第13話 夏の終わりに⑥
「到着ー♪」
バスは終点へ。ぴょんと飛び降りる私、テンション上がりっぱなし!
夏休み最後の今日、私達がやってきたのは。
狭山市駅からバスで約20分、埼玉県智光山公園です!
イメージとしては、自然公園って感じかな。
私達の町、埼玉県狭山市は東京のベッドタウンとして栄えた町。その郊外に大きく広がる森の公園です。
広いなーとは思ってたけど、調べたら敷地は東京ドーム11個分!
その広い森に、運動場とかキャンプ場、植物園に、小さいけど動物園まである総合公園、市民の憩いの場なのです!
「っていうか、ほぼ森だね! 見渡す限り森だよ!」
「黙れステファニー!!」
私の町が田舎と思われるでしょうが!?
まぁ、確かに森だけどね! でも休日は近隣の親子連れとか、幼稚園の遠足とか、わりと混み合うんだよ!?
ほら今日だって、夏休み最後とあって、中々の賑わい。
まだ午前なんだけど、バス停降りてすぐのテニスコートは人がいっぱいです。
「なるほどね、町から近いしピクニックとかには向いてるかもね。女子中学生のデート場所としては、果てしなく微妙だけど」
「ぐぐ、悪かったわね! でも、ちゃんと理由は有るし! お財布事情とか、お財布事情とか、あとお財布事情とかね!」
智光山公園のこども動物園、大人は入園200円、私達中学生まではなんと、なんと50円!!
ペットボトルの飲料一本分で、私と早百合とミルちゃん、3人入園出来るんだよ!?
「ふふ、そんなこと言ってりりなったら」
ゆっくりバスから降りてきた早百合、くすりと笑いながら。
「ホントはミルちゃんに、私達の町をもっと知って欲しかったのよね?」
柔和な笑顔で、穏やかな瞳を向けられて。私はちょっと照れる。
そう、お財布がどうとかは冗談で。早百合とは相談してたの、ミルちゃんをどこに連れていくか。
つまり……悪魔の女王に、何を見せたいか。
お互い理解し合うために、どうするか。
やっぱり私達が大事にしてる、護ろうとしてるものを見せるのが良いと思ったのよね。
だから、私達が生きている、愛しているこの町を。
お洒落な東京のデートスポットとかだって、そんなに遠いわけじゃないんだけど。
……何よりも、私達の町をこそ。ミルちゃんには見てほしい。
「でも。一番見せたいのはアレだけどね!」
「ふふ、そうね♪」
ミルちゃんに見せたい、もっと理解してほしい、私達の一番大切なモノ。
私が命懸けで戦い、護り続けている、掛け替えのないモノ。
それはもちろん! アレしかありません!!
「期待しているよ、りりな、早百合! 悪魔達と和解できるか、全面戦争か。人類の未来は、君たちのイチャつきぶりにかかっているんだからね!!」
「オッケー、ステファニー! 任せて、それはもう、ちゅっちゅしまくってみせるから!!」
Yes! 全ては! 百合です!!
私はミルちゃん始め悪魔の皆さんにも! 百合の素晴らしさに目覚めてほしいと思うの!!
今日は私と早百合で、百合シーンをこれでもかと見せる所存!!
……うん、夏祭りくらいまで私、ノーマルだと言ってたはずなんだけど。
まだひと月経ってないよ?
「もう、私レズじゃないはずなのに。早百合が積極的過ぎるから♪」
「あら、私のせいなの? そんなコト言う悪い子にはお仕置きだよ♪」
……ちゅっ♪
もちろん一回じゃないよ。ちゅっちゅ♪
バス停にて、早くも百合キス全開爆走スタートダッシュです!
「おお、今日は飛ばしてるね!」
ステファニーご満悦。私達も気合入ってますので!
今日はたっぷり百合ん百合んして、ミルちゃんにも色々目覚めてもらうんだから!
私は百合で! 地球を救ってみせるッ(超真顔)!!
※ ※ ※
そして。観衆が集まってきちゃったりしたので、わずか10分で百合キスタイムは切り上げ。
残念! 後で自然公園の森の中へ行ったら、人目も少なくなるし。存分に百合ん百合んしよっかな♪
ねっ、早百合!
「そうね、急ぎましょう? 私、もうエッチな気分になっちゃったわ。ぽっ♪」
「……君たち、ホントに今日は飛ばしてるね。いや、嬉しいけどさ」
そんなこんなで、私達のテンションは最高潮。天気も良くて、今日は絶好の百合日和!
……うん、私はやっぱり。
こんな幸せ気分を、ミルちゃんにも分けてあげたい。
悪魔がどうとかより何より、友達として。
(だから待っててね、ミルちゃん。あなたを、笑顔にしてみせるから)
胸の中で、密やかな誓いを立てたその時。
私の視界、向こうのテニスコートそばに。
黒いゴスロリドレスで日傘を差した、可憐な背中が見えた。
その背中に、元気な声で、
「あっ、ミルちゃん! キスしようよ♪」
え、普段の挨拶だけどおかしいかな?
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