お掃除スライムの活用方法
草原の街に店を構える商人の子供が歩けるようになった。子供の成長は早い。
寝ている時以外は動き回ってる時間の方が長いぐらいだ。早送りしてみると面白い。
ただ、動き回れるようになった分周りの人は大変だ。
店主の商人は店の商品を手に届かない場所に移し、商人の嫁は危ない事をしないよう常に目を光らせている。
一方それまで一番面倒を見ていたであろうお掃除スライムは楽しそうだ。
子供があちこち走り回ってゴミや埃を撒き散らすので今まで以上に掃除のやりがいが出ているからだろう。
しかし・・・このお掃除スライムちょっと大きくなってないか?
前は商人の肩に乗るぐらいの大きさだったはずが、いつの間にか育った子供が乗っても潰れない程大きくなっている。
ここまで大きくなるお掃除スライムは珍しい。普通は邪魔にならないように比較的小さい姿でいる個体が大半なんだが。
これは成長なのか?それとも環境に合わせて変化したのか?・・・ダメだ、スライムという特性上何が要因かわからん。
家族からかなり大切にされており、子供もそれを自然と理解してるのかお掃除スライムに対して酷い事をしない。
うーん、この辺りが他のお掃除スライムと違う点なんだが、統計を取ってないのでよくわからない。
とりあえずお掃除スライム自身は家族の愛情に報いようと掃除や子守、時にはソファーのように変形して家族の癒しになっている。いい子だ。
そういえばお掃除スライムといえば一体気になる子がいるんだった。ちょっと画面を移そう。
確か月光族の村にいたはず・・・お、いたいた。
ちょっと前にチラッと画面に映っていて気付いてはいたが、その時は他の事でよくよく調べられなかった個体。
全身白一色になってる珍しい個体で主に牛乳瓶の掃除をしている子だ。
白いスライム自体割と珍しく、特定の地域ではホワイトスライムやホーリースライムといった種がいたりするが、この子の種族名はお掃除スライムのままだ。
村人達はこの子が徐々に白くなっていく様子を見てるので何とも思ってないようだが、他所から来た人は物珍しそうに見ていくため村の名物スライムになっている。
この白いお掃除スライムの仕事は牛乳瓶に付着した牛乳を綺麗に吸い取ること。
それ以外にも余った牛乳の処理などもしており、稀に村人の女性の胸に直接張り付いてたりしてるときもある。なんて役得な。
後は定期的に村で栽培している毒消し草や浄化草を食べる事がこのお掃除スライムの仕事になっている。
どうしても牛乳は雑菌の温床になりやすく、徐々に汚染されていってしまうのでそれの予防のためのようだ。
お掃除スライム的にはあまりこの手の草は好きではないようで、しぶしぶ受け取って体内に取り込み、その後調子が良くなって跳ね回るというのを毎回やっている。かわいい。
ちなみにこのお掃除スライムを持ち込んだのは商会で活動している行商人の兄妹だ。
牛乳瓶の洗浄問題解決にお掃除スライムを活用するのを提案したらしい。
当時村人達はお掃除スライムをいつの間にかその辺りにいる無害なスライムぐらいにしか思っていなかったが、兄妹がスライムの有用性を丁寧に説明した結果、ひとまず実験的に導入となった。
村人達は言われるがまま半信半疑でお掃除スライムに飲み終えた牛乳瓶に付着する牛乳のみを吸い取るように教え込んだところ、予想以上に仕事を早く覚え、そのまま正式に導入となり、今や村に欠かせない一匹になっている。
商会は今回の事で何か新しい商売を思いついたようで、フリーのお掃除スライムを見かけるとスカウトしている。
傍から見るとお掃除スライムに真面目に話しかけてる商会員というのはなかなかシュールな光景だがそれだけ本気なのだろう。
今後の動きが気になるところだ。
さてと、サチの様子を見るとまだ終わるまで時間があるっぽいな。
今日は願い事が順調に進んでくれたおかげで早く終わったのでもう少し色々見て回れそうだ。
気になるお掃除スライムは見たが、他にも面白い個体がいるかもしれない、探してみよう。
彼らは普通のスライムとちょっと生態系が違うのでつい目で追ってしまうんだよなぁ。
仕事が終わり、サチが片付けるかと思ったらこっちにやって来て念で両手で収まる程度の水球を作った。
「どうぞ」
「え?なにこれ?」
「スライムと同じ水分比率で作りました。片付け終わるまで堪能してて下さい」
そう言って俺の返事を待たず水球を俺によこして片付け始めた。
・・・気を使われたのだろうか。
確かにこっちにはスライムは居ないし、前の世界でも居なかった。スライムという名の片栗粉と水を混ぜたようなものはあったが。
ふむ・・・これがスライムと同じ水分量の感触か。前にウォーターベッドを作った時と似てる。
今回は表面に水が無いので手も濡れない。
指を突き立てるとズブッと入る。抜いても手は濡れない。うーん、謎素材。
商人の子供がやっていたように顔に当ててみる。・・・おぉ、ひんやりしてて気持ちいい。頭を働かせた後なので尚更いい感じだ。
「片付け終わりました・・・どうしました?」
「いや・・・。サチの胸とどっちがいいかと思ったが、断然サチの方が上だった」
「そんなものと私の胸を比較しないでください」
「む、それもそうか。すまなかった」
「私の胸に頭を下げないでください!」
ちょっとした冗談だったのに擬似スライムを取り上げられてしまった。
ただ、これはこれで色々使い道がありそうだなと思った。
今度提案して夜に活用させてもらおう。
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