第5話 エロいこともできますよ?

「よろしくお願いします、だニャン」



全くの真顔で美少女にそう言われると、揚げ足をとってもよいものかどうかわからなくなってくる。



「よ、よろしく......じゃなくて、君は何者なんだ。

さっきの声はなんなんだ。

ご主人様って俺のこと?」


「先程ご主人様に語りかけていたのは、創生の女神様です。

貴方に宿るスキルが、条件を達成したために可視化する形で覚醒したのです。

私は女神様の遣いで貴方のお供をするために現れました。

ええ、ケビン様こそが私のご主人様です。

ご主人様ですニャン」



付け足しがどうにも気になるが、話の内容の方がショックがでかい。

スキルだって?


あの、数万人に一人しか宿らないっていう?

それが俺に?



「い、いや。百歩譲って!

俺がこの年でスキルに目覚めたとして、ガイドが現れるなんて話聞いたことがないぞ」


「ご主人様のスキルは特別中の特別ですから。

これほどのお方に無為に過ごされては世界の損失。

なのに38にもなってチンタラと結果を出さずに過ごしているので見かねた女神様が私を派遣したのです」


「ひでえ言われようだ!」



頭がクラクラしてきた。

まだ状況に追い付けていない。おっさんは未経験の出来事に弱いんだ。

発想力や柔軟性が消滅しているからな。



「ええと、女神様の遣いってことは、君は人間ではないってこと?」


「はい。私は神によって作られた存在です。超常的かつ超人的かつ超越的な 美少女と思いなさい」


「超越的って......」


ん?いま命令された?


「そうだ。君の名前をまだ聞いていなかったね」


「私は神によって作られた超越的美少女。

故に俗人のような名など持ちません。

どうか、私の呼び名はご主人様が決めてください」


「なんかすげえこと言ってるけど、そうだな、名前、名前」



うーん。

せっかくだからいい名前をつけてあげたい。

猫っぽさを加味してあげたらいいのかな?


ニャーとかミーとか。

ミーコ。いや、ミア、ミケ、ミーシャ。

うーん。可愛くてセンスのある名前っていうと......。



「強いて言うなら私のことはムゥとお呼びください」


「お前が決めるのかよ!いいよもうそれで!」



悩んだカロリーを返せ!



「それでムゥ。

俺のスキルっていうのはどんな奴なんだ?

今まで見たことあるのは勇者アレストってやつので、"光の加護"っていうすごいのだったな。

たしかA級スキルとか言われてたっけ」


「まあそれはおいおい説明していくので、ゆっくりやっていきましょうよ。

それはさておき、今後の旅の方針なのですが」


「さておくなよ!一番重要なところだろ!

お前、何しに来たんだよ!ガイドじゃなかったのかよ!」



「それを説明しきってしまうと私の仕事が終わってしまうじゃないですか。

そうするとまた退屈な天界に逆戻りですよ。

せっかく下界にバカンスに来れ たというのに。


これからはそういう、人の気持ちとか都合も考えた上で発言するように気を付けてくださいね」



「無茶苦茶言ってやがるよこいつ!

女神様ー!人選ミスですよー!チェンジ、 チェンジ!

ちゃんとしたのに替えて下さーい!」



「無駄ですよ。

あの女神様が下に投げた仕事をちゃんとモニタリングしているわけないでしょう。

自分はちゃんと命令した。成功したら自分の手柄。失敗したなら独断専行した部下の責任。すべては秘書のやったこと。

それが天界のスタンダードです」


「ロクなやつがいねえな!」


あかん、叫びすぎて喉と頭が痛い。

おっさんはちょっとしたことですぐ体 調を崩すんだよ。



「それに、チェンジしちゃっていいんですか?この超越的美少女を。

ご主人様を敬っていないとはいえ、基本的には絶対服従ですよ?」


「えっ・・・・・。それって......」



ゴクっ。

思わず生唾を飲んでしまった。

てかやっぱり敬ってはいないのね。



「エロいこともできますよ?エロいこともできますよ?

大切なことなので二回言いました。

本当に大切なことなのでもう一度言いましょう。

エロい!ことも!できますよ!?」


「声がでかい顔が近い唾を飛ばすな!」



唐突に俺の胸ぐらを掴んで至近距離からshoutしてきた。

明らかに意図的に俺の顔面に唾を飛ばしている。

やめてくれ、いくら美少女でもそれは俺にとってご褒美ではない。



「ふむ。この姿ではお気に召しませんか」


「いやそういう訳じゃ。

え、この姿って。姿を変えられるの?」


「ええ。

姿形など超越的美少女たる私には仮初めのものですから。

ご所望でしたらこのようなこともできます」



そういうとムゥは、よりによって俺を追放したパーティの魔術師、サマンサの姿に変身した。

ミニスカートを両手でヒラヒラといじって見えるか見えないかの絶妙の線をついてくる。



「ほーらほーら。この身体を好きにできるんですよー?」


「や、やめろ!なんかすごい良くない感じがする!」


「あらまあ、ではこちらの方がよかったでしょうか」



今度は女盗賊のリンに変身する。

その場に軽く何度もジャンプしてバインバインのバストを揺らしてけつかる。


あかんがな。そんなんあかんがな。

いや、別にこの娘達のことが好きだったとかじゃないよ!?

でもさあ!わかるだろ!?

特に、リンはその、胸が、やはりヤバイ(確信)。



「これでもダメですか。では最新のやつで」



そう言うとムゥは、あろうことか、村娘のサラに変身した。



「あ、ゴメンそれはマジでやめて。

そういうの、ないから。

この記憶はそういうのにしたくないから」



「ふむ。

この姿が一番ご主人様の罪悪感を煽るようですね。

では当分この姿で過ごすこととします。


なるったけエロい下着を用意しておくので期待していて下さい。

課金次第で特殊な器具も用意できますよ?」


「いやマジで勘弁してくれよ!

てか課金!?なにそのシステム!?」



なんだかえらいのに出会ってしまった。

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