第7話 アイテムを使用しているだけで気づくと最強になってました

「スキル:金貨投げ」


 ピンっとオレの手の中から生まれた一枚のコインが光の速さとなり、高速の弾丸と化し、目の前にいたメタルスライムを打ち抜く。

 その一撃でメタルスライムの体は四散し、液状の体全てが蒸発していく。


「ふぅ、これで最後ですかね?」


「う、うむ。しかし、何度見てもとんでもないスキルじゃな……」


 古城に巣食った最後の一体を倒した後、オレは背後にいるイストに確認を取る。


「先ほどので四体。うむ、見事じゃ。それでは依頼はこれで完了じゃ。すぐに金貨を持ってこよう」


「あれ、依頼料ってここでもらうんですか? ギルドじゃなくって?」


「お主何も知らないんじゃな。張り紙での依頼はそれを出した依頼主が払う。このため、依頼主と請け負った側でたまに行き違いがあって問題が発生するのでプロの冒険者はギルドが直接依頼してくるものしか請け負わんのじゃ。ちなみにそういう依頼は受付嬢から直接受けねばならん。しかし、それを受けるにはプロ冒険者の資格が必要でギルドによる試験が必要。最低でもレベル10はないと、その試験は突破できないぞ」


 なるほどなー。ギルドにも色々あるんだなー。

 レベル10か。今のオレだとちょっと厳しいかな。

 まあ、スキル:金貨投げや鉱物化を使えば楽にクリアできそうなイメージもあるけれど。

 そんなことを思いながら先頭を歩くイストについていくオレであったが、その瞬間、イストが何かを思い出したようにオレの方を振り返る。


「レベル……そうじゃ! レベルじゃ! お、お主! 今、レベルはどうなっておる!?」


「へっ?」


 慌てて振り返ったイストはオレを見るや否やなにやら青ざめた表情を浮かべる。


「なっ……そ、そんなバカな……い、いや、だが、しかし……一人でメタルスライム四匹を倒せば当然と言えば当然じゃが……し、しかしこんなの、あ、ありえん……ありえんぞ……前代未聞じゃ……! そ、そもそもメタルスライムを一人で倒すこと自体が不可能であり、このようなことが……!?」


「ちょ、どうしたんだよ、イスト。急に顔色を変えて」


「ええい! いいから己のレベルを確認せんかーーー!!」


 そう言ってオレを急かすイスト。

 一体なんなんだよ。と思いながら、ステータス画面を表示するオレ。すると、そこには――


『レベル:173』


 …………。


「はい?」


 思わず素で呟く。

 ええと、これ……桁がなんかおかしくないですかね?

 最初、ここに来たときレベル3だったのが173って、なんか二桁増えてますが。


 ごしごしと何度も目をこするが、以前変わりなくレベル:173という文字がそこには刻まれている。

 え、ええー。


「ま、まあ確かにメタルスライムは全ての魔物の中でも最も強大な経験値を有していると聞いている……しかし、あれは複数の上級冒険者が徒党を組んでようやく倒せるもの……つまり、その分、経験値は討伐に参加した人数に振り分けられ、しかも上級者のため、上がるレベルも数レベル程度……。とはいえ、その経験値はやはり莫大。それを一人で……しかも四匹も倒せば、それだけレベルアップして当然か……」


 見るとなにやらイストは頭を抱えながら呟いている。


「え、ええと、このレベル173ってやっぱりすごいの?」


「馬鹿者!! 十分すぎるほどすごいわ!! いいか、伝説上の英雄や勇者と呼ばれた者のレベルが100! 過去に存在した最強のレベル持ちが英雄王イザーク! そのレベルは158とされておる! レベル173なんて儂ですら聞いたことがないぞ!!」


 え、ええー。マジか。

 ということはオレ、事実上最強レベルになってしまったってこと?

 ま、まあ、確かにメタルスライムといえば経験値の塊だが、まさかそこまであいつらが経験値を持っていたとは。

 でも、あの図体だからな。メタルキング並に大量の経験値持ってても不思議ではないか。

 と、どこか他人事みたいに考えるオレにイストは呆れたような顔を向ける。


「やれやれ……一瞬で儂はおろか、この世界最強とも言えるレベルになったのにお主は随分とゆるいなぁ」


「はあ、まあ、すみません。そういう性分なもので」


「よいよい、下手に浮かれるよりは良いかもしれぬ。まあ、とりあえずは依頼料を払うので、このまま儂について来い」


 そう言いながらもイストはどこか頭を抱えながら、城の通路を歩き、やがて彼女の自室と思わしき場所へと案内される。


「ほれ、ここじゃ。どこか適当なところに座れ」


「はあ、そう言われましても……」


 案内されたその部屋は一言で言えばゴミ溜まり部屋。

 部屋のあちこちにいろんなゴミが大量に捨てられており、書物、食べ物、鉱物、宝石、武器、洋服はおろか、よく見ると彼女の下着らしきものまで散乱しており、正直目のやり場に困る。あと単純に座るスペースがない。

 一方のイストは奥にある引き出しから「ええと、どこにやったかのぉ」とこちらにお尻を向けたまま、なにやらゴソゴソを探し回っている。

 うーん。実年齢はオレよりはるかに上らしいが、やはり見た目が少女なために目のやり場に困る。


「おお、あったぞ。これじゃ」


 そう言ってイストは引き出しから手のひらサイズの袋を取り出し、それをオレの方へと投げる。


「ほれ、報酬の金貨じゃ。受け取れ」


「っと、どうも」


 受け取った袋の中身を確認するオレ。

 うん、確かに王様にもらったのと同じ金貨が入っている。数も依頼書通り。


「それじゃあ、これで依頼完了ですかね。お疲れ様です」


「待て」


 そのまま帰ろうとするオレであったが、そんなオレをイストが引き止める。


「お主、これからどうするつもりじゃ?」


「はあ、まあ、今回みたいに適当な依頼を受けながら生活しようかと」


「転移者はこの世に現れた魔人を倒すために呼び出されたと聞くが、お主は魔人退治をするつもりはないのか?」


「そうですね……。オレ、王様から戦力外として追い出されましたし。そもそもその魔人がどこにいるのかも知りませんし」


 というか、ぶっちゃけその魔人がなんなのかよく知らない。

 そんなよく知らないものをわざわざ倒しに行くのはなぁ。

 そう思っていると何やらイストは「ふむふむ」と頷いている。


「では、お主。拠点としている場所はないのか?」


「いえ、特には。まあ、この金貨で街の宿とか泊まるつもりですが」


「それならばいっそここに住んではどうじゃ? 部屋なら腐るほど余っておるぞ」


 へ? ここに?

 思わぬイストからの誘いに戸惑うオレ。


「安心せよ。ここには儂以外人はおらぬ。元々儂は人嫌いでな。ここ百年はずっと一人でこの古城で暮らしていた。しかし、お主には個人的興味が沸いた。なので、特別に部屋の一つを貸し与えてやってもよい。ちなみに家賃などを取る気はない。食事も毎日三食分用意してやろう。その代わりと言ってはなんじゃが、儂の研究に少しばかり付き合ってくれぬか? どうじゃ、そう悪い話ではないだろう」


 うむ、確かに。

 三食宿付きで費用ゼロというのはかなりお得だ。

 特に今のオレにとってはそれは喉から手が出るほどの高物件。というよりも衣食住の食と住がこれで補えるのなら願ったりだ。

 研究とやらが気になるが、まあそれは後で聞けばいい。

 というわけでオレは迷うことなくイストに二つ返事で頷く。


「おお、そうか。では、早速隣の部屋を使うがいい。ああ、ちなみに隣もここと同じように散らかっているが、お主の方で掃除をしてくれんか。これ、箒とゴミ箱じゃ」


 そう言ってイストは箒とゴミ箱をオレに渡す。

 うん、まあ、これくらいなら問題ない。

 タダで住まわせてもらうんだ。掃除くらいなんてないさ。

 と思っていたオレは甘かった。


 そのまま隣の部屋を覗くと、そこはイストのいた部屋の数倍ガラクタやゴミが散乱しており、結局その日は夜中まで片付けをする羽目になるのだった。

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