第10話 鮮血の死闘! ただしその鮮血は鼻から出る!!⑪

「ぎゅっとしてとか、正直キモいんですけど……」


 つい顔が引きつっちゃう私へ、ステファニー猛然と抗議。


「ひどいよ! ほらよく見て、僕の姿を! 可愛い可愛い、クマさんだよ!? ぷりちーぬいぐるみだよ!? むしろ抱き締めるのを拒否する方が、女の子としておかしいと思うな僕は!!」


 そのままきゃるるん♪ きゃるるん♪と、彼の考えるプリティーなポーズ。


「ほら、ほらほらほらぁ! よく見てよ! 抱き締めたくなるでしょ!?」


 首を絞めたくなるね。きゅって。

 まあ、見た目は確かに、可愛いぬいぐるみ。抱き心地も良さそう。


 でも男子だし……。


「お、お願いだよ! 悪魔に勝つ作戦なんだって!? ほら早く! 引っ張り過ぎだよ、さくさく行こうよ! 尺を取り過ぎて30分アニメに収まらないよ!?」


「……もう、仕方ないなー」


 熱意に負けて、とりあえず。


 ぎゅう。

 胸に抱いてみる。あ、思ったよりふかふか♪


「ふぉぉぉぉぉぉ! これだよこれ! 美少女にぎゅっとハグされる! マスコットキャラの役得だよね! これくらいご褒美無いとやってられない業界だよ!!」


 どこの業界だ。てか何か仕事してるの?


「胸だけが! 胸だけが惜しいけどね! ぷにぷに感が不足してるよ!!」


「串刺しになりたい?」


 本気の目で魔剣を召喚する私に、ステファニー慌てて。


「つ、次行くよ、第2段階! 早百合、君も来るんだ!!」


「え、わ、私……?」


 ステファニー、私たちにいったい何をさせるつもりなのか。とてとて駆け寄ってくるビキニ姿の早百合に対し。


 悪魔も黙ってはいない。


「いかなる小細工を企てようと、今さら無意味! だが! ヴァールたる我は、小魚を喰らうにも容赦せん! 貴様らに勝利の可能性など、一片も残しはせぬぞッ!!」


 全裸美少女軍団に号令を下す!


「やれいッ魔軍よ!!」


 槍に斧、それぞれの武器を手に襲い掛かる水の少女たち。

 もちろん、させないッ!


「来たれ魔剣よ! 『魔剣舞踏会ソードダンス』ッ!!」


 黄金魔剣を飛来させ、自身と早百合を護る! 敵を近寄らせない!


 その間に早百合は私たちのそばへ。


「よし!」


 ステファニー、大きく頷いて。


「さあ早百合も! 二人で僕を抱き締めて! そのままキスするんだぁぁーッ!!」


「意味がわからん!?」


 いえ、キスに異存はありませんけど?

 これがどう、悪魔との戦いで切り札となるのか!?

 てか、いつもと同じだし! 結局キスだし!


「早百合、早く! 早く僕のほっぺにおっぱいをむぎゅってしてよ! さあ、さあさあさあ!!」


 ……獣の目だ。


「ううっ、どうしようマジカル☆リリィ、ステファニーちゃんがいつも以上に気持ち悪いよ?」


「と、とりあえず……キス、しよっか?」


 かなり脱力気味の私たちですが、ここはステファニーの言う通りに。

 二人向かい合い、胸と胸の間にステファニーを挟み、抱き合うような形で。

 彼の頭上で。


「……ちゅっ♪」


 一度キスしちゃうと、あとはいつも通り、止まりません!

 唇を、舌を貪り合う、百合でケダモノな私たち♪


「ちゅ、んっ、ふぅんっ♪」


 かなりディープな百合キス。いつもだいたいディープだけど。

 激しく絡み過ぎて、唇から、あごから唾液が垂れちゃうくらい。


 それを、ハァハァしながら顔面で受け止めるステファニー!?


「き、キマシ! キマシタワー!!」


 その時、ステファニーのぬいぐるみボディが輝いた!!

 聖なる光の嵐となって乱舞する黄金の百合魔力が。

 彼の身体に吸い込まれて!!


「キマシ百合魔力!! ソウルエネルギー、チャージ完了だぁぁぁッー!!」


「ま、まぶしいッー!!」


 激しすぎる光に、思わず目が眩む私たち。

 その光が収まった後。私たちが見たモノは。

 そこに立っていたのは!!


「ウホッ、いい男!?」


 ガチホモの悪魔アハートヴァールが思わずときめく。


 目映い黄金の髪に、真っ白な肌。長身にファンタジーの天使みたいな服を纏い、六枚の光の翼を持つ!!

 超絶イケメンのお兄さんでした!?


「って、まさかステファニー!?」


 早百合から聞いてはいたけど、実は私見るの初めて!

 力を使い果たしぬいぐるみに憑依する前の、ステファニー本来の姿!!


 ほ、ほんとに美形だー!? でも百合作品なので需要は無いはず! 私負けない!!


 そしてステファニー(美しすぎる美形青年天使)、輝く翼を雄々しく広げ。

 悪魔に対峙し、気品あるイケメンボイスで。


「……さあ、終わらせようか」

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