山下徹
出張前にまさか元カノに会うとは思わなかった。忘れ物を取りに行くはずだったが、あの状況をゆうりに見せることは出来ない。何をしでかすかわからない。休みだった桐谷にお願いをして取りに行ってもらった。
元カノのゆかりは小柄で強気な女だ。
ゆうりとは比べ物にならない。
比べてしまっては、ゆうりが可哀想だ。
ゆうりは元気だろうか。メールをしてみたが、何の音沙汰もない。
ブブっと携帯が鳴る。
ゆかりからだった。
『今、ホテルの前にいるんだけど、今から行っていい?』
今度のコンペはゆかりと同じ担当だ。
俺はゆうりに誓い浮気はしないが、コンペが大事。ホテルのロビーで話そうとしたが無理矢理ホテルのバーに連れていかれる。
こういうところが嫌なんだよな。
ゆかりは、適当にお酒を頼むと俺の今の話ばかりを聞いてきた。
ゆうりに会いたいなとボンヤリしていると、意識が遠のいていく。
翌朝、起きると俺の部屋でゆかりが横に寝ている。何故こんなことになってしまったんだろうか。
俺はゆうりに合わす顔がない。
「徹、起きたの?」
ニコリと悪女の顔が微笑む。
俺は何も覚えてない。
「昨日はお疲れ様でしたー。ゆうりって奥さんの名前だよね?ずっとうわ言のように言っていたよ」
俺は何て事をしてしまったんだ!!!
携帯を見ると何件も着信が入っている。
ゆうりからだ!!
留守番電話には『また、かけます』と。
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