第4話 ギルドにて早速のメタルスライム退治

 さて、これからどうするか。

 ひとまずスキルに関しては十分な数が揃ったと言える。

 手持ちのお金はゼロだが、これだけのスキルがあるのなら一人で魔物退治をして、それで路銀を稼ぐということも可能だろう。

 なんだったら、武具作成で作った剣や盾を売って、当面をしのぐというのも可能だが、それはあくまで最終手段としよう。


 せっかく異世界に転移したんだから、自分の能力でやれることは可能な限り試したい。

 そう思ったオレはとりあえずギルドを探すことにした。

 異世界と言えばギルド。

 そして、ギルドといえば仕事にありついて報酬をゲット。

 短絡的な思考だが、それ以外にやることもないのでオレは街の人達の情報を元にギルドへと向かう。


 おお、結構立派な建物だ。三階建てくらいの大きな店であり中に入るといかにも冒険者という格好の人間があちらこちらにたむろっている。

 見ると壁には様々な依頼書らしき紙が貼ってあり、何人かはその張り紙を見て、気に入ったものを見繕うと、そのままカウンターにいる女性へと渡している。

 なるほど。実にギルドらしい景色だ。

 とりあえず、オレも例にならって壁に貼ってある張り紙を確認してみる。どれどれ……。

 ゴブリン退治に、近くの山での薬草採取、東の洞窟にある水晶の回収、ゼータ海域にいるクラゲフィッシュを合計10体捕まえて欲しい、などなど思ったよりもたくさんの依頼書が貼られている。

 そこには銅貨何枚だの、銀貨何枚だのの報酬もキッチリと書かれている。


 ううむ。さすがに金貨報酬の依頼書はないのか。というか張り紙だと、そういう高額の依頼はないのかな?

 なんだかんだであの王様がくれた金貨100枚ってマジで大金だったんだな。

 何の考えもなしに全部『アイテム使用』に使ったのはやはり勿体無かったか……いやまあ、今更だが。

 そんなことを思いながら張り紙を見ていると、一つ気になる依頼書が目に入った。


「ん、これは……」


『急募! メタルスライム討伐者願う! キルギアス古城にて数体のメタルスライムが現れ、建物内の金属を次々と捕食中! このメタルスライムを討伐してくれた者に金貨50枚の報酬金を渡す! ギルド難易度:A』


 ほお、メタルスライムとな。

 これは経験値の匂いがする。というか、金貨10枚ってかなり美味しくね?

 詳しい値段の価値は分からないが、ほかの張り紙の報酬金が銀貨や銅貨なのに比べ、これだけが金貨となっている。

 しかもメタルスライムという、よくわからないが経験値の香りしかしない魔物とか、これはもう受けるしかないでしょう。

 というか、なぜにほかの冒険者達はこんな美味しそうな依頼を受けないんだ?

 不思議に思ったオレだが、あまり深く考えることはせず、その張り紙を壁から剥がすと、先ほど冒険者がやっていたようにそれをカウンターにいる女性へと渡す。


「いらっしゃいませー。こちらの依頼をお受けになるのですか?」


「はい、まあ、そのつもりです」


「分かりました。それでは確認させていただきますね」


 そう言って笑顔を浮かべる受付嬢さんだったが、オレが持ってきた依頼書を見るや否や顔色を変える。


「! ちょ、あ、あの、ほ、本気でこの依頼を受けるおつもりなのですか?」


「? ああ、まあ、そのつもりだけど」


 戸惑う受付嬢にそう答えると、なぜだか彼女は困惑した様子を見せる。


「し、失礼ですが……あなた様のレベルはおいくつでしょうか?」


「レベル?」


 と言われてもいくつなんだろうか?

 オレはスキル使用の際、意識の集中を応用し自分のレベルを思い浮かべる。

 するとスキルの時と同様に視界の端になにやら数字が浮かび上がる。


「ええと、1ですね」


 まあ、そりゃそうだよな。転移してすぐだもんな。

 そのことを伝えると受付嬢は呆れた表情をして告げる。


「あ、あのですね。この依頼にありますメタルスライムという魔物は数ある魔物の中でも討伐困難な魔物として知られておりまして、そのランクも規格外のEXなのですよ」


 ランクEX!? スライムが!? というかメタルスライムが!? そんなに強いの!?

 思わぬ強さにうろたえるオレであったが、それに対し受付嬢が懇切丁寧に教えてくれる。


「そもそもスライム自体の強さがこの世界ではかなりのものなのです」


「え、そうなの?」


「当然です。あの液状の不固定の体はあらゆる物理攻撃を無効化し、一度その液状の体もしくは触手に掴まれればその場所から捕食、強力な溶解液によりたちまち防具を溶かし体全体を飲み込みます。唯一通じる攻撃が魔法になるのですが、こちらも生半可な魔術では傷を与えることが困難であり、種類にもよりますが多くのスライムがランクB以上の危険な魔物とされています」


 ほえー、スライムってそんな強いんだ。

 なんかゲームや漫画、小説での印象だとそんな強いイメージないどころか。むしろザコの代名詞とも思っていたよ。

 でも、考えてみればそうか。海外だとスライムはむしろ強敵のイメージらしいし、そのスライムのモデルとなった存在もかなり凶悪なものと聞く。


「中でもメタルスライムはそんなスライムにおける唯一の弱点を克服した完全無欠の魔物と言えます。つまり全身を特殊な金属で覆うことによりあらゆる魔法攻撃を受け付けなくなったのです。もちろん金属と言ってもスライムに変わりはありませんので、どういうわけか液状の体のままそれを維持しているのです。つまり、物理・魔法その両方の攻撃がメタルスライムには一切通じないのです。もし仮にこのメタルスライムを倒す手段があるとすればそれは特殊なスキルのみになりますが、多くのスキルが物理攻撃、あるいは魔法攻撃のいずれかの能力を有する中、それらに属さない特殊な攻撃スキルともなれば本当に数えるほど。実際、メタルスライムを真っ向から退治したという報告はこれまでのギルド史上、数件ほどしか聞いたことがありません。つまり、レベル1のあなたどころか、噂に聞くこの国に召喚された異世界の勇者であろうともこのメタルスライムを倒すことはほぼ不可能なのです。この依頼も実際は討伐というよりもこの場所からメタルスライムを追い払うよう誘導して欲しいというのが正しい依頼内容でしょう。もちろん、これも熟練の冒険者が何グループにも分けてようやく、追い払うことが可能です。しかし、それに掛ける労力や複数の冒険者グループが協力する手間を考えれば、金貨50枚ではとても足りません。ですから、この依頼はずっと放置されていたのです」


 なるほど、そういうことだったのか。

 道理で報酬が金貨の割には誰も手をつけないと思った。

 それだとひとりひとりの報酬が最悪金貨1枚以下になって、しかも相手が倒すの不可能な魔物の相手なら誰だって行きたがらないよなー。

 でも、そうなるとこの依頼主が少し気の毒だな。


「それは……仕方がありません。幸いというべきか、メタルスライムが主に捕食対象としているのは人間ではなく金属や鉱物、ですので建物内の金属が全てが捕食されればメタルスライムは自然とどこかへ立ち去るでしょう。もちろん、建物内から金属が全て無くなったその方は今後の生活に大変苦労するでしょうが……」


 だよな。それって下手したら今のオレと同じ状況で手持ちの金も全部なくなるってことだよな。

 うーん、そう考えるとなんだか他人とも思えなくなってきた。


「分かりました。それじゃあ、この依頼受けます」


「はい、その方がいいですよ。何も無駄に死に急ぐことは……え?」


 オレがそう答えると受付嬢はポカーンとした表情でオレを見て、ついで慌てたようにオレを引き止める。


「ちょ!? な、何を言ってるんですか!? 私の話聞いてました!?」


「ああ、うん。聞いてたけど。それって一人で倒せばその金貨は丸々オレの懐に入るんでしょう?」


「ですから! 倒せないって言ってるんですよ! 物理攻撃無効! 魔法攻撃も無効! 少しでも近づけば触手が近づき、それに触れられればたちまち体内に取り込まれて消化されてお陀仏! そんな相手をどうやって倒すんですか!?」


「まあ、手段がないわけでもないんで」


「はあー!? あなたレベル1の素人ですよねー!? 何の手段があるって言うんですかー!?」


「ここでいうのもなんなので、とりあえずその場所を教えてもらえませんか? 出来れば地図で。すぐにでも行きたいので」


 オレがそう告げると受付嬢は呆れた顔で「はあー」とクソでっかいため息をこぼし、引き出しから地図を取り出すと、この街と、そのメタルスライムが占拠している居城を印で書く。


「ここです。街からこの古城までは途中にあるウッソウ森林を抜ける必要があります。このウッソウ森林にもゴブリンやコボルト、最近だとワーウルフなども出るようになっているのでレベル1のあなたが一人で行けば死にますよ。まあ、古城までの距離は歩いて数時間ほどなので運がよければ魔物に出会わず行けるかもしれませんが……」


「分かりました。それじゃあ、ご丁寧にどうも。あ、この地図もらってもいいですか?」


「どうぞお好きに。冥土の土産というやつでタダでお渡ししますよ」


 そう言って受付嬢はオレに地図を渡してくれる。

 というか、冥土の土産って死ぬ前提かよ。ひどいな。まあ、でも普通に考えればそうか……。

 とはいえ、勝算はある。あくまでも試してみないとわからないというやつだが、個人的にはこれがちゃんと聞くのか試してみたいという気持ちの方が強い。


「よし、それじゃあ行くか」


 そうしてオレは地図を片手にこの異世界での初めての冒険へと乗り出す。

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