キッサマス!

松川 真

1-1グラッタとマヌルトの出会い


 毎日新しいおもちゃを持ってきては、みんなを楽しませるグラッタ。今日もたくさんの友達と広場で遊んでいました。日が暮れだしたので、友達は家に帰っていきます。


 グラッタも家に帰ろうと広場を出ようとしたとき、地面に書かれた絵と文字を見つけました。


 グラッタは思わず「ウハハ!」と声に出して笑ってしまいました。

 


 その日からグラッタは地面に書いたお話を読むようになります。

「最近のグラッタ、下見て笑ってるよ。地面を見たって面白いものなんて何もないじゃないか」




 ある日、広場で遊んでいると、友達のピルシャがカバンの中から本を取り出して話し出しました。


「みんな見てよ!描いた絵を本にしたんだ!」


「みせてみせて!」


 数ページほどの本の中で太陽が、木が、空が、友達が笑っています。友達はそれを面白がり、夢中で絵本に話を作ったり、膨らませたりしました。

「ピルシャは絵描きだ!画家だ!アーティストだ!」




 その日の帰りにグラッタは、いつものように誰かが地面に書いたお話を読みます。

 そこには本に絵と言葉を書いて、広場の子供が読んでいる話が書いていました。

 話の最後の一言をグラッタはしばらく見つめていました。

「僕にはまぶしすぎる」



 次の日、マヌルトは、いつもお話を書いている場所に向かいます。

 そこには大きなバスケットの中に、何冊も本が作れそうな数のきれいな画用紙と、使えきれないくらい、たくさんの鉛筆に絵の具が入っていました。

 マヌルトは目を丸くしました。びっくりして、しばらく立ったまま動けませんでした。



 グラッタは友達との遊んでいる間、マヌルトをの方を見ますが、姿がありません。グラッタの贈り物は地面に置かれたままです。



 他の友達が帰った後、グラッタは贈り物を見に来ます。



 グラッタは、贈り物を受け取ってもらえなかったことに戸惑いました。


「どうして...」




「これは君のものだったのか」


 後ろの林の中からマヌルトが現れました。



「違うよ。君に送ったものだ。書いてるじゃないか?」 



「『きみへ』って書いてるけど、これじゃあ誰に送ったものか、わからないじゃないか。」



「本当だ。誰だ君は?」



「名前も知らないのによく贈り物ができるなぁ」



「でも、君がいつも書いてるこの場所に置いたら、君に送ったものだってわかるじゃないか?」



「...僕のお話を読んでたの?」



「まぁ...ね。勝手に読んでごめん。」


「...それはいいんだ。誰に送ったものか、誰の贈り物なのかを知りたくて、隠れて見てたんだ」



「そうかい。じゃあこれでわかったろう。これは僕が君に送ったものだ」



「僕たち今日初めてしゃべったんだよ?そんな僕に、どうして贈り物をくれるの?僕が自分で手に入れられないから?」



「あったら今より出来ることが増えるじゃないか?どこでもお話が書けるし、雨の日だってなんのその。それに、君のお話をもっと大勢に見てもらえるじゃないか」



「ほどこしなんかいらないよ」



「ハハハ!ほどこしだって?僕は何様だよ。ほどこしてたまるか。そうじゃない。僕のためにやってんだ。僕は君の書く話が好きだ。もっと読みたいんだ」



「君のためだって?そんなこと言われたって、僕には関係ないよ」



「でも、画用紙や絵の具、欲しいことに変わりないだろう?」



「それはそうだけど...」



「...じゃあこうしよう。このかごの中にある道具を使って、僕のためにお話を書いてくれ。そしたらそのお話と、かごを交換だ。どうだい?」



「それなら...う~ん」



「うん!決まりだ。僕はグラッタ。よろしく」

 グラッタは押し切るように話し、マヌルトと握手しました。


 グイグイと話を進められ、不満そうな顔をしているマヌルトですが、どこかまんざらでもなさそうです。



「......知ってるよ。君は僕たちの中で人気者だからね。


 僕はマヌルト。よろしく」




 マヌルトの帰り道。道具でいっぱいのカゴを見つめてニコッと笑いました。


「グラッタが僕の話を読んでた!僕の書いた話が好きだって。フフッ!あのグラッタが!母さんに知らせなきゃ!」



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