4-9

 8月9日、午前中にいろいろと済ませ、部屋で暑さに項垂れていると、葵がやってきました。


「開いてるよー」

「昨日の続き聞きに来たぞー」


 そんなわけで昨日見付けた天井裏について詳しく聞かれました。


「茜ってフルダイブだと結構行動的だよな」

「いや、だって天井に看破が反応したら、天井裏に何かあると思うじゃん」


 そもそも和風イベントですから、忍者とか忍びとかくノ一とか御庭番とか、天井裏を主な生息地にしているNPCがいてもおかしくありません。いえ、いないとおかしいです。


「その陣営ってのはプレイヤー1人1人個別に入れるのか?」

「そうなんじゃない? 決める時の注意書きには変更出来ないとしか出てなかったし。クランで統一した方が人海戦術とか出来そうだよね」


 他にもいろいろ聞かれましたが、知らないことは答えられないので、そこまでの情報は出てきません。何でも昨日の内に全員で同じところにしようと決めておいたらしいので、今日の夜にそのクエストを発生させた後なら、陣営の情報は私の好きにしていいそうです。陣営があることについてはそのうち知れ渡るはずですし、イベント素材の納品以外にも陣営毎のクエストがイベント全体の進行に関わるかも知れないので、気が向いたら広めましょう。

 それは葵も同意見のようなので、知り合いにはそれとなく広めるそうです。





 午後のログインの時間になりました。まずはログインして日課をこなします。

 その後はナツエドの城へ行って姫巫女のいる屋敷でクエストを探しましょう。まずはこの光輪殿という名前の屋敷ですね。

 この光輪殿という屋敷にいる姫巫女は光属性を司るそうで、言われてみれば光っている気がします。


「何奴」

「お手伝いの押し売りに来ました。人手はいりませんか?」


 ここのNPCの第一声のほとんどが「何奴」な気もしますが、見知らぬ不審者がいたらそう言いますよね。


「そうか。では手形を見せろ」


 何を判別するためなのかわかりませんが、言われたとおりに城への通行手形を出します。裏面を見つめていますが、現状では何も書いていないので、魔力を見られない限りは問題ありません。

「よし、入れ。中については担当の者から聞け」

 門番風のNPCが扉を開けて中へ入れてくれました。パッと見では普通の屋敷ですが、興味本位で魔力視を使ってみると、外からはわかりませんでしたが、屋敷全体が光属性の魔力を帯びています。


「あら、新しいお手伝いの方?」

「そうです。お手伝いの押し売りに来ました」

「あらそう。それで貴女は何が出来るの?」


 出てきた女中さんと話をしながら観察していますが、何ともこの中だけで完結していそうな場所ですね。他の場所に炊事場があったのに、ここにもあります。他には、強そうな侍風の人もいますし。


「料理と調合と魔法が使えます」


 自己申告しなくても勝手に読み取ってくれそうな気もしますが、会話を挟むというのもゲームでは必要なことです。それに、剣や体術スキルを持っているからと言ってそっちの方に割り振られても困りますし。


「そう。ところで、炊事場で働いたことはあるの?」

「このお城の中の炊事場で野菜洗いはしましたよ」

「あらそう。じゃあ、ここの炊事場でも手伝ってもらいましょう。野菜洗いをしてたのなら、流れはわかっていそうだし」


 ふむ、他の場所でのクエストの進行度が影響しそうですね。ここでやったクエストも影響するのであれば、結構楽そうですね。ただ、一心不乱に洗っていたので、周りを見ていないため、流れなんてわかりませんけど。

 炊事場に入ると、前回と同じように割烹着へと装備が変更されました。今度は野菜の皮むきらしいです。ひたすら手作業で剥いていくだけのようですが、当然のようにピーラーはありませんし、何かのスキルで一括皮むきが出来るわけでもないので、精神的に疲れますね。

 皮むきのクエストを2回こなした後は野菜を延々と切るクエストが2回発生しました。この4回の報酬は全て小判1枚だったので、何とももうやりたくない気持ちになりましたよ。

 ここらで一度休憩を貰い、外へ出ることにしました。何事にも気分転換は必要です。

 ヤタと信楽を召喚して彷徨っていると小さな池に辿り着いたので、泳いでいる鯉でも眺めてゆっくりしましょう。

 パンでもあれば餌やりを出来たのですが、ないものはしかたありません。信楽の尻尾を釣り竿がわりに……。


『TA,TANU』


 嫌がられてしまいました。

 そんな風に遊んでいると――。


ハヅチ:リーゼロッテ、今大丈夫か?


 ハヅチからクランチャットが来ました。


リーゼロッテ:どしたの?

ハヅチ:報告だ。所属陣営を決めるクエスト、クラン単位で入れたから、もう好きにしていいぞー

リーゼロッテ:りょーかい


 イベントの項目を確認すると、クラン全体で【守り人の里】という陣営に入ってることになっていました。


「リーゼロッテじゃないか」


 ハヅチからの報告も終わり、不自然に綺麗な池を眺めていると、背後から声をかけられました。名前を呼ばれたので振り向いて確認してみると、そこには6人のプレイヤーがおり、そのうち2人は頭の上に名前が表示されています。男の人の方はピンク色のウェストポーチに、同じ色の巾着を装備しています。あれは私のと同じデザインなので、ハヅチが作った物でしょう。


「ザインさん達ですか。レイドぶりですね」

「ああ、久しぶりだな。ところで。君はいつ頃から城に入れるようになっていたんだ?」

「先週ですよ」


 いろいろと違うことをしていましたが、あのクエストを終わらせたのは先週で間違いありません。細かい日程なんて気にしなくていいんですよ。


「そ、そうか。ちょっと情報交換しないか?」

「構いませんよ。碌な情報持ってませんけど」


 私が持っている情報なんて遊んでいれば見付かるものばかりです。なので、私以外の誰かがすぐに見付けてもおかしくありません。


「それじゃあみんなは先に行っててくれ」

「あ、ユリアさんは残してくださいね。……女の子とどうしても二人っきりになりたいというのであれば、逃げますけど。……あ、別に、ユリアさんだけでもいいですよ」


 同じパーティーではないので、内緒話モードを使うにしても、ザインさんには耳打ちしたくないですね。やるならユリアさんです。とか思っていのたですが、それならユリアさんがいれば十分ですよね。ええ、ザインさんはいりません。


「……ユリア、どうする?」

「私は構わないわよ。どうせパーティー会話で話せるのだから」

「それじゃあ、頼む。何かあったら叫べよ」

「ええ、そうするわ」 


 二人共酷いですね。まるで私がユリアさんに対して良からぬことを企んでいるようじゃないですか。まぁ、否定はしませんけど。

 ユリアさんを残し、他の人達はクエストかなにかをしにいったようです。最前線のプレイヤーというのは大変ですねぇ。いろいろと組織運営とかトップ争いとか、本人達が楽しのであればいいのですが、私には向きませんね。


「それじゃあ、情報交換をしましょうか」

「私が先に話すので、対価はおまかせしますね」

「それでいいの? 貴女がいいならかまわないけれど」

「情報の対価を考えて話すのが面倒なんですよ」


 さて、このイベントで話すに値する情報ですか。そんなの一つしかないですね。私はユリアさんに手招きをして内緒話モードで話しかけます。口元に手を当てているのでやろうとしていることを理解しているユリアさんは耳に空色の髪をかけながら貸してくれました。耳に息を吹きかけたく誘惑に負けようかと思いますが、ここはまだ我慢です。すぐに良からぬことをしたら叫ばれてしまいますから。


「このイベントでNPCの陣営がいくつかあるのは知ってますか?」


 この前提を確認しないとあの里のことを話しても意味が通じません。


「陣営? 確か、特殊施設のクエストをこなしていくと、NPC同士の派閥争いに巻き込まれるってきいたけれど、それのことかしら?」


 ふーむ、多分、それのことでしょうね。最前線のプレイヤーの人達はあの城とか屋敷を特殊施設と呼んでいるわけですか。一つ勉強になりました。


「多分、それのことですね。条件を満たすと、それぞれの陣営から誘いがかかるみたいなんですけど、私は守り人の里って人達の陣営に入りました。そこの目的はナツエドの存続だそうです」

「守り人の里……聞いたことないわね」

「それで、そこのNPC曰く、龍を復活させたい所や、封印を続けたい所、力だけを取り出したい所とかがあるそうですよ」


 私の話を聞き終えると、今度は声が聞こえなくなりました。思考操作でパーティー会話に変えたのでしょう。

 しばらくしてから、ユリアさんの声が聞こえるようになりました。


「ザインからの質問だけれど、その陣営はどこのクエストをやればいいの?」


 その質問に対し、思わず首を傾げてしまいました。


「? 何言ってるんですか。その陣営に誘われる前は、炊事場で一度野菜を洗うクエストをやっただけですよ」


 そもそも私が一つのことを集中してやるわけないじゃないですか。素材集めとか、レベル上げとか、ゴールが決まっているならともかく、目的もなく延々と同じことをするなんて出来ませんよ。今だってこうして炊事場のクエストに飽きて息抜きをしていますし。


「……ごめんなさい、少し詳しく教えてほしいのだけれど」


 詳しくですか。そう言われてもこまりますね。


「何が聞きたいんですか?」

「その陣営に誘われた時の詳細をお願い出来る」


 それならさっきハヅチにリアルで話しましたから、上手く話せますよ。きっと。

 そんなわけで、ユリアさんに対して内緒話モードで話しかけようとしました。


「ところで、その話し方をするのも、何か理由があるのかしら?」


 その問に対して私は微笑みかけて誤魔化しました。


「私を誘った忍者さんがどこで聞いているかわかりませんから」


 何を聞かれても私は内緒話のままで話しかけました。納得していないようにも見えますが、これ以外では話さないと思ったのか、諦めて耳を預けることにしたようです。

 ふと思ったのですが、聞き耳スキルとか、読心術が出来る人とかがいれば、内緒話モードでも話している内容がわかりそうですよね。それに、私を誘った忍者が、近くで見張ってるかもしれませんし。

 とりあえず、天井裏で忍者さんと遭遇した時のことを話しました。


「その陣営、面白いわね。あ、ザインが考え始めたみたいだから、少し時間がかかりそうね。待たせるのも悪いから、今のうちに少し情報を出しておくわ。何か知りたいことはあるかしら?」


 ふむ、知りたいことですか。召喚獣については知りたいですね。ですが、あれはサモナーズーに聞いた方が詳しくわかりそうです。ヤタについて聞かれなかった話を対価にすれば、ある程度は教えてくれるかも知れません。

 なので、確認をしましょう。流石にずっと内緒話モードで話すのは疲れるので、普通に話しかけます。


「さっき光輪殿の炊事場でクエストをしたんですけど、城の炊事場のクエストと進み具合って連動してるんですか?」

「まだ確定ではないけれど、城内の一般施設のクエストの進行度は、特殊施設のクエストに影響を与えるらしいわ。ただし、それは一方通行のようで、特殊施設のクエストを進めても、一般施設の方は進まないって聞いてるわ」


 何ということでしょう。つまり、私はさっきやったことをまた城の炊事場でやらなければいけないということじゃなですか。1ヵ所だけを進めるのなら、問題ないのですが、8人の姫巫女全員の好感度を上げる必要がある私には、大問題です。予定を変更しなければいけませんね。


「ユリアさん、特殊施設に影響を与える一般施設のクエストの情報が対価に欲しいです」


 ユリアさんの手を握り、懇願するように見つめます。私の曇りなき眼にかかればきっと教えてくれるはずです。


「貴女から困った時の盾代わり以外の要求をされるのは初めてな気がするわ。フフ」


 不敵な笑みを浮かべたユリアさんが私の腰に手を回し一気に引き寄せるように力を入れてきました。予想外のことに反応出来なかったのは一生の不覚です。


「えっと、あの……」

「そういえば、魔力操作を教えてもらった時の対価って私の反応を見て楽しむことだったのよね」


 あ、ばれてましたか。あの時はいい目の保養をさせてもらいました。ただ、それを悟らせてはいけません。ああいうのはそれを求めていると知らないからこそいいものなんです。

 まぁ、誤魔化す手段を準備していなかったので、とても困っていますが。


「えっと……」


 ユリアさんが私の手を振りほどき、頬に触れてきました。顔が近いですよ。


「貴女が困っているのを見るのはとても気分がいいわ」


 あれー、ユリアさんってこんな百合百合しい人でしたっけ? そもそもどんな人かよく知らないので、何とも言えませんが。


「じゃあ、私の反応が対価でいいですか?」

「あら、随分と余裕そうね」

「余裕がないと反応を楽しめないじゃないですか」


 この状況、どうしましょう。ユリアさんはそこそこありますが、時雨ほどではありませんが、まぁ、これはこれでいい気分です。

 とりあえず、少し反撃しましょう。


「顔を赤らめながらお姉様って言った方がいいですか?」


 ユリアさんは考える素振りを見せていますが、すぐにまんざらでもなさそうな笑顔を浮かべました。しかたありません、ちょっとサービスしましょう。


「……お、お姉、様」


 おや、解放されてしまいました。ただ、ユリアさんは顔を見られないようにしながら肩を震わせているので、これはまんざらでもないのでしょう。


「ん、んん。……ザインの考えがまとまったようよ」


 ユリアさんが一瞬残念そうな顔を見せましたが、すぐに平静を装いました。この変わりようはすごいですね。


「それで、どうなりそうですか?」


 考えがまとまっているはずなのに、ユリアさんの声が聞こえません。これは私と戯れるのに夢中で、希望を伝えていませんでしたね。まぁ、私は優しいのでそこは突っ込まないで上げましょう。


「まず、貴女の希望通り、特殊施設と連動している一般施設のクエストを教えるわ。それで構わないかしら?」


 私としては欲しい情報を手に入れることが出来るので、異論はありません。そもそも私のように好奇心で行動すれば簡単に見付かるので、秘匿できそうにありませんし。


「それでお願いします」


 詳しいことはフレンドメッセージで詳しく送ってくれることになったので、送られてくるのを楽しみにしましょう。今の所、炊事場のクエストが連動するのはわかっているので、そこを済ませてしまいましょう。

 やる気を取り戻した私はヤタと信楽を送還し、ザインさん達の言う一般施設、マップに表示されている炊事場に赴き、クエストの続きを行いました。確かに、光輪殿では切る工程までやりましたが、ここでは皮むきからでした。まぁ、一度やったことなので、2回目の野菜を切るところまで終わらせました。何と、このクエストで料理人スキルがLV20になり、発酵が可能になりました。流石に自分で菌を見付けろと言わないのはありがたいです。

 ザインさんからもメッセージが届いていたので、目を通してからログアウトです。





 夜のログインの時間です。ログイン前にハヅチにはザインさん達に教えたこととその対価を伝えてあるので、クランのみんなにも伝えておいてくれるはずです。

 それではクエストの続きをしましょう。炊事場でのクエストは5回目まで終わっているので、次は6回目です。その内容は魚を捌くというものでした。包丁を入れる順番に赤いラインが見えるので苦労はしませんね。というか、オートでやってくださいよ。

 7回目も同じで、8・9回目は下ごしらえでしたが、時間いっぱいまでランダムに任されるので、かなり面倒です。一般施設のクエストの進行度が特殊施設の進行度に影響を与える仕様でよかったです。

 次の10回目、炊事場で影響を与えるのはここまでなので気合をいれて魚を焼きましょう。

 作業内容は、少し離れた場所で七輪をうちわで扇ぎ、焼けてきたらお皿に載せ、次のを焼く、それだけです。焼き具合はシステムの方が教えてくれるので、黒焦げにしたり生焼けになる心配はありません。

 6回目から10回目までは報酬が小判2枚でした。

 まだ時間があるので次のクエストへ向かいましょう。マップを頼りに少し離れた位置にある道場へと向かいます。道場自体は街の方にもあったわけですが、御留流でも教えてくれるんですかね。


「たのもー」

「何奴」

「お手伝いの押し売りに来ましたー」

「手伝いはいらん」


 おやや? 大抵のクエストを受けられる鉄板の文言なのですが、どうやらここは稀によくあるパターンのようです。


「入門に来ました」


 道場の場合、選択肢は2つあり、私が今口にした入門と、道場の看板を奪うための道場破りです。ただ、この2つは目的によって使い分ける必要があるので、今回は入門を選びます。


「そうか。ところで、剣術と体術、どちらを学びたいんだ?」


 あ、どうしましょう。特にどちらを上げたいというのもないんですよね。まぁ、いろいろと派生も出せそうな格闘スキルを上げるために体術を学びましょう。


「体術でお願いします」

「そうか。それではまずやる気を見よう」


 あ、まずいです。普段の私に一番ないものを見ようとしています。ええ、マイナスに振り切っているので、とある一部分よりもありません。ですが、クエストなのでやるしかありません。


「何すればいいんですか?」

「まずはついてこい」


 そう言って連れて行かれたのは少し狭い道場です。ただ私達以外だれもおらず、少し汚れている気がします。……まさか。


「ここを掃除してもらう。道具はあそこにあるのを好きに使え。終わったら呼びに来るように」


 ああ、やっぱりです。入門で最初にやることっていえば掃除ですよね。先輩らしきNPCは戻ってしまったので、掃除道具の確認をしましょう。用意されている道具ははたきに箒に雑巾ですか。ああ、割烹着やらもあるので、形からも入れますね。クエスト用の装備切り替え欄が開放されたので、着替えて掃除を始めましょう。まずははたきがけです。上からが基本ですから。

 普通は理念みたいなのを書いた板が飾ってあると思うのですが、そういった飾り気はなく、掃除するためだけの道場という感じがします。

 次に箒で掃いて、最後に雑巾で乾拭きです。体術を学ぶための場所なので、床には畳が敷いてあります。そこで水拭きする人なんていませんよね。

 かなり時間がかかりましたが、肉体的には疲れないので休むことなく掃除することが出来ました。それでは先輩らしきNPCを呼びに行きましょう。


「たの……先輩、終わりました」

「そうか、確認しよう」


 先輩らしきNPCを伴って小さめの道場に戻り、掃除の終わりを確認してもらいました。その時の言葉を聞いた結果、私は絶対に運営を許しません。


「全部やらなくてもよかったんだが、やる気は十分のようだな」


 ……は? 全部やらなくてもよかった? 範囲ややるべきことを具体的に示さずに、それを言いますか?


「……ほう。ちなみに、予定していたのはどこまでですか?」


 私は冷静です。私は冷静です。私は冷静です。


「あ、ああ。畳を…綺麗に、してくれれ、ば、それで……よかった、んだ……が」


 おや、何に怯えてるんでしょうかね。私は冷静ですから、怯える必要なんてないでしょうに。


「ま、まぁ、よくやってくれた。これは駄賃だ」


 そういってクエスト完了の文字3個と共に手に入れたのは小判3個です。どうやらクエスト3回分と認識されたようです。ふふふ、別に怒っていませんが、許してあげますよ。……私は優しいですから。


「ところで、次は何をするんですか?」

「ああ……。屋根の修理をしてもら……、手伝って貰おうと思っていたんだ」

「へぇ……、さっさとやってしまいましょうよ」


 何故か格闘スキルがLV15になり【ハイキック】というアーツを覚えたことはどうでもいいんですよ。今はこの鬱憤を晴らしてしまいましょう。

 先輩NPCははしごを持ってきて登りますが、私は軽業スキルを駆使し、屋根へと上がります。この程度も出来ずに先輩面してるんですかね、このNPCは。

 大工系のスキルは持っていませんが、屋根の修理を手伝うと今度はクエスト完了の文字が2個出てきました。私はほとんど材料を渡しただけですが、貰えるものは貰っておきます。

 このまま続けたいところですが、掃除に時間を取られたので今日はログアウトです。

 普段より遅いですが、お茶とミントオチールでゆっくりしてから寝ましょう。

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