第54話 救出

 扉から出れば、必ず山賊と鉢合わせするよな。

 とすると……、この窓しかないか……?


 この窓を大きくするには、ぶっ壊して重力魔法で助ける。

 我ながら良いアイデアだよね。


 それで、どこにこの人達を移動させようか?

 さっきの湖に確か島があったよな。


 これで決まりだね。

 完璧な計画で満足する俺。



 あ……。

 一箇所だけ大きな物音が聞こえたら、そこに山賊が押し寄せてくるよな。


 とすると、数カ所建物を壊して、混乱させた方が無難だよな。

 よし、これであとは実行に移すのみと。


 部屋の中の人達は、いまだに俺を見て怯えていた。

 せっかく助けに来たのに……。


 このままだと、助けたあとに言われそう。

(ハゲワシが私達を食べようとしたのを、助けて頂いてありがとう)って!


 あ〜〜あ、ちゃんと言葉が話せたら、『助けに来ました』って言いたいよね。


「バブゥー」


 あ〜〜、しまった〜〜〜〜!!

 つ、つい言ってしまったよ俺……?


 ど、どうしよう……?


「あのハゲワシ、バブゥーって言わなかったか?」


「ええ、確かに言ったわ。

 もしかして赤ちゃん?」


「そんなわけないだろう。

 新種のハゲワシかな?」


「でも、あの声だと私達を食べなさそうね」


「ああ、凄く可愛い声だったからな」


 ……?

 え〜〜と、とりあえずは成功……、かな?



 気分を取りなおして、青く澄み切った大空に舞い上がる俺。

 気持ちいい〜〜〜〜〜〜!


 この、舞い上がる瞬間が良いよね。


 あ……、馬車が止まって、山賊達に囲まれている。

 計画通りだけれど、王妃様達大丈夫かな?


 ん……?

 何かが飛んでいるよ。


 虫か……?

 馬車の上空に、何かいるのが見える……。


 も、もしかして妖精……。

 そうだよ、あれは父ちゃんがパンティの絵柄で採用している風の妖精だ!


 こんな時でなければ、追いかけて行くのに……。

 なんて運が悪いんだろう。


 しかも、ハゲワシのままで追いかけたら確実に逃げる気がする……。

 今回は、あきらめるしかないのか……。


 こんなチャンス、二度と来ない気もするけれど……。

 俺……、赤ちゃんだし、まだチャンスがあるはず。


 たぶん……?




 よし!


 気持ちを切り替えて、出城を壊そう。

 あの塔がいいかな?


 誘拐された人達のいる場所から最も遠い塔だ!


 俺は塔に近付いて、いつものようにオシャブリを吸って精神統一する。

 手の中に、最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブのイメージを開始。



 イメージが完了した。

 いくぞ〜〜〜〜〜〜!!


 魔法力マジックパワーを使って魔法を発動する。


 キィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!


 耳をつんざく音と共に、目に見えない最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブが塔に向かう。


 バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!


 塔に命中して、豆腐が崩れる様に崩壊していく。

 

 やったね俺。

 近くにある塔も、同じように繰り返す。


 バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!


 建物の中から、山賊らしき人達が数人武器を持って出てきた。

 これでとりあえずは、山賊達をこちらに引き寄せられたかな?


 俺は優雅に旋回しながら、誘拐された人達のいる窓にとまる。


「ハゲワシが再び戻ってきたわ」


「さっきの大きな音は、もしかしてこのハゲワシなのか?」


「そうかもしれないわ。

 それに、私達を助けに来たのかもしれない。

 だって、とても可愛い目をしているんですもの」


 俺って可愛い目なの……?

 それって、ほめているのかな……?


 と、とにかく、好意的にとらえてくれて嬉しいよ。

 よし、頑張るぞ〜〜!


 部屋の中に入って窓の方を向く。

 そして、いつものようにオシャブリを吸って精神統一。


 手の中に、最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブのイメージを開始。



 イメージが完了したー!

 いくぞ〜〜〜〜〜〜!!


 魔法力マジックパワーを使って、魔法を発動する。


 キィィィ〜〜〜〜〜〜ン!


 再び、耳をつんざく音と共に、目に見えない最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブが窓に向かう。


 バッゴォ〜〜〜〜〜〜ン!!


 窓の周りが破壊されて、大きな穴が開いた。


 大成功だ!!


 子供からすぐに、湖の島へ重力魔法を使って移動を開始する。


「ハゲワシは、私達を助けようとしているわ」


「見てみろ、湖の島に子供から移動させている。

 凄い魔力だ!」


「ハゲワシはきっと賢者様よ」


 えーと……。

 まだ賢者にもなっていない、ただの赤ちゃんなんですけれど……。


 とにかく急がないとな。

 こちらでも派手な音を立てたから、山賊が来る可能性があるし。


 俺は急いで、急いで、急いだ。

 その結果、全ての人達を湖の島に移動を完了する。


 終わった〜〜!

 あとは、ユックリと空から高みの見物といきますかね。


 あれ……?

 移動できないよ!俺……?


 何で……?


「お前は、ただのハゲワシではないな!」


 後ろを見ると扉が開かれており、山賊が1人立っている。

 しかも、俺の重力魔法を、重力魔法で移動できないようにしている。


 少しずつ、引っ張られている俺。

 もしかして、こいつが山賊の頭か?


 でも俺まだ、全力出していないんだよな。

 俺の全力を出しますかね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る