第14話 ノーライフキング

「はい、確かに魔女イスト様からの魔法薬に間違いありません。それではこちらが料金になります。イスト様によろしくお伝えください」


「はい!」


 あれからギルドに向かったオレ達は、そのままカウンターへと向かい、そこにいる受付嬢にファナが持っていた箱を渡した。

 すると受付嬢はそのままオレ達に報酬を渡してくれて、これで無事ファナのお使いは終了となった。

 いやはや、途中よくわからないゴロツキに囲まれたがうまくいって何よりだ。

 お使いを無事に終え、満面笑みのファナを見ながらオレは一息つく。


「ところであの……あなた様は先日、メタルスライム退治を引き受けた方ですよね?」


「え、オレ?」


 と、そこで受付嬢がオレに声をかけてきた。

 よくそのことを覚えてるなーと思っていると「だって、あんな依頼を受ける人って普通いませんから」と返した。

 ああ、なるほど。それで覚えられたのね


「それで結局あのあとどうなったのですか? イストさんからの使いということは彼女は無事みたいですが、一緒に古城から避難を?」


「いや、普通に倒したけど」


「はい?」


「だからメタルスライム。普通に倒したけど」


「…………」


 オレがそう告げるとそれまで騒がしかったギルドが一気に静まり返った。そして、


『ええええええええええええええええーーーー!!!?』


「ちょ、兄ちゃん! アンタ、本気で言ってるのかい!?」


「メタルスライムを倒したとか嘘こくなよ!!」


「上級冒険者でも徒党を組まないと討伐は無理なんだぞ! アンタみたいな新人が倒せるわけないだろう!?」


「い、いくらなんでもそれはホラですよね?」


 と、口々に討伐を否定してくる。

 いや、あの、マジで倒したんだけど。


「待てよ。本当にメタルスライムを倒したって言うんならアンタのレベルを見せてみな。それでハッキリするぜ」


 見ると冒険者のひとりがそう言ってオレを指す。

 はあ、まあ、レベルを見せるくらい別にいいですけど。どうやって見せるの?


「そりゃ、ステータス観察っていうスキルかギルドにある水晶で見れるぜ。受付の嬢ちゃん。こいつが本当のこと言ってるか確かめてくれ。鑑定料金はオレが出す」


 そう言って冒険者がコインを一枚受付嬢に渡すと、受付嬢はすぐさま水晶を取り出し、オレを覗き見る。


「どれどれ……」


 そうして水晶が歪むことしばし、そこに現れた文字は――173であった。


『…………』


 再び訪れる沈黙。そして、


『えええええええええええええええええええええ!!!』


 大絶叫。


「う、嘘だろう!? なにこのレベルー!?」


「あ、アンタどうやってこのレベルを……!?」


「い、いや! 一人でメタルスライム数匹を倒したならこのレベルになるのも可能だが、しかしそんなの普通では無理だぞ!?」


「い、一体どんなチートを使ったんだアンタ!?」


 いやまあ、チートと言えばチートなんですけどね。

 そう思いつつもオレは曖昧な返事をしながら、そのままギルドを出ようとしたが、


「ま、待ってくれ! アンタに話がある!」


 と、先ほど受付嬢にオレのレベルを確認するよう頼んだ冒険者がオレの腕を掴む。


「ちょ、いきなりなんですか。オレ達そろそろ帰らないといけないんで……」


「頼む! それほどのレベルがあるアンタにしか頼めない! この国にいる貴族、ヴァナディッシュ家を救ってくれないか!?」


「へっ?」


 突然のその依頼にオレは目を丸くするが、男は真剣な様子で告げる。


「メタルスライムを倒し、それほどのレベルを持つアンタにしか頼めないんだ! 頼む! 報奨金なら旦那様が払ってくれる! 悪い話じゃないはずだ! 頼むよ!」


 必死に懇願する男にオレは困った顔をする。

 うーん、どうするか。

 男の切羽詰まった態度を見ると何やらかなり困った様子だ。

 オレとしては報酬が出るなら依頼を受けてもいいのだが、ファナを連れたままというのが……。

 そう思って一緒にいるファナを見るのだが、ファナはオレの顔を見るや否やその顔に笑顔を浮かべる。


「パパ、その人が困ってるなら手伝っていいと思うよ。私はお買い物ちゃんと出来たから、今度はパパのお仕事にもお付き合いする」


 そう言って天使のような笑みを浮かべるファナ。

 ああ、そう言われるとオレとしてもファナにいいところを見せたくなる。

 ブラックの方を確認するが彼も「主様のお好きなように」とオレの意思に従うようだ。

 うむ。この世界にいる以上、金銭はいくらあっても欲しい。

 なによりもイストにもらったお金で過ごすのも悪いし、オレもここらで自分の仕事を見つけないとな。


「分かった。それじゃあ、その屋敷に案内してくれないか?」


「う、受けてくれるのか!? 助かる! こっちだ! 案内するよ!」


 オレが承諾すると男は慌てた様子でオレ達を案内する。

 やれやれ、一体どんな依頼なのやら。興味半分、不安半分の気持ちでオレは男の道案内に従うのだった。


◇  ◇  ◇


「旦那様! ただいま帰りました! お喜びください! 例の問題を解決できるかもしれない冒険者を見つけてきました!」


「なに!? 本当か!?」


 男の案内に従い、街から離れた場所にある大きな屋敷に入ると、そこには貴族服に身を包んだ壮年の男性が現れた。

 年齢はおよそ四十代。口髭を生やした品のある外見であり、着ている衣装の煌びやかさから、さぞや名のある貴族なのだろうとオレでも分かるほど。

 その男性――おそらくはこの屋敷の主がオレの前に立つ。


「彼がその助っ人なのかね?」


「はい。こう見えて彼は単独でメタルスライムを倒し、更にレベルは173もあるという怪物です。おそらくこの王国いや世界中を探しても彼ほどの猛者はいないでしょう」


「な、なんと!? レベル173とな!?」


 男の発言に主は驚いた反応を見せ、すぐさま慌てた様子で頭を下げる。


「いきなりこの館へ呼び寄せたこと、大変失礼いたしました。さぞや名のある冒険者、いや英雄殿とお見受け致します。そのあなた様を見込んで頼みがあります。どうか、この館……いえ、我ら英雄貴族ヴァナディッシュを救ってくださいませんか」


「ちょ、そんな大げさな。救ってくださいってオレに出来ることでしたらなんでも」


「とりあえず館の主よ。この館にどのような危機が訪れているのか話すがいい。そうでなければ主様も受けられぬ」


「確かに、そうしでしたね。失礼いたしました」


 ブラックの進言に頭を下げる館の主。

 そうして僅かな一拍の後、男はこの館に迫る危機について語る。


「今この館を襲っている驚異。あなた様に倒して欲しい存在とは――不死の王ノーライフキングなのです」

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