第34話 魔国ウルド領

「ここが私達が住む領土ウルド城なのだ」


 そう言ってリリムに案内された場所は想像を絶する巨大な山脈。

 その山脈をそのまま城に改造したような場所であり、山のいたるところに窓のようなものが見え、山の内部をそのまま城にしているようだ。

 ふもとに近づくと岩山の間に巨大な門があり、どうやらそこが入口のようだ。

 オレ達が門に近づき、リリムがなにやら呪文を唱えると扉が開き、山城の中が開けられる。

 するとそこには想像を絶する魔物達がいた。


「うお! すごい魔物の数だ!」


「さすがは魔国じゃな」


「でも、ここまるで市場みたいっすね」


 裕次郎の言うとおり、扉を開けてすぐ広がった光景は街の大通りのような場所。

 そこには様々な魔物が行き交いし、建物も多く存在していた。


「当然なのだ。我々にとって城とは領土なのだ。城の中には様々な生活圏があり、魔物達のランクに従ってそこで暮らしているのだ。ちなみにここは一番下の下層フロア。ここでは下級魔物達が各々好きに暮らしているのだ。最近では人間達の生活を真似したりして、自分達で商売なども始めているのだ。その上が中層フロア、そこも似たような感じなのだが、ここよりも建物も構造も綺麗なのだ。そして、最後が上層フロア。そこがこの城を治める私が住む場所であり、側近達も暮らしているのだ」


 なるほど。魔国では城=国ということなのか。

 で、それぞれのフロアで魔物のランクによって住み分けが行われていると。

 思ったよりもちゃんと国としての形を取っているんだなと感心する。

 そう思いながら大通りを歩いていると様々な魔物達がオレ達――というよりもリリムの姿を見て騒ぎ出す。


「おい、見ろ! リリム様がお帰りになったぞ!」


「リリム様! ご帰還ご苦労様です!」


「敵との交戦はいかがでしたか!? 次は我々もぜひお供を!」


 そう言って次々と魔物達がリリムの周囲に集まる。

 おお、あいつって意外と人気者なんだな。まあ、魔人だし、この場所を取り仕切ってるみたいだから当然か。

 そんなことを思っていると魔物の何人かがオレ達に注目する。


「リリム様。そいつらは?」


「!? 人間! リリム様、どうして人間をこの場所に! いや、もしかして捕虜ですか?」


「捕虜にしては奇妙だな。リリム様、もしよろしければそやつらの処分、我々の方で致しますが」


 そう言って魔物達がオレ達の周囲に集まりだす。

 見ると何人かの魔物は明らかに殺気立った様子でオレ達に敵意を飛ばす。

 無論それを感じ取ってイストやブラック達がすぐに臨戦態勢を取るが、それを振り払うようにリリムが宣言する。


「余計なことをするななのだ。それにこの者の姿を見れば、お前達も分かるはずなのだ。たった今よりこのウルド城の支配者は私からこの者へと移ると」


 リリムはそう宣言し、オレを前に出す。

 それを見て周囲の魔物達はますます怪訝な声を出す。


「何をおっしゃってるのですかリリム様。このような人間が我々を支配するだと!? 冗談はおよしください!」


「そうだ! 人間など我らの餌にしてしまえばいい!」


「リリム様! そのような弱腰ですから他の魔人達にも……」


 そう言って何かを続けようとする魔物達だが、彼らがオレの姿を確認すると次第に騒ぎ声を抑えていく。

 なんだ、どうしたんだ?


「そ、そんな……まさか……あなた様は……」


「ま、魔王様……魔王様なのですか……!?」


「え?」


 まだ何も言っていないのに次々と魔物達がオレを見るとその体を震えさせ、次第に畏怖するようにその場で土下座を始める。


「も、申し訳ありませんでした! 魔王様! まさか、あなた様が魔王の称号を持っているとは!」


「リリム様の先程の言葉も理解いたしました。あなた様が来てくださるのでしたら、我々にも勝機が生まれます! ぜひともあなた様の力で我らに勝利を!」


「皆の者! 我らの領土に魔王の称号を持つお方が現れてくださったぞー!!」


「おおー! これで我らウルドの魔物がこの魔国を統一できるぞー!!」


 おおおおおおおおお! と途端にオレの周囲でわきたつ魔物達。

 な、なんなんだ一体? 困惑するオレ達にリリムが申し訳なさそうな顔を向ける。


「にゃははは、すまないのだ。口で説明するよりもお父様を直接見せた方がこいつらも納得すると思ったのだ」


「ちょ、これって一体どう言うことなの?」


「ん? どうってお父様は『魔王』の称号を持っているのだろう? 多くの魔物は『魔王』の称号を持つ者を見れば、それだけで相手を『魔王』として認め付き従うのだ。それが称号が持つ力なのだ」


 マジかよ。だからあのリザードマンとかもオレを見てすぐに魔王だと分かったのか。


「ならば、このユウキを魔国中の魔物に見せれば、それでこやつを魔王として認めて魔国統一出来るのではないのか?」


「ひゃははは。そう簡単でもないのだ。認めると言ってもそれはレベルが離れた下級の魔物達に限るのだ。ある程度のレベルを持つ魔物になれば自分が仕える王は自分で選ぶし、我々魔人も魔王と同じような称号なので別の魔人配下の魔物達は自分達の主を優先するのだ」


 なるほど。魔人も魔王と同じ称号なのか。まあ、それはそうか。


「なんにしても、これでお父様はここの魔物達には認められたので大丈夫なのだ。まあ、詳しい説明は上層エリアについてからするので、今はとりあえず私についてくるのだ」


 そう言ってオレ達はリリムに案内されるまま、城の上層エリアへと向かう。

 その最中もオレの姿を見た魔物達がその場で敬礼をしたり、賞賛の声をあげたりしたのは言うまでもなかった。

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