第47話 広域治癒魔法、再び
俺の心が入っているウール王女の体を、王妃様が抱いて下の階に降りて行く。
多くの人が包帯や薬草らしき物を持って忙しく行き来している。
誰もが王妃様に軽く頭を下げて行く。
緊急時なので、口頭での挨拶はない。
おべっかを使う家臣が誰一人いないので、少し驚いている。
王妃様は、その手のことが嫌いみたいだ。
それとも、家臣への日頃の教育が行き届いているのだろうか?
今回はギガコウモリ戦の時に比べて、桁違いにケガ人が多い。
いくつもの部屋にケガ人を分けていると王妃様が俺に説明をしてくれる。
その部屋を訪問するので、各部屋ごとに以前使った
すでに、十数人の人達が亡くなっていることも告げられた。
最初の部屋の扉を開けると、今まで聞こえてきた苦痛の声が、より一層大きく聞こえてくる。
「い、痛い! 誰か何とかしてくれ!」
「血が止まらない。
私の治癒魔法ではこの出血が止められない!」
「う〜〜〜!」
痛ましい光景があちらこちらで見られた。
顔を背けたくなるような苦痛の表情をする多くの人達…。
俺は……、心からこの人達を治したいと強く思った。
前に出来た
ウール王女のカラダをできるだけ王妃様の方に身を寄せる。
王妃様が治療をしたと思わせないといけないと直感で思ったからだ。
ウール王女の手から金粉が出ると後で王女が困ると。
まず最初に、オシャブリを……?
あ〜〜〜〜〜〜!!
オ、オシャブリを忘れた〜〜〜〜〜〜!!
ウール王女の部屋にいる俺のカラダから持って来るのを忘れた。
ど、どうしよう……?
いきなり精神が乱れ出す俺。
ウール王女の部屋には今から戻れないし……。
な、何か代用品……?
あれ……?
俺……、何かを吸っている。
少し甘い……?
こ、これはウール王女の親指だ。
口からウール王女の親指を出した。
でも、何で甘いんだろうか?
まっ、いっか……。
気にせず俺は、ウール王女の親指を吸って精神統一する。
精神がやっと落ち着いてきたので、両手で卵を持つようにした。
そして、その中に怪我をした部屋の怪我人を全て直すためのイメージを開始。
ありとあらゆるケガを治すイメージを両手の中でする。
ピンクダイアモンドの中にある魔法を使うために俺は、それに手を近付けようとした。
プニュ。
……?
こ、これは王妃様のオッパイ。
思わず手を引いた。
大きなオッパイの谷間に、ピンクダイアモンドを王妃様は隠し持っている。
それに触るには、オッパイをプニュっと押さなくてはピンクダイアモンドには届かない------。
かといって、王家の家宝を人前にさらけ出すこともできない。
待てよ……。
王妃様がそこに隠していると言うことは、俺が王妃様の柔らかなオッパイを、プニュとしてもいいってことだよな……?
間違いない!
王妃様が俺を見て微笑んでいる。
もう一度ウール王女の親指を吸って一からやりなおした。
そしてイメージができると、王妃様の柔らかな大きなオッパイをプニュと押してピンクダイアモンドに触る。
ピンクダイアモンドの
両手をゆっくりと広げていくと、手から光り輝く金粉が大量に溢れ出してきた。
まるで、王妃様の胸の谷間から出ているように見える。
部屋中に金粉が充満していくと、怪我人の所に集まっていく。
そして金粉は、怪我人の体の中に静かに入っていった。
以前と同じだ!
部屋の中では、大きなどよめきが起こり始めている。
「痛みがなくなったよ!
血が止まって、完治している!」
「切られたキズがふ、塞がっていく。
誰が治癒魔法を?」
「凄いわ!
私のキズが治っていくわ」
人々は、金粉が出始めた場所に居た王妃様を見ている。
「王妃様が、私達に治癒の魔法をして下さったわ」
誰かがそう言うと、礼を言いたい大勢の人達が王妃様の周りに集まって来る。
「「「「「王妃様、ありがとうございました」」」」」
集まった人達は、王妃様にお礼を言う。
王妃様は、にこやかに微笑んで、礼に対してみんなに答えた。
ヒミン王女と同じで、王妃様は真実を言わなかった。
しかも嘘を言わないで、ただ
俺の秘密を守れるし、王家に対する忠誠心もこれで飛躍的に高まるだろうと思った。
さすが、国を収めているだけあります。
この部屋を出ると次の部屋に行く。
同じように、痛ましい光景が広がっている。
再び俺はウール王女の親指を吸って、精神を統一した。
でも、何で王女の親指は甘いんだろう?
もしかして、甘いお菓子を食べた後だからか?
シナモン系の味もしている------?
オット、雑念が入ると良くないよな。
雑念を俺は追い払って精神を再び統一した。
そしてピンクダイアモンドの
この部屋でも同じことが起こり、人々は王妃様に感謝の言葉を述べる。
王妃様は先ほどの部屋と同じように、
3つ目の部屋に行くと父ちゃんが治療にあたっていた。
魔法が尽きたのか、包帯でケガをした人の腕を巻いている。
「とー」
おっと!
いつものクセで、父ちゃんと言いかけた。
ウール王女のカラダから父ちゃんと言ってはまずいよな……、やっぱり……。
この部屋でも同じように
部屋にいる人達は王妃様を感謝の目で見ているけれど、父ちゃんだけは首を傾げて俺が中に入っているウール王女を見ている。
この
ウール王女の中に俺がいるのを父ちゃんは感づいたみたいだ。
俺は父ちゃんの方を見て右手を上げた。
すると、父ちゃんはそれに答えるかのように微笑んでいる。
それを見た父ちゃんは、俺が城にいるから安心をしたみたいだった。
こうして王妃様と俺は、全ての部屋を訪問して
最後の部屋を出ると、執事が王妃様に駆け寄って来る。
執事が走るのを城で初めて見た俺は、何事が起きたのか不安になる。
「王妃様、大変で御座います。
ヒミングレーヴァ王女が大怪我で、意識がありません。
治療師の話によりますと、とても危険な状態と申しております」
それを聞いた王妃様の顔が変わっていく。
そして、ウール王女を持つ手が小刻みに震えだしていった。
王妃様は俺を見ると、ウール王女の時のように真剣な表情になる。
そして俺に、頭を深く下げたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます