アイテムを使用するだけのスキルで追い出されたけれど実はチートスキルと判明したので自由に過ごします

雪月花

第1話 いきなりの召喚で捨てられました

「おお! よくぞ集まってくれた! 異世界より来た勇者達よ! お主達が来るのを待ち望んでおったぞ! 儂はオルスタッド王国の王ガンゼス二世じゃ」


 そう言ってオレ達を迎えたのはいかにもファンタジー世界の王様とも言うべき白髪に白ひげを生やした赤いマントを羽織った恰幅のよい男性。

 今現在、ここにはオレを含む十数人の男女が立っている。

 理由は先ほど、王様が言ったとおり異世界――つまり地球からオレ達を召喚、転移させたためだ。


「すでに神官達より話を聞いたかもしれぬが、今この世界は未曾有の危機にある。それを救えるのは異世界より現れし勇者の資格を持つお主達だけじゃ。すでにお主達には『スキル』と呼ばれる特殊な能力が宿っているはずじゃ! それは異なる世界より召喚された者のみに与えられる特別なスキルであり、一人一つしか宿せぬ。しかし、それを有するということはこの世界において英雄に匹敵する能力となる! それを使い、どうかこの国を、いや世界を救って欲しい! 無論、君達を勝手にこの地に召喚した非礼は詫びるべきじゃ。しかし、我らには他に選択肢がなかった。勇者である皆様の生活は我々が保証致しましょう! 異世界の勇者達よ。どうか、我らファルタールの民を力を貸して欲しい!」


「もちろん! オレ達に任せてくださいよ、王様! 困っている人がいたら助ける! それが勇者の使命でしょう!」


「そうね。いきなり呼び出されたのはちょっと驚いたけれど、世界の危機っていうなら仕方ないわ」


「だな。それに王様の言うとおり、どうやらオレ達にはチートなスキルが付いてるみたいだ。まあ、これさえあればなんとかなるんじゃね?」


 見ると王様の演説に乗り、何人かが手を挙げていた。

 年の頃は見る限り、中学生か高校生くらいであろうか?

 あー、まあ、あのくらいの年頃の子なら、こういう異世界ファンタジーに巻き込まれれば困惑よりも期待や高揚感が溢れるだろうし、厨二病も相まって王様の言うことに乗っかるよなー。勇者だとか、世界を救ってくれだとか、ファンタジーを夢想する人にとっては言われてみたいセリフの一つではある。


「おおお! 勇者様方にそう言われて我ら一同、深く感謝いたします!」


「まあ、オレらも報酬が出るならいいかな」


「悪いけれど私はパス。世界救うとか冗談じゃないわ。というか勝手に召喚して世界救えとか冗談じゃないわ。私は元の世界に返してもらうわよ」


「悪いけど僕も遠慮しておくよ。他にやる気のある奴らだけすればいいだろう。というかさっさと返してくれないか?」


「も、もちろんです。皆様を勝手にお呼びした点は謝罪申し上げます……。ですが元の世界に帰るためにはこの世界に存在する全ての魔人を倒す必要があるのです。ひとまず皆様を召喚したお詫びとしまして最低限の保証は致します。当面皆様がこの国で暮らせる金貨はご用意しておりますので」


「はー? なにそれ? 結局、世界救えってこと? はぁ、面倒くさ……」


「まあまあ、いいじゃない、お姉さん。なんだったらオレっちがお姉さんのこと守ってあげようか?」


「余計なお世話よ。それなら私は私で勝手にやらせてもらうわ」


「そういうことなら僕は魔人退治は他の連中に任せるよ」


「なんだよ、皆ノリ悪いなー! せっかく勇者として召喚されたんだから協力して魔王退治しようぜ!」


「魔王じゃなくって魔人な」


 なにやら召喚された連中も一部はこの状況に不満を漏らしているみたいだ。

 まあ、それはそうだろう。とはいえ、王様の話を聞く限り、元の世界に戻る手段は今のところないらしいし、当面はこの世界に順応しないといけないわけか。

 となると、そのためにはやはり――


「では、皆様。まずは皆様が獲得したスキルの確認をさせて頂きます! それに応じて我々も皆さまへの援助や支援を行いたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします」


 来たか、スキル。

 その単語にはさすがのオレも少し期待してしまう。


 こういう異世界に来て真っ先に確認すべきは己に備わったスキルであろう。

 それによって今後のこの異世界生活の全てが決まると言っても過言ではない。

 まさに一世一代の大ガチャ。どうかSSスキルが当たりますようにと祈るだけだ。


「これはすごい! スキル『万能魔術』! この世界のあらゆる魔術を最初から使用できるスキルのようです!」


「おお、さすがは勇者様!」


「こちらの方のスキルもすごいです! スキル『超速成長』! 通常の十倍以上の経験値を入手するというものです!」


「なんと! それならばすぐに魔神とも渡り合えるレベルになれますぞ! さすがは勇者様方! 皆様が協力すれば、すぐにでもこの世界を救い、元の世界にも戻れますぞ!」


 見ると王様の指示で次々と水晶を持ったローブの男達が、この場に召喚された者達の前に行って、スキルを確認しては賞賛や寿ぎを与えている。

 それを聞いて、それまで乗り気ではなかった連中もまんざらではない笑みを浮かべ「まあ、ちょっとくらいは協力してやるか」などと言っている。

 まあ、気持ちは分かる。

 異世界に召喚されて、強力なチートスキルを手に入れれば、気持ちも高ぶるし、やる気も出てくるというもの。人間とは特別扱いに弱いものだ。

 かくいうオレもその一人であり、まだかなーと待っている内にオレの前にもローブの男が立つ、手に持った水晶を輝かせる。

 さあ、オレにはどんなスキルが宿っているんだ!? と、期待に満ち溢れるが、それはすぐさま崩れ去ることとなった。


「……あー」


「? あの、どうしたんですか?」


 なにやらオレを前になんとも言えない表情を浮かべるローブの男。

 それに気づいたのか王様もオレの元へと近づく。


「どうしたのじゃ? この方のスキルがどうかしたのか?」


「いやー、それが……」


 オズオズとローブの男が手に持った水晶を近づける。

 そこに書かれた文字は――『スキル:アイテム使用』というものであった。


「? なんじゃこれは? アイテム使用? それは一体どんなスキルじゃ?」


 王様の問いにオレも小首をかしげる。

 確かに。なんだろうかアイテム使用って? 名前だけ聞くとアイテムを使用するスキルっぽいが。


「はあ、それがその……そのままの意味のようでアイテムを使用するスキルのようです」


「は? それだけなのか? 他に何かないのか?」


「いえ、説明にはそれだけで……ただアイテムを使用するだけみたいです……」


「…………」


 オレと王様の間に流れる沈黙。

 やがて、王様とローブの男は何も見なかったように背を向ける。


「さあさ! これでどうやら皆様のスキルも判明したようですな! いやー、さすがは勇者様達! 素晴らしいスキルばかりです! これなら皆様の活躍も期待できます! 無論、今後皆様が住む場所は我々が確保いたしますので、当面はこの城にある部屋を好きにお使いくださいませー!」


『おおおおおー!!』


 王様の宣言に沸き立つ声。

 いや、ちょっと待って。

 オレは? 素晴らしいスキル? 活躍? どこが? と問いかけようとしたが、それよりも早く王様がそそっくさとオレのもとへと近づく。


「えーと、そのあなた様のお名前は?」


「あ、えっと、安代(あしろ)優樹(ゆうき)です」


「あー、ユウキ様です。そのー、申し訳ないのですがどうもこちらの転移ミスだったようで、あなたは勇者の資格がないようです。とはいえ、我々もあなたを呼んで、はいそれまでというのも心苦しいです。ということでどうでしょうか? こちらに金貨100枚あります。これがあれば当面は食べるものにも困らないと思うのですが、いかがでしょう?」


 えーと、つまりこれはあれか。

 厄介払い。


 オレが保有しているスキルがクソの役にも立たないゴミだと判明したので、とりあえずオレ一人を追っ払って、残りの勇者様達でなんとかしてもらおうと。

 ああ、なるほどね。うん、なんとなく気づいていたけれど、やっぱこの王様腹黒だったか。

 全てを察したオレに王様は懐から出した金を押し付ける。


「いやー、ここでお互いに揉め事をするのもなんですから、これで納得してもらえませんか? なんでしたら、また日を改めて来て下されば、もう少し上乗せも考えて……」


「あ、いや、これで十分です。それじゃあ、オレはお邪魔だと思いますので、もう行きますね」


「おお! そうですかー! いやー、ほんっと申し訳ない! 今後はこのようなことがないように転移には気をつけますので、どうかユウキ様もお元気で!」


 いや、今後気をつけてもオレの失敗はどうにもならないんですけど。

 そんな事を思いつつも、王様に命令された兵士に押し出され、オレはすぐさま城から放り投げられる。


 分かってはいたことだが、チートスキルのない転移者に対して容赦なさすぎじゃないですか? 異世界。というか最低限の保証をするとかいってこの有様かよ。いやまあ、この金貨100枚がその最低限の保証ってことなんだろうけど。

 とはいえ、こうなっては仕方ない。

 元々、この世界のために戦えと言われても、オレはあまり乗り気ではなかった。

 むしろ、これは逆に好機だと受け取るべき。


 これでオレは国や王様とかのしがらみもなく、この異世界で自由に生きていく権利を得たんだ。

 うん、そう前向きに考え、オレはとりあえず手持ちの金貨と役にも立たないゴミスキル『アイテム使用』を使い、この世界で自由にのんびり生きようと決意するのだった。

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