No. 030 境地のサタ



 夏休みが終盤に差し掛かった頃、僕は色々な準備に翻弄されていた。

 と、いうのもコアルさんに教えてもらったレベルという概念。

 それを調べると所謂いわゆるステータスと呼ばれる物があることがわかったのだ。

 ステータス概要は、HP(体力)、STR(武器行使力)、VIT(防御力)、INT(魔法行使力)、MEN(精神力)の5つだ。

 平均として、



 ================




 人間 Lv. 050


  HP C


 STR C


 VIT C


 INT C


MEN C




 ================



 こんな感じになることがわかったのだ。

 ただ、戦い方や、武器の使い方によってこれは大きく変化されなにをどうやればどこが上がるという事はわかっていない。

 それでもここまで纏める事が出来たのだ。


 それと夏休み中には和紗と何度かデートもした。

 そして矢鱈とドリーさんの事を聞いてくる事がある。

 やっぱりと言うべきか、敵と繋がっているだろう。

 それでも好きだけど。


 さて、話が脱線させたが、これを発表する日が明日に迫っている。

 僕は特にやることがあるわけじゃなくどうにかなるだろうと楽観視している。



 ※



 ダンジョン専門国立高等学校、大講堂。

 そこには記者の人たちと、手伝ってくれたダンジョン協会の人たちがいる。

 これからはダンジョンカードにレベルが書かれるようになり、「ステータスオープン」と唱えると詳しくでるシステムに変わる事となる。



「と、言うのが僕の研究結果です」


 1時間にわたる新しいダンジョンカードなどの説明を終えて僕はやっと解放された。

 記者の質問?

 知ったことか。


 さて、このレベルという概念で僕が得た収入はいくらになったか。

 今後の利益も含めた結果として100,000,000,000円という金額になった。


 これによりいくつかの面白い事件が起きてしまった。



 ※



 さて、この発表があった次の日に僕の下に1枚の手紙が届いた。

 内容は簡単で1度お話がしたく会えないか、というものだった。

 その呼び出した場所がなんとも笑えて、超のつくほどの高級料理店。

 国のお偉いさんやどっかの企業の社長、他国の貴族さまが来るようなところなのだ。

 では誰が僕の事を呼び出したのか。

 それは、


「葛くん、ひさしぶりだね」


 さて、これだけでわかった読者さまは凄いと思うけど流石にいないだろう。

 不正教師こと花毬はなまりココネ、一切の謝罪がなく2度と会わないと思っていた相手だ。

 それに学校では1度も名前で呼ばなかったのに馴れ馴れしく気持ちが悪い。


「久方ぶりです、ココネさん」

「さん、だなんて。ココネ先生でいいんだよ?」

「わかりました。不正ここね先生」

「なんか違ったような気がしないでもないけどいっか」

「それでなんの用ですか? 態々わざわざこんな所にまで呼び出したりして」


 まぁ、大方の検討はつく。

 僕が貰った賞金は公表されてるからこうなることも用意に想像できてた訳だ。

 あっ、家にはお金を少しだけ(10,000,000円)渡しておいたら、こんなにいいのかと喜んでくれた。


「それはー、そのね。葛くんは先生にお世話に――――」

「――――なってません・・・・・・


 軽く言霊を使い威圧する。


「そ、そうだよね。お世話になってないね」

「それでなんですか?」

「まずは何か頼も、ね?」

「わかりました」


 こういう所で食べるのも悪くないかもしれないな、相手が最悪だけど。

 不正ココネ先生は日本酒とその他色々、僕はお冷やを頼んだ。


 少しして頼んだ品(不正ココネ先生の分)が運ばれてきて話が再開する。


「私ね、今ちょーっと色々あってお金がないのよ。それで葛くんはさ、そのーね、色々あって収入があったわけじゃん。だから昔のよしみって事でお金をくれないかなーって話なんだけど」

「それで?」

「だから私にお金を恵んでくれないかなーって」

「僕への利益は?」

「利益? 葛くんはもう十分利益はあるよね」

「それがなにか関係ありますか?」

「いや、だから」

「先生は昔の誼、と言う名の陥れた相手からお金をくれと掌を返してお願いしているということでいいですか?」

「えっ。そんな言い方はないんじゃないかな?」

「もう僕は十分なので失礼しますね」

「ま、まって。ここの代金」

「僕はお冷やしか頼んでいません。なにか問題でも?」

「私は今一文無しで」

「そんなの僕には関係ないじゃないですか」


 僕は逃げるようにそのお店をあとにした。

 帰り際にメニューをいくらか見てみるとゼロの数が2つずれている気がした。

 こういうお店って事前に調べて来ないと大変な事になるよな。



 ※



 そんな面白い事があった次の日、僕は理事長室に呼ばれていた。


「いやー、君も大変だったんだね」

「そうなんですよ。面白いくらいの手のひら返しで最高でした」

「わざわざそれに付き合う君も結構性格が悪いと思うけど?」

「あはは、それはありますね」


 理事長はいくつかの紙をピラピラと捲ってから、


「そうだ、鬼灯くん。京都でのダンジョンの話だけど君は和紗ちゃんと一緒にしといたらからね」

「それって?」

「先生が決める事になっているんだよ。この前の実技試験の結果も踏まえてなんだけど理事長権限でね」

「それはありがとうございます」

「だから思いっきり頑張って京都のダンジョンをクリアしてね。あとね、やっぱり言わないでおこう」

「理事長、それは1番気になるやつだから止めてください」

「わかってやってるから。ほら、和紗ちゃんも待っているはずだから戻ってあげな」

「それを言うのは卑怯ってもんですよ。失礼しました」


 理事長から京都のダンジョンをクリアしろというミッション。

 まぁ難しくなければいいけど……ランクAだったよな。

 横浜海底……横浜海上ダンジョンと同じくらい。

 でも階層は京都の方が多いだろうし。

 こればっかりは行ってからのお楽しみってやつだな、うん。


「あれ? 理事長室に呼び出しってなにか悪い事でもしたのか?」

「ん? 義宗か。ちょっと用があったっていうか」

「そうだ、葛。ココネ先生っていたじゃん。ココナ先生の姉の」

「うん」

「無銭飲食で捕まったらしいぞ」

「あーー……そ、そうなんだ」

「ざまぁねぇよな。ダンジョンクリアの隠蔽だっけ」


 不正教師がなぜ捕まってたのか公表されてなかったのにここまで情報を集めたのか。

 なんというか流石だな。



 *



 日もすっかり落ちた頃。

 とある廃墟になったビルに1人の男が、神原かんばら京介きょうすけがいた。


「スチューバさんと連絡がとれないなー。こんな事ならクソ野郎でも殺しに行くか」


 神原はスマホを開きダンジョン専門国立高等学校の予定表を見る。

 と、言ってもダン高は大々的に京都のダンジョンに行くと公表しているので見つけるのはすぐだった。


「そっか、京都か。たしかスチューバさんの言う通りならあの方がいるから手伝ってくれるかな?」


 神原は蕩けたような顔になり、


「早く会いたいよ。あって殺してやりたいよ、鬼灯葛。俺の姫拐い」


 神原の周りには人の死体が、原型のない死体がいくつも転がっていた。


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