成長の確認
下界の魔族領は人口比率として亜人種や悪魔種など非人間種が多い。
中央都市は総人口が多いので北の領と比べると人間種の割合も高くなるがそれでも非人間種の方が上回っている。
そんな中央都市なので文化や慣習が人種によって違うのでそれぞれの人種が住みやすい区画が用意されている。
区画といっても建造物が住みやすい構造になっているだけで、壁で区分けして排他するような作りにはなっていない。
さすがに小人種が巨人種の区画に行くような事は滅多に無いが、用事がある場合は区画内に必ず設けてある共同区域に行き、呼び出してもらうのが一般的な交流方法になって
いる。
普通ならこのように区分けしてしまうとどうしても人種間で差別や軋轢が生まれるのだが、魔鏡の影響でそのような事は一切起こらず、お互いを尊重して気遣いをする極めて
良好な関係を築けている。
確かに魔鏡のおかげでいざこざが起きないのは確かだが、仮に魔鏡が無くても問題が起き難くなるような都市造りが随所に見られる。
もし魔鏡によって負の感情を集めているのであれば、対立を煽るような街造りをすればいいはずだ。
という事は魔鏡の目的はあくまでこの都市を安定的に維持するためのものであって、魔界に送ってるのは副産物なのか?
もしそうならいいが、ただ単に魔鏡が耐え切れる量にするために軽減してるだけかもしれない。
まだまだ調べる必要がありそうだ。
考えるのはこれぐらいにして観察に戻ろう。
しかしあれだな、人種の軋轢がなくなると異種間交際がこうも発展するのか。
街のあちこちで違う人種が仲睦まじくしている様子が見て取れる。
その関係の延長で夫婦になるが、産まれて来る子供はどちらかの親に似るので子供は混乱したりしないのだろうか。
ほー・・・産み分け術なんてのがあるのか。
魔法による制御方法もあれば時期や気温で男女や種族をある程度絞れるのか。勉強になる。
あーそうか、中には片方の性別しか産まれない種族もあるのか、基本双方の種族を産むのを推奨してるんだな。なるほど。
一夫一妻ならまだしも下界はその辺り自由だから色々大変だと思うがちゃんと補助施設が充実してるから何とかなってるのか。へー。
「ソウ、そろそろ時間ですが・・・何を見ているのですか?」
「あ、いや、ちょっと調べ物をな」
しまった、気付いたら自分の周りに交配関係の資料が一杯表示されてしまっていた。
違うんだサチ、ちゃんと調べてただけなんだ。その視線は辛い。
その後ちょっとサチがむくれてしまい機嫌を直すのに時間が掛かってしまった。
今日は家で料理をしている。
使える食材も増えてきて作れるレシピも増えてきたが、俺の料理の腕が及ばないのかなかなか上手く作れない。
「んー・・・これ最初に作った奴の方が美味かった気がする・・・」
振舞ったりするので同じ料理を何度も作るのだが、味見していると最初の方が美味しく作れたように感じる。
味見にのしすぎで舌が慣れてしまったか?
「サチ、サチ」
テーブルの方でパネルを開いて作業をしているサチを呼ぶ。
「なんですか?」
「あーん」
「・・・あー」
出来立てを口の前に差し出すと素直に口を開いてくれる。可愛い。
「どう?」
「ん?おいひいれふよ?」
「そうか」
「んっ・・・どうしました?」
「いや、前に作ったのより微妙になってる気がして」
「そうでしょうか。確かめてみましょう」
そう言って空間収納から前に作った同じ料理を取り出す。
未だに時間経過してからの料理に手を付けるのに一瞬抵抗してしまいそうになるんだよなぁ。早く直さないと。
どれ・・・。
「・・・あー・・・」
「どうですか?」
「一言で言うと色々雑だな。食えなくないが今のと比べると他人に出したくない」
「そうですか。では今日の夕食に食べてしまいましょう」
「うん、そうしよう」
そうか。下手になってるかと思ったけどそんな事はなかったか。
「職人の方々もよくソウと同じような状態に陥るらしいですよ」
「そうなのか?」
「ミリクリエさんが以前そのような事を言っていました。職人の方々は定期的に同じものを作って保管しているそうです」
「なるほど。これもそうなのか?」
「これはただ単に出しそびれていただけです。過去に作りすぎてしまって食べきれないので空間収納に入れている料理が結構あります」
「あー・・・」
そういえば料理を作り始めたての頃は新しい食材を調理するのが楽しくて色々作り過ぎてたっけ。
という事はこれみたいに今だとちょっと人様に食べさせたくないような出来のもまだまだあるのか。
「ちなみにどれぐらいあるんだ?」
「えぇと・・・こちらにリスト化したものがあります」
おぉ・・・ちゃんとリスト管理してるのか。偉い。
画像付きなのもいいな。
あぁそうか、俺が適当に名前付けてる料理があるから一致させるために必要なのか。
「しかしこうやって見ると結構な量が残ってるな・・・」
「基本的に消費は私達二人だけですから」
「うーん、もうちょっと作る量を減らした方がいいかなぁ」
「いえ、現状維持でお願いします。代わりに他の人にも消費して貰いましょう」
「あてはあるのか?」
「いくらでもいます。警備隊だけで恐らくこの量を消費しきれるかと」
「そうなのか?でもなぁ、初期の頃のを食べさせるのはちょっと忍びないというか恥ずかしいというか・・・」
「そこは諦めてください。どうしてもと言うなら普段の食事に一品追加すればいいかと」
「うーん、じゃあそうするかー」
もしかすると初期に作ったものから何か気付けるかもしれないし丁度良いかな。他人に出すよりはマシだし。
「ところで、甘いものはあまり残ってないんだな」
「えっ!?」
ぎくって顔するんじゃない。分かりやすい奴だな。
「えっとその、会議などあった際に出したりしていましたので」
「正確に」
「会議の円滑化、報酬として、あとは私がちょっと多めに食べていたかもしれません。すみません」
「いいよ、怒ってないから。そういうことならもう少し多めに作ろうか?」
「本当ですか!?」
あーあー嬉しそうな顔しちゃって。
ま、作った料理を預かってくれたり色々してもらってるからな。
これぐらいで喜んでもらえるならいくらでもやるさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます