リバイアサン

菊地徳三郎

プロローグ

旧約聖書 ヨブ記第41章

あなたは釣り針でリバイアサンを釣り上げることができるだろうか。縄でリバイアサンの舌を押さえ付けることができるだろうか。

リバイアサンの鼻に縄を通せるだろうか。あごにかぎを刺し通せるだろうか。

リバイアサンはあなたに頼み込んだり、優しく語り掛けただろうか。

あなたと契約を結び、一生あなたの奴隷になるだろうか。

あなたは鳥を飼うかのようにリバイアサンを手なずけたり、少女たちのためにつなぎ留めておいたりできるだろうか。

商人たちはリバイアサンを商えるであろうか。商人たちの間で分け合うことができるだろうか。

あなたはリバイアサンの皮膚にもりを何本も突き入れ、頭にやすを何本も刺せるであろうか。

手をリバイアサンに置いてみなさい。戦いが頭から離れず、もう触ろうと思わなくなるから。

従わせようなどと期待しても無駄だ。見るだけで圧倒されるだろう。

それを挑発しようとする者などいない。

であるならばなおさら、誰が神である私に立ち向かえるだろう。

誰が私に捧げただろう。私が報いなければならないほどに。

天の下にある全ては神である私のものなのだ。

リバイアサンの手足や力強さ、均整の取れた体つきについて話を続けよう。

誰がリバイアサンの外衣を剝いだであろうか。誰がリバイアサンのあごの中に入れるであろうか。

誰がリバイアサンの口の扉をこじ開けることができるであろうか。

並んでいる歯は恐ろしい。背中にはうろこが列を成しており、隙間なく封じられている。一つ一つがぴったりとくっつき、空気さえ入り込むことはない。

互いに張り付き,密着していて引き離せない。

リバイアサンの鼻息は光を放ち、目は夜明けの光のようだ。

口からは稲妻の光が出ていき、火花が飛び出す。

鼻からは煙が立ち上る。いぐさを炉で燃やすかのように。

息をすれば炭が燃え上がり、口から炎が出る。

首はとても頑丈で、行く先々に恐怖を巻き起こす。

皮膚は互いにしっかりとくっついており、鋳造された物のように固く動くことがない。

心臓は石のように、臼の下石のように丈夫だ。

リバイアサンが起き上がると、強靱な人でさえも恐れ、うろたえる。

剣で攻撃しても制圧できず、やりも投げ矢も矢尻も歯が立たない。

リバイアサンにとっては、鉄はわら、銅は腐った木に過ぎない。

矢を放たれても逃げ去りはしない。石投げ器の石もわらに変わる。

こん棒をわらであるかのように見なし、投げやりのうなる音をあざ笑う。

腹はとがった土器片のようだ。脱穀そりのように泥に跡を残していく。

リバイアサンは深い水を鍋のように沸き立たせ、海を香油の鍋のようにかき混ぜる。

通った後にはきらめきが生じる。

人は深い水に白髪があると思うだろう。

リバイアサンのようなものは地上にいない。恐れを知らない生き物として造られた。

誇り高い動物を全てにらみ付ける。全ての勇ましい野獣を治める王である。


 旧約聖書 ヨブ記 第41章

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