第43話 義兄弟

 アトラ姉ちゃんは、まだピクリとも動いていない。

 周りではミノタウルスがこちらに迫っている。


 あ……。

 ギガコウモリの義兄弟と名乗っていたミノタウルスが、こちらにやって来る。


 どうやら、この群のリーダー格みたいだ。

 よく見ると、いままでのミノタウルスよりも一回り大きい。


 俺は再びカッコイイ猛禽類になって……。


 頭の毛の少ないハゲワシになって、空に舞い上がった。


 アトラ姉ちゃんが気になるけれど、安全を第一に考えないとまずいことになるなと思った。

 姉ちゃんには、アングルボーサ教授が近くにいるので安心できる。


 俺ができる治療は全てやり終えた。

 慎重に観察しなければならない所だれど、ここは最前線のど真ん中。


 敵をやっつけないと、こちらがやられてアトラ姉ちゃんも危なくなる。



 リーダー格のミノタウルスは、俺を目で追って睨みつけている。

 間違いなく俺目当てだ。


「お前が義兄弟のギガコウモリを倒したのか!?」


 ここまで届く、ドスの効いた大きな声で俺に怒鳴っている。


 バブゥーと言いたいのだけれど……。

 ハゲワシが、バブゥーと言ったらおかしいよな……?


 たぶん?


 俺はバブゥーとは言わずに、リーダー格のミノタウルスに攻撃した。

 初級の火炎魔法である火玉魔法ファイアボールをリーダー格に向けて発動した。


 中級の火嵐魔法ファイアストームとなって襲っていく。


 ミノタウルスは猛火に包まれている。

 これだけの猛火、今までのミノタウルスは魔石になっていった。


 けれど……。


 どうだ、やったか……?


 炎が消えると、前と同じ姿のミノタウルスが現れた。


 ウッソーーーーー!!

 何で!?


 リーダー格だから防御力が高いの……?

 分からない……?


 防具はすでに壊してあるので、防御力はかなり落ちているはず。

 それなのに、火炎攻撃が全く効かない。


 もしかして、魔法が使える……?


 でも母ちゃんは、ミノタウルスは魔法が使えないと言っていた。


 すると、何か特殊な防御力があるんだ。

 もしかして闘気なのか?


 母ちゃんの話の中で、闘気に関してこう言ったことがあった。


『闘気は、魔法を弾く効果があるのよトルムル。

 魔法剣士と上位の魔物の中には、普通の魔法では闘気によって弾かれてしまう。


 闘気には、闘気でしか貫く事ができないのよ」


 母ちゃん……、闘気といったって、俺には闘気はほとんどないと自慢できる。

 うん、間違いない!


 だって、俺赤ちゃんだし……。


 あるとすれば,アングルボーサ教授かアトラ姉ちゃんだ!


 でも……、2人とも戦えない現状では俺がやるしかない。

 もしかしたら、弓矢使いの教授なら倒せるかもしれない。


 けれど、起伏があって彼女からリーダー格のミノタウルスが見えない。

 口で説明できないし……。


 バブゥーで通じるはずもなし……。



 そういえば、このミノタウルスだけは俺が攻撃した最大超音波魔法アルテメイトスーパーソニックウエーブの深手を全く負っていない。

 無傷のままだ。


 どうすればいい、俺?


 竜巻だと、アトラ姉ちゃん達も巻き添えになる。


 岩を落としても、コイツには効かない気がするし……。


 雷撃か……?

 試してみる価値はありそうだ!


 だけど、体の中にある魔法力マジックパワーは残り少ない……。

 あと一回だけ、最大魔法が使える。


 しかし、もしダメだったら中級魔法しか発動できない。


 あ……、アトラ姉ちゃんの方に移動しだした。

 近くの敵から倒すつもりだ。


 ヤ、ヤバイ!


 俺は意を決して最大雷魔法アルテメイトライトニングを、魔法力マジックパワーを使って発動する。


 ゴロゴロ、ゴロゴロ。


 ピカァーーーーーー!!


 空に積乱雲が現れると、巨大なイナズマがミノタウルスを襲う。


 ドッガァ〜〜〜〜〜〜ン!!!!


 ミンタウルスに直撃したのは間違いないはず。


 でもよく見ると……、ミノタウルスはフラついているだけで倒れてはいない……


 何という強靭さ!!


 あれだけの大きな雷撃の直撃を受けても、まだ生きているなんて信じられない!

 しかし……、かなりのダメージを与えたのは間違いがない。


 こちらを睨んだ。

 まだまだ闘気はあるようだ。


 俺の攻撃魔法は、初級から中級にあがる。

 けれど、中級魔法から上級魔法に上がるか試してないので分からない。


 あとはアングルボーサ教授と弓矢使いの教授に任せた方がいいと思う。

 俺はリーダー格の周りにいる雑魚のミノタウルスを殲滅した方がいいのでは?


 残りの魔法力マジックパワーで、それは可能だ。

 初級魔法だと、まだまだ魔法が発動できるからだ。


 俺は意を決して、雑魚のミノタウルスを殲滅すべく最初にオシャブリを吸う。

 アングルボーサ教授に弓矢使いの教授、アトラ姉ちゃんを宜しくお願いします。


 そう俺は心の中で言って急降下して行った。


 ゴォーーーーー。


 ゴォーーーーー。


 ゴォーーーーー。


 意識を目の前の雑魚のミノタウルスに集中して、俺は攻撃を繰り返している。

 俺の後には、魔石だけが残されていく。


 チラッとアングルボーサ教授を見ると、すでにリーダー格のミノタウルスと戦い始めていた。


 弓矢使いの教授も戦っているけれど、ミノタウルスは強靭な体で矢を弾いているみたいだ!

 恐ろしい敵だ。


 アングルボーサ教授は善戦してはいるけれど、かといって有利に戦っているとは思えなかった。

 

 アングルボーサ教授、頑張れ〜〜!!


 アトラ姉ちゃんの命はアングルボーサ教授にかかっている。

 他の教授達からは、アングルボーサ教授の場所は起伏があって見えていない。


 他の教授達と、応援に来てくれた人達は学園に戻りつつある。

 学園の建物から戦いの音が聴こえて来ているので、そちらを優先するみたいだ。


 それはそれで賢明な判断だと思う。

 エイル姉ちゃんと、ヒミン王女も心配だからだ。


 それに、多くの生徒達も戦っているのは間違いのないこと。

 彼らでは雑魚のミノタウルスであっても危険だ。


 俺は、意識を目の前にいる雑魚のミノタウルス達に向ける。

 そして、俺にしかできない戦いを続けていった。

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