第29話 旅の途中にて~裕次郎のスキル~

「そういや裕次郎のスキルってなんだ?」


「へっ、オレっすか?」


 あれからしばらく。

 ザラカス砦を越え、道なき道を旅しながら、ふと見つけた廃屋で休憩を取っていた時、オレは裕次郎に質問する。


「そうそう、裕次郎もオレと同じ転移者だからスキルあるんだろう?」


「あー、まあ、あると言えばあるっすけど」


 なぜだか裕次郎は気まずそうに視線を泳がせている。


「? なんだ? もしかして大したことないスキルなのか?」


「いやぁ、その……一応スキルランクはAなんっすけど……」


「Aじゃと!? 十分すごいスキルではないか!? どのようなスキルなんじゃ!? 早く答えよ!!」


 と、オレの隣にいたイストが食い気味に裕次郎に問う。

 うーん、相変わらずイストはこういうのには食いつくなー。


「そのー『通販』ってスキルっす」


「通販?」


「なんじゃそれは?」


 オレもイストも互いに頭に「?」マークを出す。

 なお少し離れた場所ではイストの魔術で容態が少し安定したファナが寝息を立てて休んでおり、それをブラックが見守っている。


「まあ、見てみるのが早いと思うっす」


 そう言うと裕次郎は目の前の空間にタブレットでも操作するように指を動かす。

 するとオレとイストにも見えるように目の前の空間になにやら奇妙な液晶画面が現れる。


「うお!? なんじゃ、これはステータス画面か!?」


「いや、違うこの画像って……」


 驚くイストであったがオレはその画面に見覚えがあった。

 なぜならそれは地球にいた頃の某大手通販サイト『雨ゾーン』のそれであった。


「まあ、見ての通り『通販』っす。ここにある商品を自由に購入できるってのがオレのスキルっす」


 なるほど。すげえわかりやすい。

 見るとオレやイストでも操作できるようであり、画面を見ると食材から武器、防具。魔法道具はおろか馬や家。果ては地球にしかないはずの電化製品まで様々な商品が売られている。

 これマジかよ!? すげえ!! 異世界のアイテムだけじゃなく、地球の道具まで購入できるのか!?

 めちゃくちゃ便利っていうか、すげえチートじゃねえかよ! むしろオレのスキルよりも便利じゃね?

 おい! 裕次郎! 今すぐ交換しろ! 思わずそう叫びそうになる。


「いやー、ただこれデメリットもあって……そのー高いんす……商品……」


「え?」


 見ると全ての商品に値段があるが、それらほとんどが金貨から始まってる。

 家一つ金貨一万枚。

 電子レンジも金貨一枚から。その他にも使えそうな武器防具、魔法のアイテムなども金貨で三桁、四桁ばかり。

 あー、これは確かに……この世界に来たばかりの転移者が持ってても使いこなせないっていうか、まず買えないな。

 スキル自体はものすっっっごく便利だが、使い手の財政が伴ってないとこりゃ真価発揮できないわ。

 つーか今までどうしてたんだ? と問うと、


「一応王様から金貨はもらって、それで強い武器とか防具とか買ったんすけど……その、装備できなくて……。仮に装備できてもオレのレベルじゃここにある特別な武器とか使いこなせないみたいで……他の連中は即座に使えるチートスキルとかで強くなったんっすけど、オレはそれに置いていかれて……。ぶっちゃけ、このスキルも今ではコンビニの食事を買うための便利なスキルみたいな感じっす……」


 あー、なるほど。それはなんというか、ご愁傷様……。

 確かにいきなりどんな武器や防具が買いたい放題になっても、それを買うための資金が必要だし、何より買った本人が使いこなせなければ文字通り宝の持ち腐れ。

 とはいえ、このスキルはかなり便利な印象だ。というか、


「なあ、裕次郎。これから先、お前のこのスキルオレが使ってもいいか?」


「へ? それはまあ、別にいいっすけど。でもお金は?」


「ここに腐るほどあるけど?」


 どっさり。

 オレが荷物から金貨の山を取り出すと裕次郎は口をあんぐり開いて驚く。

 そうなのだ。オレはヴァナディッシュ家を救い、更に先日王様の依頼を果たしたことで大量の金貨をゲットしている。

 その数およそ百万金貨以上。

 あまりの重さに普段はイストからもらった収納袋に入れてある。

 ぶっちゃけ、ここにあるアイテムならほとんど買える気がする。

 というか、裕次郎のこのスキルはオレが持つ『アイテム使用』と、かなり相性がいい気がする。

 なぜなら、この『通販』でアイテムを買って、それをオレが『使え』ば、そのアイテムをスキルとして取得できる。

 しかも裕次郎のこのスキルなら、世界中のどんなレアアイテムも金さえ出せば購入できる。

 『アイテム使用』の唯一の欠点であるレアなスキルを手に入れるため、レアなアイテムを探すという手間を省いてくれる。


 いや、これってマジで鬼に金棒じゃね?

 オレとこいつのスキル、冗談抜きで赤い糸と結ばれてるくらい相性いい。

 まあ、こいつとは結ばれたくないが。


「おい! ユウキ! 見よ! 聖剣エーヴァンテインまで売っておるぞ、このサイト!」


「マジ!? ……マジだ!! でもたけえ!! 金貨一億!! さすが伝説の聖剣!!」


 見るとこの世に一本しかないはずのあの伝説の聖剣エーヴァンテインまで売ってる。

 マジかよ、この通販! つーか、この世界に過去存在した伝説級のアイテムも買えるのか! だとすればますますオレのスキルと相性抜群。

 よし、それなら早速戦力補強のために何か買うか。

 そう思いページを色々めくっていたところ、ある商品が目に止まる。


「ん、これは……」


 それは『賢者の石』と書かれた魔法道具。

 説明には伝説のアイテムと書かれ、錬金術の等価交換を無視して自在に錬成が可能と、なにやらとんでもないことが書かれている。

 その説明だけでもかなり目が惹かれるのだが、それ以上にオレが気になったのはその値段である。

 本来なら一千万金貨と書かれているところが、なぜだか二重線が引かれ『今だけ24時間限定! 90%オフ!』の文字と共に百万金貨と出ている。


「なあ、裕次郎。これってなに?」


「ああ、たまにあるんっすよ。オレのスキルで一部の商品がそうやって値引きセールされてるの。ただ時間が24時間しかないんでそれ逃すと元の値段に戻るっす。ちなみにこの間は聖剣エーヴァンテインがセールされてたっす」


 マジか。つーか、聖剣がセールってどんなスキルだよ。お前のスキル。

 まあ、とにかくそれならばこの『賢者の石』のセールは今だけか。

 百万金貨。今ならオレの手持ちでも購入できる。

 本来なら一千万。ここを逃すと買えない。


 ううーん。オレは地球でよくやっていたようにセールを前にした通販サイトで唸っている。

 どうする買うか? だが、これを買うよりもそれより値段の小さい物を複数買うのがいいのでは?

 いや! そんな細かい買い物より、でっかいものを一つ買った方が見返りも大きいはず!

 なによりもこれは本来なら一千万の価値があるもの! それが百万のセールに出くわしたんだ! これは運命! 神がオレに買えと言ってるに違いない!

 『あと十分でセールが終了します』という文字を見た瞬間、オレは金貨を取り出し即座に決断した。


「うおおおおおおおおお!! オレはこれを買う!! この賢者の石を買うぞおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 雄叫びを上げると同時に購入ボタンを押す。

 すると手持ちの金貨百万が消え、代わりにオレの手の中に光り輝く石が。

 お、おおおおお! これが賢者の石! これでオレもフルメタルな錬金術師になれるぞーーー!!


「相変わらず大胆なやつじゃな。とはいえ、その選択は悪くはないぞ。賢者の石と言えば無尽蔵の魔力を誇る伝説のマジックアイテム。今では失われた太古の秘宝と呼ばれている。かつえそれを手にした魔術師はあらゆる物質を作り、生命すら作ったとされる。その名はホーエンハイム。かのものは石が持つ強大な力でこの世界と異なる世界の門を開いたともされておる。その後、ホーエンハイムは賢者の石と共に異世界に渡り、以来それは伝説となり――」


 なにやらイストの講義というかうんちくが始まったが、オレはそれを適度に流しつつ、早速賢者の石に『アイテム使用』を行う。


『スキル:アイテム使用により、スキル:万能錬金術を取得しました』


 ほお。錬金術ではなく、万能とな?

 何か分からぬが良いぞ。どれどれ、スキルの説明は?


 スキル:万能錬金術 ランク:A+

 効果:等価交換を無視し、自在な錬金術を可能とする。


 きたああああああああああああああああああ!!

 説明めっちゃ簡素だけど来たこれ!! しかもただのランクAじゃなくランクA+! これは初だ!!

 しかも錬金術! 漫画やアニメ、ラノベなどで色々見てきたこともあり、それを自分が使えるとなるとテンションが上がる。

 いやまあ、すでにオレには武具作成という錬金術紛いなことが出来て、聖剣とかも作れるわけなんだが。

 しかし、錬金術となればそれとはまた少し別。

 これはすでにある物質を別のものへと錬成可能。

 石を黄金に、汚水を真水に、更には聖剣を別の武器や防具にも錬成可能なはず!

 いや、万能錬金術というのだ。それだけではない、もっと別の、もっとすごいものも錬成できるかもしれない。

 たとえば――と様々な妄想がオレの中で掻き立てられる。


 うーん! いいぞ! これで少なくともオレ自身の戦力もかなり強化された気がする!

 すぐにでも使ってみたい衝動に駆られるがオレだが、まずはこれをくれるきっかけとなった裕次郎の手を熱く握る。


「ありがとう裕次郎! お前がいてくれてよかったよ! これからもオレの傍にいてくれ! お前(のスキル)はオレと赤い糸で結ばれている!!」


 オレがそう叫ぶとなにやら裕次郎が顔を赤くし、慌てふためくがすぐさま「り、了解っす! ユウキ様に救われた命! オレはユウキ様に全てを捧げるっすー!!」と熱く叫ぶ。

 おい、なんだ、そのポーズ。やめろ気色悪い。

 というか、さっきのオレのセリフも何か重要な部分が抜けていたような……?


 見るとブラックがオレの方を見つめながら「あ、主様、私という存在がいて、なぜそんなチャラ男に……」とか泣いているし。

 イストに至ってはなにやら思慮深く考え込むように瞳を閉じながら「ふむ。これが噂のびぃえる、か……あり、じゃな」とかなんか意味深なこと言ってるし。

 違うぞ。変な勘違いするなよ! というか、イスト! お前はどこでそんな知識を蓄えたんだー!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます