第5話 ロリ魔女と仲良くなりました(予定)

「ここが古城か」


 森を抜けて、今オレの目の前には目的の古城がある。

 その大きさは最初にオレが召喚されたあの国王の城ほどではないが、それの半分位はあり、かなり立派な石造りの城だ。

 ところどころ年月の風化で壁に亀裂や草が生い茂っているが、それでもかなり立派な城というのは分かる。


 ちなみにこの古城へ来る途中、森を抜けてきたが、その際出会った魔物のグループは一つ。

 いわゆるコボルトだった。

 顔がブルドックのようなちょっとブサかわな顔をしており、全身毛皮に覆われ、質素な鎧や服を身にまとい、手には手製の斧やボロボロの剣なんかを持ってオレを取り囲んできた。

 数はおよそ4、5体くらい。

 最初はかなり驚き、思わず金貨投げを使おうかと思ったが、それは最後の手段として、まずはスキル:鉱物化で対処した。

 いや、これがかなりの便利スキルで右腕がまるまる石のように固くなると、素手でコボルト達を殴り倒せた。

 それどころかあいつらが持っていた武器がオレの腕に当たるや否や折れたり、砕けたりと、とにかく一切オレにダメージが入らなかった。

 途中からは両腕を石に変化させることが可能となり、そうなったらもうオレのターン。

 両手で目の前のコボルト達を殴っていたら、それで戦意喪失して、連中はすぐさま逃げ出した。

 ちなみにその時の戦闘のおかげでオレのレベルが密かに3に上昇した。

 まあ、1も3も大して変わらないのだろうが。

 そう思いながらオレは目の前の古城をゆっくりと観察する。


 ここにメタルスライムが現れて、依頼が来たということは誰かが住んでるということなのだろうか?

 ぱっと見は誰かが住んでるようには思えないが……。

 そう思いながら入口と思わしき門を叩くが反応がない。


 うーん、ひょっとしてもうメタルスライムにこの城の中の人全員食われた?

 そんな最悪な結末が脳内にチラついた瞬間、


「お主、ギルドからの冒険者か?」


 ふと背後から声がかかる。

 振り向くとそこには十二、三歳くらいのブカブカのローブにとんがり帽子を被り、背丈よりも大きな杖を持ったいかにも魔女という服装のロリ少女が立っていた。


「え、こ、子供?」


 思わずオレがそう呟くと、その少女はカチンとした表情でオレに近づき額に杖を当てる。


「こら! 誰が子供じゃ! 儂はお前なんかよりもはるかに年上じゃぞ! もっと年長者に対して敬意を払え!」


「あいた! って年上!? 君が!?」


 オレがそう叫ぶと、再び目の前の少女が不満そうな表情をぶつける。


「君ではない。儂の名前はイスト。魔女イストじゃ。こう見えて数百年は生きる魔女じゃ。口に聞き方に気を付けよ、小僧」


「ま、魔女!? 数百年も生きてるってマジ!?」


 思わずそう叫ぶとイストと名乗った魔女が再びこめかみに怒りのマークを浮かべるが、すぐさま首を振り落ち着いた様子を見せる。


「……ふぅー、まあお主のような世間知らずの小僧ならば多少の無礼は多めに見るとしよう。それよりもまさか、お主のような新米の小童一人が儂の依頼を受けて、メタルスライム退治に来たわけではあるまいな?」


「はあ、まあ、そのつもりですけど」


 オレがそう答えるとイストは明らかに呆れた様子でため息をこぼす。


「……はあ、やはりギルドの連中は誰も協力してはくれんか……。まあ、それはそうじゃな。相手がメタルスライムではお手上げか……。挙句このようなどこの田舎から出てきたか知らぬ素人が一人来ただけ……はあ、儂の研究資料もこれまでか……。こうなってはこの古城を廃棄して新しい拠点を探すしかないか……。ああ、儂の百年近い研究の成果が……ううぅぅ……」


 となにやらすでに諦めムードの入り、涙を浮かべるロリ魔女。

 いやいや、待ってくださいよ。ここに一人依頼を受けた冒険者がいるんですから。

 そう言ってイストに「待った」をかけるが、当の彼女は胡散臭い目でオレを見る。


「……お主のような素人に何ができる。見ればたかだかレベル3のようじゃが、それでメタルスライムを倒せる気か? こういってはなんじゃが、お主のレベルではただのスライムでも瞬殺されるぞ。悪いことは言わん。連中の養分にならん内に帰るが良い」


 そう言って片手でオレに帰れとジェスチャーをする魔女っ子。

 うーむ、オレのレベルが3だと瞬時に見抜くとは。

 しかし、どうやらオレが持つスキルまではわからなかったようだ。

 ならばお見せしましょう。この異世界に来てオレが会得したチートスキルの正体を。


「とりあえず、依頼を受けた以上やるだけはやらせてもらいたいんです。そのメタルスライムがいる場所はどこですか」


 オレの質問にイストは呆れたような視線を向けるが、その後、根負けしたのかため息をこぼし「こっちじゃ……」と古城の門を開けて、案内してくれる。


「メタルスライムの数は合計四体。しかも、そのどれもが中型の大きさで四~五メートル。すでに知っておるかも知れないが物理・魔法いずれの攻撃も完全無効か。ただのスライムであれば儂の魔術で焼きこがせるのじゃが、相手が魔法無効化まで持つメタルスライムではお手上げじゃ。何度も言うがお主のような素人が勝てる相手ではないぞ。仮にお主が捕食されても儂は知らんぷりして帰るからな」


 はあ、まあ、それは仕方がないですね……。

 にしても四、五メートルもあるのは正直予想が、某国民的RPGの影響でメタルスライムというとメタルな外見をしたあの愛らしいスライムを想像したが、やっぱ実際の異世界だと全く違うのね。まあ、当然といえば当然か。

 と、そんなことを思っていると通路を歩いていたイストが立ち止まり、杖を構える。


「……いたぞ。あの通路の先じゃ」


 見ると丁度T字路に交差した通路の先で目の間をゆっくりと歩く巨大な鈍い銀色の外見をした巨大な液状の何かがゆっくりと這っている姿がある。

 うお、でけえ。天井すれすれの高さをかなりの幅でゆっくりと這っている姿はまさに圧巻。

 想像よりも迫力のある姿に思わず怖気づくが、ここで逃げるわけにはいかないとオレはぐっと足に力を入れる。

 幸いメタルスライムはこちらに気づいた様子はなく、奥の通路へとゆっくり移動している。


「メタルスライムはこちらから攻撃しない限りは反撃しない魔物。そのため、連中に出くわしても手を出さなければ比較的安全じゃ。とはいえ、このように珍しい金属がある拠点に現れれば、そこにある金属を全て平らげるまではいなくならなくてな……。儂のような人里離れて研究している魔術師にとってはあれが最も厄介な魔物じゃ……。あれを相手にするくらいなら、今世間を騒がしている魔人を倒した方がはるかにマシじゃ……」


 はあ、とため息をこぼすイスト。

 なるほど。王様が言っていた魔人よりも、このメタルスライムの方が強敵なのか? まあ、人にもよるのかもしれないが。

 そう思いながらオレは早速、スキル一覧にある『金貨投げ』を選択する。


「それで、これからどうするんじゃ。まさかお主のスキルであやつをどうにかできるとでも思――」


「スキル:金貨投げ」


 イストがなにやらからかうような口調を口にしていたが、オレはそれより早くスキルを発動させると。

 目の前のメタルスライム目掛け、金貨投げを使用する。

 ええと、スキルの金貨投げに『残り金貨枚数:100』ってあるし、使用する金貨の数は……一発で仕留められなかったら嫌だからな。念のため10枚使うか。

 あ、ちなみにこの『残り金貨枚数:100』ってのはオレが間違って『アイテム使用』で使った金貨の枚数がそのままスキルの弾丸数になってるみたい。もうこの金貨はスキルの弾丸に取り込まれたみたいで金貨に戻すことはできないみたいだから、今後は遠慮なく金貨投げの弾丸として使用しよう。

 そう思い、目の前のメタルスライム目掛け十枚の金貨がまるで弾丸のように飛ぶが、それがメタルスライムに当たるや否やその場所から眩い光を放ちメタルスライムの液状の外見を吹っ飛ばすと同時に瞬時に蒸発、消滅させ、それだけではなく、奥の壁を貫通し、更にはその先の先の壁まで打ち抜き、十枚の金貨は古城の壁を全て貫き、その先にある遥か彼方の空へと光の速さで消えていった。

 えっと、何が起こった?

 あまりの事態に呆気に取られるオレであったが、それは隣にいるイストも同じようであり、見ると見たこともないような呆然とした表情をし固まっていた。


「……お、お主……い、今……な、何をしたのじゃ……?」


「ええと、金貨投げ?」


 恐る恐るオレがそう答えるとイストは目の前にいたはずのメタルスライムの残骸……すら残っていないものを見つめながら呟く。


「め、メタルスライムが……あ、跡形もなく消滅した……こ、こんなの聞いたことがないぞー!? なんなんじゃお主はああああああああああああ!!?」


「い、いや、そんなのオレが知りたいっていうか……! ちょ、掴みかからないでくださいよ、イストさん! ま、まだメタルスライムは残っているんでしょう!?」


「メタルスライムなどどうでもいい! 今はお主のことが知りたい! ええい、いいから洗いざらい全て儂に話せーーー!!」


「え、ええーーーーー!?」


 この後、魔女イストにオレの事を滅茶苦茶話すのだった。

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