裏切り

「おはようございまっ‥‥‥皆んな!? どうしたんですか!?」


僕が目を覚ますと、みんなが僕の周りで息を切らせて倒れていた。

浴衣もはだけていて、直視できない。


すると柚木さんがゆっくり起き上がり、状況を説明してくれた。


「輝久が寝た後、みんな一斉に輝久の取り合いでさ、おかげで一睡もできなかったよ」

「なにやってるんですか‥‥‥集合までニ時間はあるし、少し寝てください」

「そうするよ」





ニ時間後、昨日と同じ役割で仕事を始め、お昼の一番忙しい時間が終わり、客足も減った頃、剛さんが僕達に自由時間をくれた。


「合宿中の仕事はこれで終わりだ! 後は自由に遊んでこい!」


僕と結菜さん以外の全員が、嬉しそうに店を飛び出した。


「やったー!」

「莉子の生徒は本当に元気がいいなー」


そんな剛さんの独り言を聞いて、僕と結菜さんも、水着に着替えるために店を出た。



***



更衣室で真菜と美波は、昨日の話をしていた。


「お姉ちゃん! 私、やったよ!」

「どうしたの?」

「見てよ! この首の跡! 昨日、結菜ちゃんが首を絞めてきてさ、この首の痕が証拠になるよ!」


美波は真菜の首を見て、真菜の背中を叩きながら喜んだ。


「よくやった! 我が妹よ!」

「痛いよ、お姉ちゃん!」

「まぁ、退学はほとんど決定だし、今日からまた敵同士だね」

「お姉ちゃんには負けないから」



***



僕は先に着替え終えて、海を見ながら黄昏ていた。

結菜さん、本当に退学になっちゃうのかな。

それはそれで、やっぱり寂しいよな。

そんなことを考えていると、水着に着替えた皆んなが戻ってきた。

結菜さんは昨日と同じ白い水着、真菜さんは水色、美波さんはピンク、柚子さんはオレンジ、芽衣さんは黒色の水着を着ている。

黒がエロすぎる!!


芽衣さんのスタイルに魅力されていると、美波さんと真菜さんが、僕の腕に抱きついてきた。

真菜さんはこれでもかと胸を押し付けてくる。

美波さんは‥‥‥とにかく頑張っている。


「輝久くん♡ 私と遊ぼ♡」

「輝久は私がいいよね?♡」

「ふ、二人とも! とりあえず、胸を押し付けるのはやめてください!」


その光景を見た結菜さんは、怒りを露わにして、大きな水鉄砲で僕達三人に水をかけた。


「冷たっ!! 結菜さん、その水鉄砲どうしたの?」

「剛さんが貸してくれました」


すると真菜さんは誇らしげな表情で、結菜さんを煽るように言った。


「輝久くんになんか用? どうせもう会えなくなるんだし、輝久くんに構わないでください」


それを聞いた美波さんも、結菜さんを煽り始める。


「そうだそうだ! 輝久に近寄るな!」


結菜さんが何か言い出そうとした瞬間、次は柚木さんが僕に飛びついてきた。


「なに言ってんのー! 輝久くんは私のだよー!」


僕はよろけて尻餅をついてしまった。


「柚木さんまで、やめてください!」


次に結菜さんは、柚木さんに向かって水鉄砲を撃った。


「冷たっ! やったなー! 芽衣、人数分の水鉄砲借りてきて! 誰が輝久に相応しいか勝負だ!」

「わかった!」


人数分って、僕の取り合いに僕も参加するのかな?


海の家に走って行った芽衣さんは、しばらくして人数分の水鉄砲を抱えて戻ってきた。


そして柚木さんが張り切って、ルール説明を始めた。


「ルールは簡単! 一番最初に輝久くんに命中させた人が、輝久くんに相応しい女! その人は今日の夜! 輝久くんと同じ布団で寝れます!」

「僕の気持ちは無視ですか!? それに柚木さん、僕が水鉄砲を持つ意味は? 僕のだけ小さいし‥‥‥」

「護身用にどうぞ」

「あ、はい」

「あ! 制限時間は五分! 輝久くんが五分逃げ切れたら、一人で寝ることを許可します! 多分!」

「今、多分って言った!? 多分って言いましたよね!!」

「そろと輝久くんに撃たれた人は、そこで脱落ね!」

「聞いてます!?」


全員、一斉に僕に銃口を向けた。

女性一同は、胸の中で熱い闘志を燃やしているように見える。


「じゃあ、スタート!!」


そしてついに、柚木さんがスタート宣言をして、ゲームが始まった。

その瞬間、皆んなは一斉に僕目掛けて水鉄砲を撃ち始め、僕はとにかく逃げまくった。

そうだ!僕も撃ち返さなきゃ!


「くらえ!」


僕が撃った海水は、柚木さんの太ももに見事命中した。


「あー! やられたー!」


これで柚木さんは脱落だ。

続いて美波さんのお腹に見事命中!


「くそー!」


これで美波さんも脱落。

結菜さんと芽衣さんは、むやみに撃ちすぎて水を切らせてしまい、急いで海水を入れに行った。


そして真菜さんは動きが遅い!当てれる!


「真菜さん! くらえー!」


海水は、真菜さんの大きな胸に当たってしまい、綺麗に水が弾け飛んだ。


「わぁ! 輝久くん、こんな所で♡」

「た、たまたまですから!」

「そういうことしたいなら、ちゃんと言ってくださいよ♡」

「だ、だから! 違うんです!」


結菜さんと芽衣さんが戻ってきた!ヤバイ!


二人が視界に入った時には、もう遅かった。

二人が撃った海水は、同時に僕の両目に当たり、海水のせいで、僕は両目を抑えて倒れ込んだ。


「目が!! 目がぁ~!!」


結菜さんは僕を心配して、水鉄砲のタンクを外して僕の頭を支えた。


「輝久くん大丈夫ですか? 早く目を洗ってください!」

「えっ‥‥‥」


結菜さんは、タンクに入った海水をドバッと全て僕の目にかけ、僕はその場で声も出せずに転げ回った。


しばらくして目も復活すると、思わず結菜さんに文句を言ってしまった。


「結菜さん!! これも海水です!!」

「海水が悪いんですね‥‥‥任せてください。私が消します」

「神!? それより、今のどっちが勝ちなんですか?」

「結菜に譲るよ」

「ありがとうございます」


芽衣さんが結菜さんに勝ちを譲るなんて、珍しいこともあるもんだな。


その後も皆んなで海水浴をしたり、砂に美波さんを埋めたりと、沢山遊び、なんだかんだ仲良くできる時もあるんだなと、一人で感心していた。





日が落ち始めた頃、莉子先生が僕達を呼びにやってきた。


「肝試しだー! 山に行くわよ!」


うわー、先生、めちゃくちゃ張り切ってる。


肝試しをする山は、旅館の近くの山だった。

山に着いた時には完全に真っ暗で、すでに帰りたくてしょうがなかったが、まぁ、中学生向きの肝試しだしと、気持ちを落ち着かせた。


肝試しが始まると、次々と中学生達が怯えながら山に入っていく。


「私、結菜と行く!」


柚木さんが結菜さんを誘った。

二人は仲直りしたのかな?


「私も」


まさかの芽衣さんも一緒に行くと良い初め、結菜さんは素直に嫌そうな表情を浮かべた。


「私は輝久くんと行きます。それに、なんで私なんですか」

「結菜、お化けとか大丈夫そうじゃん! いいから行くよ!」


柚木さんは結菜さんの手を引っ張って、強引に山に入っていってしまった。

結菜さんは嫌そうだったけど、仲良くなるチャンスなら嬉しいな。


残された美波さんと真菜さんは、嬉しそうに僕の両腕にしがみき、僕は美波さんと真菜さんの、三人で山に入ることになった。


山に入る前から、背後に視線を感じて振り向くと、莉子先生は僕達三人を、死んだ魚のような目で見ていた。


「輝久くん、呪われないように気をつけてね。この山にはリア充を呪う霊がいるらしいから」

「今、僕の目の前にも、日頃からリア充を呪ってそうな女性教師がいるんですが‥‥‥」



***


その頃、結菜達は矢印が書いてある看板の前にいた。

そして芽衣は、わざと矢印とは別の方向を指差した。


「こっち行くと近道だって。中学生が言ってたよ」

「言ってた言ってた!」

「それなら早く終わらせたいですし、近道を通りましょう」


それからしばらく、矢印とは逆の道を歩いていると、結菜は少し不安そうな表情を浮かべ始めた。


「この道、本当に大丈夫なんですか? 右側、すぐ崖になってますけど‥‥‥」


その瞬間、芽衣は足を止めた。


「ねぇ、結菜、輝久のこと‥‥‥私に譲ってよ」

「何を言っているの? 冗談なら旅館で聞きます。早くゴールしちゃいましょう」

「冗談? 私は本気だから!!」


芽衣は勢いよく結菜を突き飛ばし、崖から落とそうとしたが、結菜は体を押してくる芽衣と取っ組み合いになり、それを見た柚木は青ざめた表情で芽衣を止めようとした。


「芽衣! やりすぎだよ! ただ、結菜を山の中に置いてくるだけじゃないの!?」

「置いてきたって、明るくなったら帰ってこれるでしょ!! そしたらまた、私から輝久を奪うんだ!! 邪魔なんだよこの女!!」


結菜は、その言葉を聞いて表情が変わった。

怒りの中に切なさが混ざったような表情だ。


「本当に大切な存在を奪われたことなんてないくせに!!」

「本当に大切な存在ってなんだよ!! 輝久に惚れたのは一目惚れなんでしょ!!」

「私は違います!!」

「嘘つくな!!」

「きゃ!」


芽衣は結菜を力強く押し、遂に結菜は崖から落ちてしまった。

目の前で結菜が落ちていくのを見て、柚木は脚を振るわせた。


「芽衣‥‥‥なにしてるの‥‥‥」

「私の邪魔をする女なんて、こうなって当然だよ」


そして芽衣が柚木の方を振り返ろうとした時、足を滑らせて崖から落ちそうになる瞬間、柚木が芽衣の腕を力強く掴んだ。


「危なかった、ありがとう柚木」


だが柚木は何も喋らなかった。


「柚木? 早く引っ張ってよ。このままじゃ死んじゃう‥‥‥」

「そういえばさ、結菜を消したら‥‥‥私達敵同士だったよね」

「何言ってんの柚木! お願い! やめて!」

「やっぱりさ、敵は少ない方がいいよね」

「柚木!!」


柚木は芽衣の手を離して、一人で来た道を帰っていった。



***


「そろそろ僕達の番だね」


自分達の番がそろそろと言う時に、真菜さんが入り口を指差した。


「あれ、柚木ちゃんじゃない?」

「本当だ、柚木さーん! 他の二人はどうしたんですか?」

「ふ、二人とも‥‥‥どんどん進んで行くからさ、私一人になっちゃって、怖くてギブアップしてきた」


その時、二人の男子中学生が、汗だくになりながら青ざめた表情で入口から帰ってきた。


「熊です!! 熊が出た!!」


中学校の先生は、笑いながら男子中学生を馬鹿にした。


「熊の着ぐるみでしょ? まったくー、男なのに情けないなー」


そんなことを言っていると、熊の着ぐるみを着た男性教師が走って戻ってきた。


「熊です!! 本物の熊がでました!! 早く生徒を旅館に戻しましょう!!」


それを聞いた柚木さんは顔が青ざめ、体をガクガクと震わせた。


(あの崖‥‥‥暗くて下が見えなかったけど、二人が落ちた時の音的に死ぬ高さじゃない‥‥‥しばらく帰ってこれないようにって思ったけど‥‥‥ 二人が熊に会ったら‥‥‥)

「柚木さん? 大丈夫ですか?」

「え! き、気にしないで‥‥‥」


莉子先生は焦りながら僕達に指示を出した。


「旅館に戻りなさい!」

「結菜さんと芽衣さんが帰って来てません!」

「先生がなんとかするから、早く戻りなさい!」


僕達は言われた通り、大人しく旅館に戻った。


しばらくして部屋のドアが開き、結菜さん達が帰ってきたと期待したが、やってきたのは莉子先生だった。


「先生! 二人は無事なんですか?」

「見つからなかったわ‥‥‥」

「そんな‥‥‥」

「警察や二人の保護者には連絡したけど、捜索は明日の朝になるみたい」


柚木さんの体の震えが激しくなっている。

もしかして、なにか知ってるのかも。


「柚木さん、本当は何か知ってるんじゃないですか?」

「し、知らない‥‥‥」


僕は避難用の懐中電灯を持って立ち上がった。


「二人を探しに行きます」

「それは許せません! 熊がいるのよ? これ以上被害者を増やすようなことはできません!」

「なんですか? その‥‥‥ 二人が熊の被害にあったみたいな言い方」


思わず怒りそうになった僕の手を、美波さんが優しく握ってくれた。


「そうだよ輝久、大人しくしてよう」

「‥‥‥わかりました‥‥‥」



***



輝久が心配している頃、結菜と芽衣は、崖の下で寝そべりながら話をしていた。


「なんで芽衣さんもここにいるのかしら」

「柚木に裏切られた」

「惨めですね」

「うるさい。さっきさ、一目惚れじゃないって言ってたけど、なんで輝久を好きになったの?」

「‥‥‥輝久くんには一目惚れって伝えているんですが‥‥‥誰にも言わないって約束してくれますか?」

「まぁ、さっき熊が出たって騒いでたし、言いたくても言えなくなるかもね。いいよ、生きて帰れても言わない」

「怖いですねー、人は簡単に人を裏切ります。柚木さんみたいに」

「そうかもね、結菜が決めていいよ。私を信じるかどうか」

「信じません」


その言葉を聞いて、芽衣は起き上がった。


「はぁ!?」

「ですが、さっき馬鹿にされた気がしてムカムカするので教えます」

「う、うん、聞かせて」



***



旅館では、僕の貧乏ゆすりが止まらなくなっていた。


結菜さん、旅館に携帯置きっぱなしだし、持って行ってればGPSで居場所が分かったのに。


真菜さんは僕を心配してか、優しく話しかけてきた。


「二人が心配なのは分かるけど、結菜さん強そうだし大丈夫だよ」

「確かに、結菜さんの怒った顔見たら、熊すら逃げ出すかもね」


少し気持ちが紛れたその時、外からヘリコプターの音が聞こえてきた。

僕達は捜索隊が来てくれたと思い、慌てて外に出た。


外に出て空を見上げると、無数のヘリコプターが飛んでいた。


「すごい‥‥‥」



***



ヘリコプターの音は、結菜達にもしっかり聞こえていたが、芽衣はそれどころではなく、子供のように号泣していた。


「結菜〜! ごめんね! 結菜の過去とか、輝久を好きになった理由知ったら、私じゃ敵わないよ! もう迷惑かけない、だから、これからは仲良くしよ?」

「でも、輝久くんのこと好きなんですよね」

「好き! ちょー好き! でも、もう無理矢理奪おうなんて思わない! 私の魅力で振り向かせてみせる!」

「まぁ、魅力では負ける気がしないので、それなら仲良くできそうですね」

「はぁ!? 失礼なんだよ!! 待って‥‥‥結菜、あれ‥‥‥熊じゃない?」


芽衣が指差す方向を見ると、そこには大人の大きな熊がいた。

だか、熊を見ても結菜は冷静だった。


「芽衣さん、動かないでください。多分このヘリコプターは私達を探しています。みんなが私達を見つけてくれるまで、このまま立ちながら木のふりをしましょう」

「いやいやいやいや!! 木のふりしたら爪研ぎされちゃうよ!? 頭から足までズサー! だよ!?」


芽衣の声に気づいた熊は、ゆっくり二人に近づいてくる。


「まったく貴方は‥‥‥」

「ごめん‥‥‥」


その時、ヘリコプターのライトが二人を照らした。


ヘリコプターに乗っていたのは、結菜と暮らしている宮川達だった。

宮川は結菜を見つけて、すぐにトランシーバーで指示を出す。


「結菜お嬢様と、ご友人を発見。大至急二人の元へ迎え‥‥‥ちょっと待て、熊だ!! 結菜お嬢様の目の前に熊がいる!! 早く爆竹を落とせ!!」


すると、結菜達の周りに大量の爆竹が落とされ、夜の山に爆音が響き渡った。

それに怯んだ熊は、爆竹に驚いて走って逃げていった。


「はぁー‥‥‥助かった」

「芽衣さん! なんで大きな声を出したんですか! 熊に気づかれたじゃないですか!」


「助かったんだからいいじゃん! ひぃ! ねぇ‥‥‥また何か走ってくるよ!?」


結菜達を助けに来た、結菜の家に住んでいる大人達が茂みを出た瞬間、恐怖のあまり、結菜と芽衣は抱き合って悲鳴をあげた。


『きゃ〜!!!!!!!!』

「結菜お嬢様!! 助けに来ました!! 旅館へ道案内します!」


その瞬間、熊じゃないと分かった結菜は無表情に戻った。


「ありがとう。芽衣さんも行くわよ」

「う、うん」


歩いて旅館へ向かう途中、芽衣はニヤニヤしながら結菜の肩に軽くアタックした。


「結菜も意外と怖がりなんだねー」

「別に、たまたまです」

「さっき、あんな可愛い声で叫んでたじゃん! きゃー! って」


すると、結菜は恐ろしい顔で芽衣を睨みつけた。


「誰かに話したら、また拘束して用具入れに閉じ込めますよ」

「い、言わない言わない!」

「好きになった理由と過去の話も、誰にも言わないでくださいね」

「分かってるよ!」


そしてやっとの思いで山を出ると、輝久達が待ってくれていた。



***



「結菜さん! 芽衣さん! 無事でよかったです!」


結菜さんはすぐに僕をを抱き寄せて、僕の頭を撫で回した。


「心配をおかけしました。ですが輝久くん、芽衣さんの心配は余計です」

「なんでよ!! 輝久! 私のことも心配だったよね?」

「も、もちろんですよ」

「ほらね!」


結菜さんは無言で、僕を抱きしめる力を強くして怒りを表した。


顔が!胸に!埋まる‥‥‥。


「輝久くん、貴方は私だけを想っていればいいの。輝久くんの頭の中に私以外の女を入れちゃダメ。もしそんなことをしたら、輝久くんの頭を解剖しなくてはいけません‥‥‥なんで何も言ってくれないのですか?」

「輝久、そろそろ窒息死するよ」

「あら、ごめんなさい。強く抱きしめすぎました。愛ゆえに」


愛に殺されるところだった‥‥‥。


芽衣さんは震える柚木さんに駆け寄り、なにかを話し始めた。


「裏切ったこと、もう怒ってないから」

「え‥‥‥」

「私、これからは卑怯なことしないで、輝久を惚れさせるって決めたの」

「そっか‥‥‥」


莉子先生は僕達を見て安心したようすで、笑みを浮かべてた。


「さぁ、全員部屋に帰るわよ!」

「はい!」


僕達は部屋に帰る前に、温泉に寄って帰ることにした。

そして男湯に入る寸前、結菜さんが僕の手を掴んだ。


「この旅館、貸切混浴があるみたいですよ♡」

「今日はゆっくり入らせてくださーい!」


僕は逃げるように男湯に入り、なんとか混浴をま逃れた。


今日はいろいろあったけど、芽衣さんとも話せて良かったな。

温泉で一日の疲れを癒して、温泉を出た後はカップ麺を食べて、寝る準備をしていた時、結菜さんと芽衣さんが二人で温泉から帰ってきた。


「気持ちよかったねー!」

「ですね、お家にも温泉が欲しいです!」


結菜さんが‥‥‥笑顔で芽衣さんと話してる。


「ふ、二人とも! 友達になったんですか?」


そう聞くと、芽衣さんはドヤ顔で答えた。


「そう! 私達は今日からマブダチになったの!」


結菜さんはいきなり無表情になり、ドヤ顔の芽衣さんに冷たい言葉を浴びせた。


「仲良くなるって言っただけで、友達になったつもりはありません」

「仲良くって、友達になるってことじゃないの!? もういい! 私、輝久と寝る!」

「ダメですよ、私に勝ちを譲ったじゃないですか」


あっ、なんかバトルが始まった‥‥‥知らないふりして寝よう。



***



輝久は、疲れからか本当に寝てしまった。

それを見た結菜は、芽衣を浴衣の帯で拘束して、口にタオルを詰め、押入れに閉じ込めてしまった。

そして結菜は、嬉しそうに輝久と同じ布団に潜り込んだ。


「輝久くんは私だけの♡ あぁ♡ 浴衣姿の輝久君も素敵♡ でも、浴衣の中は‥‥‥もっと♡」



***

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る