No.021 真相とユメノアト



 和紗に色々と2人でも行けるという事を伝えて、


「と言うわけで一緒にダンジョン行こ?」

「うん、いいよ。どこから行く? 成績に関わるんだもんね」

「まずは東京タワーダンジョンから行こうと思ってる」

「じゃあいつ行く? 準備とかも必要だから明日かな?」

「それが1番だよね。だから今日はゆっくり休もっか」


 その後、夕食を食べて、お風呂に入り、ゆっくりと睡眠をとった。



 ※



 空はどんよりとしていて、いつ雨が降ってきてもおかしくない空模様をしている。

 それでも、いつ晴れてくるかわからないから日焼け止めを塗らないといけないのは結構辛かったりするし、出費が……。


「よし、準備OK」

「行こっか、和紗」


 それから和紗といくつか電車を乗り継ぎ、東京タワーまでやって来た。

 ダンジョンが出来る条件として、昔人が多く来ていたという共通点がある。


 そしてここ、東京タワーの地下に逆さ東京タワーとして形は同じダンジョンがある。

 が、まだクリアはされていない。


「さて和紗。一気に今行ける最下層まで行く? それともいくつか飛ばしながら行く?」

「一気に行っちゃっても大丈夫な気がするよ」

「じゃ、一気に行っちゃおう」


「おいおい、ここはデートで来るところじゃないぜ」


「アイツ馬鹿かよ」

「制服がどう考えてもダン高じゃん」

「そこに喧嘩売るって」

「新人いびりが返り討ちにあうぞ」


 どうやら、1人の馬鹿によって「あるある」が起きてしまったようだ。


「なぁ、俺がその女の子の相手をしてもいいんだぜ?」

「周りの人の声が聞こえない訳じゃないですよね?」

「フンッ、あんなの怖じ気づいてるだけだよ」

「そうですか、けど、邪魔なので・・・・・失せてください・・・・・・・


 コアルさんに習った新たな技で『殺気』と『言霊ことだま』。

 殺気は視線に魔力を通して威圧する技で、言霊は声に魔力を乗せて威圧する技。

 だから、威圧の2段構えだ。


「な、なんだよ。怖い目で睨みやがって」


 それを受けた相手は腰を抜かして尻餅をつく。

 そんな状態でも強気なのだから凄い。


「大丈夫ですか? 急に座ったりして。体調でも優れないんだったら今すぐ帰るべきだと思いますけど?」

「し、死ね! 死ね!! 死ね!!!」


 そんな幼稚な悪態をつきながら一目散に逃げていった。

 それを見ていた周りは大笑い。

 多分だけど殺気にも言霊にも気がついていないだろう。

 だから睨まれただけですくんだ弱虫というレッテルを貼られた事だろう。


「それじゃ、行こっか」

「葛くん、今なにしたの?」

「あぁ、コアルさんに習った技の練習をね」

「怖いオーラもその影響?」

「怖いオーラ? そんなもの出てたかな」

「うん。怖いけど、それはさっきの人だけに向いていたから」


 怖いオーラってどんなオーラなんだろう?

 黒く禍々しい感じなのかな。



 ~~195階層~~


 現在の最下層は195階で、何階まであるかは不明。

 ここ50階層連続でボスラッシュと呼ばれる、ボス部屋しかないらしい。

 そして、ボス部屋の前には何人かの人がいるけど入るつもりは無いようだ。


「おっ、アンちゃん。先に逝きたきゃ行っていいぞ?」

「ここのボスってなにか知っていますか?」

「あぁ、知ってはいるがタダで教えるのはな。わかるよな?」

「えぇ、もう大丈夫です」


 ここで情報を売っているのだろう。

 情報は売れるという事を覚えておかなくては。

 そして弱味は見せない。


「行くよ、和紗」

「うん」


 ボス部屋の扉を開けて入ると、すぐに扉が閉まり出られなくなった。

 入る時にさっきの人や、ボス部屋前にいた人たちがなにかを魔法を詠唱していたがよく聞き取れなかった。

 それと、閉まったって事は勝たないと死ぬってことだよな。


「和紗がやる?」

「うん。おいで、月華げっか


 2つの円刀を構えて敵が、ボスが出るのを待つ。


 出てきたのは一体のアンデットと呼ばれるやつで、防具や武器が凄いくらい豪快だ。

 僕の予想だと、ここで死んだ人たちの防具や武器を使っているんだろう。


「我、第三始祖の八乙女和紗の名において迷える魂を滅する聖なる力を、混沌こんとん陰法 碧炎へいえん


 和紗は武器をしまってから、陰法を発動させる。

 これは僕も最初に使ったやつで、簡単ながらも、アンデットやそれ以外にも効果が及ぶ強い陰法だ。

 みどり色の炎に燃やされてアンデットは消え失せた。

 もちろん防具や武器は落ちてくれて、更には今までここで死んだであろう人たちの防具や武器も出てきた。

 アンデットに対する攻撃が出来るのはレアだから誰も倒せなかったんだろう。


「よし、階段も出てきたし後ろの扉も開いた。流石、和紗だね」

「エヘヘ、防具や武器は葛くんの魔法収納袋の中に?」

「うん、容れてから1回売りに行こう」


 落ちた武器や防具を魔法収納袋に全て容れてボス部屋を出る。


「おい、嬢ちゃん。俺たちのパーティーに入らないか?」

「いやいや。俺たちの方がいいって。幾らでも出すから」

「いーや、女の子なんだから私たちのパーティーに入ってよ。ここなら安全だよ」


 ボス部屋を出ると和紗へのパーティー勧誘が始まった。

 もしも、もしも和紗が他のパーティーに行くって言っても僕に止める事は出来るだろうか。


「ごめんなさい。私はこの人とパーティーを組んでいるので」


「ならもしソイツに飽きたらこっちに」

「嫌になったらいつでも来い」

「そんなこと言わずにさぁ」


「嫌にもならないし飽きもしません。私はこの人と、葛くんと一緒がいいんです」


 そう言ってくれるのは嬉しいよ。

 嬉しいけど恥ずかしいからあまり大きな声では、ね。

 女性のパーティー勧誘してきた人は何か合点がいったような顔をして満足そうに、他の男2人は残念そうに次の階層に進んでった。



 ※



「すみません。武器や防具の換金も出来ますか」

「もちろん出来ます」

「それじゃあ防具や武器の能力を調べたりは」

「可能です。1回500円です」

「それって1つでって事?」

「いえ、1回です。今からやる場合それ全て合わせて500円です」

「じゃあお願いします」


 そう言って魔法収納袋から防具や武器を1個1個だして見てもらう。

 どれもいいのはなく、〔毒耐性Ⅱ〕だとか〔頑丈Ⅵ〕だとか[魔法剣 焔]だとか〔貫通Ⅰ〕だとか特にいいのが無かったから全て売った、もちろん和紗の許可を得て。

 それら全てを合わせて515,018円になり、全て和紗のダンジョンカードに入っていった。



 ~~196階層~~


 またもボス部屋で、さっきと同じ人たちがボス部屋前でしっかりと待機していた。

 ちょっとした嫌味のつもりで、


「ここのボスの情報ってありますか? 100万円でどうですか?」


 一応貯金はそれだけあるから試してみる。


「おお、買うか」

「はい。ですが嘘でしたらただじゃ起きません。和紗の命もかかっているので」

「もちろん嘘はつかねぇよ」

本当ですね・・・・・?」


 殺気と言霊で相手を威圧する。


「チッ。気が変わった。売らねぇよ」

「そうですか、それは残念。でも……命拾いしましたね」


 それだけ言ってボス部屋の中に逃げ込む。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る