に山盛りなった緑色の氷に、あんことシロップと練乳がこれでもかという程掛かっている。


ーうーん…。凄い…。お父さん、こういう食べ物知ってるのかしら…。写メってあげよう…。


京極に写メって食べ始める。


ーん!?美味しい!これは美味しい!

はああ…。暑い日にはもってこいね。

でも、段々口の中が凍りついてきてしまった様な…。

あ、そういう時に昆布茶なのかしら…。


一口飲んでみる。


ー美味しいけど、口の中がカオスだわ!

交互は止めておきましょう!

ああ、でも、これって、具のないお吸い物みたいな物なのね。

へえ…。甘い物にはいいかもしれない…。


寅彦達が買い物を終え、喫茶店に行くと、鸞は写メりながら、大きなかき氷に悪戦苦闘しているところだった。


「鸞?」


「寒くなってきたわ…。」


「む、無理しないで、残しなさい…。」


「そうね…。お買い物出来た?」


お陰様でと2人は礼を言い、注文を済ませると、瑠璃は一際申し訳なさそうに言った。


「ごめんね、鸞ちゃん。折角のデートなのに…。」


「いいのよ。毎日会ってるんだから。」


「まっ、毎日!?いいなあ~。」


身悶えする瑠璃が、不憫になる2人。

瑠璃の愛する龍介君はデートという感覚すらない。


「瑠璃ちゃんも龍介君誘って、どっか行ってみたらいいじゃない。夏休みも残り僅かよ?」


「そっ、そんないきなりデートだなんて…。」


「龍介君が鈍いから大丈夫よ。お出掛けしましょって言えばいいじゃない。」


「ーでもどこへ…。龍介君て、お出掛けってするの…?」


そう言われてみると、長い付き合いの寅彦も困る。

遊園地みたいなところは行かないし、美術館や博物館はよく行く様だが、そこらへんは、趣味の合う亀一か家族と行っているから、この夏で見たい物は大体見てしまっただろう。


「唐沢が行きてえ所誘えばいいんじゃねえの?」


「私が行きたい所…。それはやはりここアキバ…。」


「それはドン引かれるからやめとけ…。」


「そ、そうね…。」


「やっぱりデートといったら、動物園か水族館じゃないの?」


「でも、水族館はこの間行ってしまったし、動物園は暑いんじゃ…。」


「じゃ、プールでも行っちゃう?」


「プ…プール…。」


瑠璃は何かを妄想し始めた。

真っ赤になったかと思ったら、猛烈ににやけだし、今度は真っ青になって、テーブルに突っ伏した。


「は、恥ずかしいわ…。水着姿をお見せするなんて…。」


鸞は首を傾げながら、寅彦に小声で囁いた。


「何を想像しちゃったのかしら…。」


「さあ…。龍の水着姿?」


鸞は寅彦をマジマジ見つめて笑い出した。


「私、寅彦君の水着姿想像しても、なんにも嬉しくないけどなあ。」


ガバッと起き上がった瑠璃が、何故か抗議。


「だって龍介君て、なんかいい身体してそうだもん!」


「きいっちゃんが、唐沢は変態的に龍が好きって言ってたの、こういう事だったのか…。」


「加来君!?なんなのそれ!ああ、もう…。いいの、私…。」


またテーブルに突っ伏し、ののじを書いている。


「そ、それじゃほら、チェロのコンサートとかはどう?」


ガバッと起き上がり、満面の笑み。


「それはいいかもしれないわね!」


「うん。他の人、興味無いんだから、丁度2人でって出来るからいいじゃない。龍介君がハープの音好きなら、ハープのコンサートがあれば、もっと誘い易いかもね。」


「それならお誂え向きにあるのよお!誘ってみるう!鸞ちゃん、ありがとおお!」




龍介は思いの外、すんなり乗ってくれた。

夕方6時の開演では、薄暗くなって来て危ないと、しずかに言われたのか、瑠璃の家に迎えにまで来てくれた。


白のオックスフォードの長袖のボタンダウンのシャツをラフに着て、腕まくりをし、カーキ色のチノを履いて、焦げ茶色のコインローファーを履きと、この年齢の男の子にしては、畏まった格好で来てくれてはいるが、瑠璃の目には王子様にしか映らない。


ーきゃあああ!龍介君、素敵!


ニタニタしている瑠璃の方は、気張っている。

この日の為に買った、リズリサの花柄ワンピースに白いサンダル、リズリサのカゴバック。

鸞に付き合って貰って、血眼になって探した髪飾り的なピンは、ゴールデンレトリーバーである。


龍介はやっぱり食い付いてくれた。


「お、いいね。ポチがいる。」


「そーなのそーなの!」


そして瑠璃を眺めて微笑んだ。


「可愛いね。じゃ、行こうか。」


ーきゃああああー!!!やったああああー!!!鸞ちゃん、やったよ!あたし!今月のお小遣いまで使い切っちゃったけど、報われたよおおー!


龍介にしてみたら、苺や蜜柑に言うのと全く変わらないし、さしたる意味は無いのだが、瑠璃にとっては、超特別な意味になっている。

母に苦笑されながら、龍介と連れ立って、脳みそに羽が生えた状態で駅まで歩く。


ところが、慣れないヒール付きのサンダルで、しょっ中よろめく。


「その靴、歩きづらいんじゃねえの?ほれ。」


手を差し出す龍介。


ーきゃああ!!!お手手繋いで、デートよおお!!!


龍介の手をもう離さないとばかりにしっかり握って、にやけ過ぎて崩れた顔で駅へ…。




悟は祖母にお使いを頼まれ、ネギを自転車のカゴに載せた状態で、2人を目撃してしまった。


ーなんなのあれは!どう見てもデートじゃないか!しかも、こんな時間からあんなお洒落しちゃって!どおいう事!?


大急ぎで、2人を目で追いながら朱雀にメール…。

2人は手を繋いだまま自動改札を入って行ってしまった。

行く方向を確認。


「都会方面…。」


つまり、町田か新宿方面。

朱雀からメールでなく、電話が来た。


「先に追って!僕も後から行く!」


「僕、そんなお金持ってないよ!ていうか、10メートル以内に近づいたら、加納のお父さんに殺されちゃうよ!」


「ああ、そっか、そうだったね。」


「それに、ネギ持ってるし…。」


「ネギは臭いから電車に乗っちゃダメだよ。じゃあ、仕方ない。寅かきいっちゃんに聞いとくよ。帰っておいで、悟。」


「聞きたい様な聞きたくないような…。」


「どっちなの?ハッキリしてよ。」


「まあ、どっちにしても、あの坊ちゃんが突然大人になるとも思えないしな。」


「それはそうだね。なんと言っても龍だから。僕もあんまり期待しないでおくよ。」




電車は丁度ラッシュアワーに差し掛かり、結構混んでいた。

龍介は、瑠璃をドア際に立たせ、グイグイ押してくるおじさん達から瑠璃の盾となってくれていたが、ちょっとした揺れがあった時、瑠璃の頭の上のドア部分に、バンと手を着いた。


ー壁ドン!?あ、いや、違うよね。電車の揺れでよね…。


しかし、龍介はちょっと苦しげな切ない目で、瑠璃をじっと見つめている。


ーいや!もしかしたら、壁ドンかもしれない!?きゃああ!!!鸞ちゃん!日本中の女の子の夢が、今私の身にいいー!!!


「瑠璃…。」


龍介は言いづらそうに、苦しげな表情のまま呟く様に言った。


「は、はい…。」


ー龍介君が急に大人に!?お洒落してきて本当に良かったあああー!


「ごめん…。足踏んでる…。その踵、凄え痛い…。」


「ごっ!ごめんなさいいいー!!!」


誤解してたのもあって、恥ずかしさ5割増しである。


ーこれはマズイ!マズイわよ!


龍介のコインローファーは、迎えに来てくれた時に、一度家に入って貰って脱いだのを見たが、見るからに高そうだった。

色も焦げ茶というか、少しワインに近い感じで、ピカピカで、靴通ではない瑠璃でさえ分かる様な仕立ての良さを感じた。

その靴を、3980円のサンダルが踏んづけてしまった。


「ごめんなさいい…。凄く高そうな靴なのに…。足大丈夫?」


「大丈夫だよ。」


龍介は笑ってくれた。


「これは、そんな高くないし、お前が踏んづけた位で、俺も靴も怪我なんかしねえよ。」


「そうなの?でも、外国製でしょ?」


「アメリカのbassっていう所のだけど…。」


「お洒落~。」


「いや、必然。」


「必然なの?」


「そう。実は母さんに似てしまって、足の幅が異様に細いんだ。だから日本製の靴履くと、走ると脱げちまうんだよ。仕方ないんで、母さんと俺の靴は、母さんのアメリカの知り合いに頼んで送って貰ってるんだ。」


「それで上履きがいっつも脱げて、明日天気になあ~れしてたの?」


「そう。」


「大変ねえ…。でも、私もそうなのかな?」


「そういやお前よくよろめいたり、躓くね。」


「なんかね、靴の中で足がゴロゴロ動いちゃうのよ。」


「それはきっとそうだよ。足の幅はワイズって言うんだって。今度測ってやるよ。」


「えっ…。」


瑠璃は瞬間的にその光景を妄想した。


椅子に座る瑠璃の前に龍介が膝間付き、瑠璃の足にメジャーを巻いて…。


「いやあ~ん。是非お願いしますう~。」


龍介の笑顔が若干引きつっているのにも気が付かず、電車は町田に到着。

ちょっとお茶をして、瑠璃の先生のハープのコンサートを聴き、龍介に食事に誘われた。

コンサートのチケットは、瑠璃が誘っているし、先生のだから格安に済んだからと、龍介に払わせず、瑠璃が払ったせいか、ご馳走すると言って、かなりちゃんとしたレストランに連れて行かれてしまった。


「予約した加納です。」


「加納様。いつもありがとうございます。お爺様から承っております。どうぞ。」


窓際の席に案内され、申し訳なく思いつつも、気分は大人のデート。


「いいのかな、こんな…。」


「いいじゃん。」


ーいいんならいいかあ…。


デレデレし始めると、やはり龍介は苦笑して瑠璃を見ている。


「何にする?」


「あ、龍介君と同じもので…。」


「じゃあ、ステーキコースでいい?」


「コース!?」


ステーキコース5600円なり。

サンダルより高い。


「い、いやいや、私はもっとお安い物を…。」


「んな事気にしなくていいよ。なんでだか分かんねえけど、お父さんに父さんまで小遣いくれたし、グランパからバイト代も入ってるし。」


そして、ウェイターにステーキコース2つと注文を済ませてしまった。


「その代わり、また連れて来てね。」


龍介はハープのコンサートが気に入った様で、そう言った。


「うん!勿論!今度は私の発表会にも来て?」


「あ、行く行く。じゃあ、俺のも来る?」


「うん!絶対行く!剣道の大会も見に行きたいんだけど、駄目?。」


「いいけど…。つまんなくねえか?」


「そんな事ない。行きたい。」


「じゃあ、おいで。」


「うん!」


ーあああ~!幸せ!鸞ちゃん、提案してくれてありがとおお~!


楽しい会話に美味しい食事の最中、龍介は突然鋭い目つきになって、外を見た。


「どしたの?」


「誰か見てる…。」


「何かしら…。龍介君がかっこいいからでは…?」


「いや、そういうんじゃねえな…。どっちかってえと…。」


龍介はちょっと失礼と、瑠璃に断ってから、誰かにメールをした。

暫くして、レストランの窓の外に、ネギをカゴに入れたままの悟が現れた。


「さっ、佐々木君?!」


「やっぱし。何やってんだか…。お父さんに殺されるぞ…と…。」


そうメールをした様で、悟はメールを見ると、あっかんべえをして去って行った。


「しかし、あのネギ…。夕飯の買い物に頼まれたんじゃねえのか…。もう8時だぜ?」


「おネギ無しで作られたんでしょうね、お祖母様…。」


「何してんだか…。相模原からここまで、ネギカゴに入れたまま走ってきたんだろうか…。」


「そうなんじゃない…?」


「変態も堂に入ってきたな…。」


「そこまで好いて貰える様な事したかな、私…。」


「なんか見てっと、人を好きになるって、取り立てて何!っていう人に説明出来る様な理由は無さそうだぜ?」


「うーん、それはそうかもね…。」


「まあ、あの変態からは俺が守ってやるから、安心しろ。」


「はい。」


全てを忘れ去り、瑠璃の周りに飛び散るハートマーク。

初デートは、大幅な認識のズレを置いておけば、大成功で終わった。


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