第6話 ロリ魔女と仲良くなりました(多分)

「なるほど……アイテム使用……そのようなスキルがあったとは……」


 オレからの説明を受けたイストはなにやら興味深そうにオレを眺めながら続ける。


「金貨投げについても聞いたことはある。かつて栄華を極めて黄金王国の初代国王“金色の王”ガルドが持っていたとされるユニークスキルじゃ。伝承では、その王の手から放たれた金貨はあらゆる敵の防御を貫通し、一撃で相手を仕留めたという……。じゃが、その初代国王以来、その金貨投げを有した者が現れた記録はないのじゃが、まさかお主がそのスキルを有するとは……しかも、それもアイテム使用とかいうスキルの副産物で……」


「はあ、なんだかすみません」


 金貨投げがそれほど大層なスキルだとは思いもよらなかった。

 それならそうとスキル説明に書いてて欲しいなーと、無茶振りを少し思う。

 だが一方でイストはますます興味深そうな目を向ける。


「お主のそのアイテム使用についてなのじゃが、儂でも聞いたことがない。おそらくこれまで誰も手にしたことのないユニークスキルじゃろう」


「はあ、そうなんですか。オレはてっきり最初は外れスキルかと」


「それは儂も同じじゃ。実際、最初にお主を見た際、すまぬがステータスと一緒にスキルも確認させてもらった。そこには『アイテムを使用するスキル』とだけ書かれていて思わず吹き出しそうになったのをこらえたわ。じゃが、これは誰しも騙されて当然じゃろう。一体どういうスキルなのじゃ……儂にもさっぱりわからぬ」


 そう言ってますますオレの体をジロジロと見るイスト。


「って、ちょっと待ってください。ステータスと一緒にスキルを確認させてもらったってどういうことです?」


「ん? ああ、そういえば言っていなかったな。それが儂のスキル『解析』じゃ」


「解析……鑑定みたいなものですか?」


「バッカ者! 鑑定などという平凡なスキルと一緒にするな! これはいわば鑑定の上位互換! 相手が持つスキル、能力はもちろん、それらを全て解析した後、どのようなものであるか瞬時に理解するというものじゃ! これを使えば敵のいかなる弱点も暴き出し、古代の遺物、魔法器具、更には異世界の代物なども全て解析可能! こういってはなんじゃが儂以外にこの『解析』スキルを持つ者などまずおらんじゃろう!」


 と自信満々に宣言。

 へえー、なるほど。確かにそれは便利そうだ。ん、でも待てよ。


「イストさん。その解析スキルでもオレのスキルのこと分からないんですか?」


「さん付けはよせ。イストでよい。うむ、そのとおりじゃ。今もお主のスキルを解析しておるがよく分からん。それどころか、お主が複数のスキルを所持していることすら儂には分からなかった。現に儂の解析に映っているのはお主の『アイテム使用』ただ一つじゃ」


 え、そうなの?

 でも、オレの視界の端には確かに複数のスキルが表示されているが……。

 うーんと悩むオレにイストが何か気づいたような表情をする。


「時にお主、先ほどの説明の際、自分は異世界から来た転移者じゃと言っておったが」


「あ、はい、そうです。オレはこの国の国王に召喚された異世界人の一人です」


「おお、そうか。あれは無事成功したのか。いやはや、儂の研究も国の役に立ったのじゃな。うむうむ、それなら何よりじゃ」


 はい? あなたの研究?

 今何か聞き捨てならないようなセリフを聞いたような。


「気にするな。それよりも異世界人というのなら、この世界の常識というかスキルについてまだ詳しく知らぬじゃろう?」


「はあ、まあ」


「ならば、儂が詳しく説明してやるがどうする?」


 そう言ってドヤ顔を向けるイストだが、これは明らかに解説したそうな表情だ。

 まあ、オレもこの世界のことについての情報は色々と知っておきたいので「お願いします」と素直に頼む。


「うむ。まずスキルについてじゃが、これは一人一つ神より授かる天性の能力じゃ。多くは成人……およそ十五前後でそのスキルに目覚めるが、まあこれは個人差がある。で、ほとんどの場合、スキルと言ってもそのスキルランクはFやEがいいところじゃ」


「そういえばランクってありましたけど、それって具体的にどんなランキングになるんですか?」


「ランクは大きくS~Fまで分けられる。当然、Sが最高でFは最低ランク。Fランクのスキルはまあ日常動作を便利にするくらいのスキルじゃ。たとえば明かりをつけたり、コップ一杯分の水を出したり。ぶっちゃけこの程度のことなら魔法でどうにかなる。民のほとんどがこのFスキルじゃ。ちなみに儂も最初お主のスキルはこのFランクだとばかり思っていた」


 ああ、まあ、そりゃそうでしょうね。


「Eからはスキルと呼べる程度には便利になるが、それでも熟練の戦士が鍛えた技術や魔法を自在に使える魔法使いならば、そうした自身の技や魔法に頼った方がよい。D、Cあたりならば十分強力なスキルと言っていい、これらを有したスキル持ちが村や街に現れれば、そやつはたちまち王宮入りを許される。つまり、それほどスキルというのは天賦の才になる。そして、伝説上の英雄や勇者が持っていたスキルがBやAなどになる。現在、このランクのスキルを持っている者は国王直属の騎士や騎士長、あるいは賢者、または戦場で伝説と呼ばれる傭兵などじゃろう。ちなみに儂もこのランク持ちじゃ」


 さらりと自分を自慢するイスト。


「それじゃあ、Sっていうのは?」


 オレが問いかけるとイストは首を横に振る。


「Sランクのスキルについてはぶっちゃけよくわかっておらん。存在するかもしれないという噂程度であり、実際にそれを持った人物は確認されておらん。過去にこの世界に召喚された一人の勇者が持つスキルがあまりに規格外すぎて、このSランクというランクが作られたそうじゃが、それも今となってはおとぎ話のようなもの。果たして本当にあるのかどうか……」


 そう言って首をかしげる。

 なるほど。つまり、通常はAランクがスキルにおける最高ランクか。

 それを聞くと確かに金貨投げってやべえな。

 ってなにげに鉱物化もBランクだったし。


「で、話を続ける。それらスキルとは別に儂らは『魔法』というものを修めることが可能じゃ。これは修練をすれば誰でも身につけられる。とはいえ、これにも才能があり、覚えのいいものと悪いものもいる。また中にはこの『魔法』を習得する際、それが有利になるスキル持ちもいる。そうした者ならば魔法の習得も早く、また同じ魔法であっても、威力が段違いになることも多い」


 なるほど。そういえば転移者の一人がそんな魔法を全部覚えられるみたいなスキル持っていたな。あれのことか。


「で、ここからが重要じゃ。魔法はスキルと違って様々な種類の魔法を覚えることが可能。炎系、水系、風系、あるいは精神に作用するもの、天候を操作するものなどなど。しかし、それらは全て『魔法』と呼ばれる一つのジャンルに集約される」


「はあ、それがどうかしたんですか?」


「察するに……ええと、お主の名前何といったか?」


「ユウキです」


「うむ、ユウキよ。お主の『アイテム使用』はこの『魔法』と似たような扱いではないのか?」


「? というと?」


「つまり、スキルが増えたとお主は言っておるが、それは正確ではない。それはあくまでも『アイテム使用』によって変化した『アイテム使用』スキルの一種ということではないか?」


 なるほど、そういうことか。

 つまり魔法と同じようにそのジャンルの中で使えるものが増えたということ。オレが会得したスキルは全て『アイテム使用』が変化したものにすぎないと。


「うむ。だからこの世界におけるスキルは一人一つという原則から外れているわけではない。まあ、かなり反則じみたやり方というかスキルじゃが、これならば儂の解析にもその複数のスキルが映らないのも当然じゃ。それらは全て『アイテム使用』というスキルにまとまっているのじゃから。とはいえ、儂がもう少し解析をすれば、それらを覗けるかもしれないが……」


 と言って、ずずいっと顔を近づけるイスト。いや、その近いです。顔。


「まあ、とにかく色々理解しました。でも、とりあえずはここに巣食ったメタルスライムを退治しましょう」


「おお、そうじゃったな」


 って依頼主さんが忘れてたんかい。

 思わずそう突っ込むオレであったが、そのままイストの案内に従い城の奥を歩く。


「そうじゃ。お主、さっきの金貨投げじゃが、一体いくらの金貨を使用したのじゃ?」


「ええと、10枚ですかね」


 オレがそう答えるとイストは手に持っていた杖でオレの頭を叩く。


「いた! なにするんですか!」


「馬鹿者! そんなに使えばこの城の壁を貫通して当たり前じゃ! いいか! メタルスライムのHPは多くても100! つまり一枚で十分なのじゃ!」


「え、そうなの?」


「当たり前じゃ! 物理・魔法無効の上に、それらを貫通してダメージを与えたとしてもせいぜい1,2点が関の山! そんな全身全霊の一撃を百回も繰り返さないと倒せないんじゃぞ!? 100でも多すぎじゃ!」


 言われてみればそうか。

 某国民的にRPGでもメタルスライムのHPは一桁。あれが三桁もあって会心の一撃も1点扱いなら倒せないっていうか、普通に戦うの諦めて逃げるわ。

 なるほど。この世界の住人がメタルスライムをやたらと怖がり、戦いたがらない理由が親身に伝わった。


 そう思いながらオレはイストの案内に従い、城に巣食ったメタルスライムの討伐を続けるのだった。

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