第15話

彼が落ち着いたところで、

リビングのソファーに

戻った


さっき渡した

水を飲む姿は

いつもの彼に戻っていて

安心した


「では…帰ります…」


なぜ私が

専属のスタッフに

なったのか、

聞きたいことは

あったけど

今日は聞けそうにない


「?マネージャーは?」


「ケイタイを探しに

出たままです」


「ケイタイ?…あ…そうだ…」


心当たりがありそうだった


「どこに置いてきたんですか?」


その質問には答えずー


「貸してー」


私のケイタイを

手に取ると

慣れた手付きで

番号を押す


私のケイタイを

彼が使ってる!


そんなことが

不思議で、

嬉しくて、

ドキドキする

ファン心理を

隠し切れずに

彼をまた見つめてしまう


私の視線に気づいたのか

目がばっちり合って

誰かとケイタイで

話しながら、

私の視線を捕らえて

離さない


やばい


吸い込まれそうに

かっこいい


電話の相手は

マネージャーだ


電話を切って

返してもらった

ケイタイは

当たり前だけど、

彼が使ったもの


無意識に握りしめる


それを見て、

微かに

彼が

笑った気がした


恥ずかしくなって、


「ケイタイ見つかったんですか?」


もう、帰りますねー


早く帰りたくなった


「うん、マネージャーが出たから

見つかったみたい。」


さっき電話したのは、

彼のケイタイにだったんだ


とりあえず帰りたくて

荷物を持つと、


「帰るの?」


彼が聞いた


え?…


「まだ、何か…」


まだ仕事がありますか?ー


「マネージャーは直帰するって。

駅まで遠いし、俺、送って行けないよ」


「はい…」


わかってますー


「タクシーで帰りますから」


「この辺り、タクシー来ないよ」


え…


「そうなんですか?

じゃあ、呼びます」


タクシーを呼んで帰ればいいこと。


そう思ったのに、


「部屋空いてるし、

泊まってけば?」


シャワー浴びてくるー


は?え?えぇ??


私のことは

お構いなしに

さっさと

シャワールームに

消えて行った


どうすれば

いいの!?

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