第106話 報告と出発
魔物の大群を撃退したユウヤ達は報告のために冒険者ギルドまで戻って来た。
ユウヤ達がギルドに入ると多くの冒険者がユウヤ達に視線を向けた。
冒険者の視線が集まったことを不思議に思いながら受付に近づき、職員の一人にギルドマスターの部屋まで案内を頼んだ。
ギルドマスターの部屋にユウヤ達が入ると、ギルドマスターが一瞬だけ驚いた顔をするがすぐに安心したような笑顔でユウヤ達を向かい入れた。
「この度は本当に助かりますた。まさか、魔物の大群に竜種が関わっているとは思いもせず……」
「竜種に関しては気にしなくていい。それにしても竜種の報告はもう届いていたんだな」
竜種が現れたことを申し訳なさそうに話すギルドマスターにユウヤは首を横に振りながら返し、竜種のことをすでに知っていることに少し驚いていた。
ギルドマスターはユウヤの驚きを当然だというような顔で返した。
「西の門で職員が様子を常に見ていたからな。竜種が現れたと聞いてかなり驚いたが、まさか討伐してしまうとは思ってもいなかったよ」
「なるほどな。まあ、報酬について話したいんだが」
「分かっている。座ってくれ」
ギルドマスターに言われてソファーに座ったユウヤ達にギルドマスターは執務机越しに問いかけた。
「交渉は俺がやるよ」
「ああ、任せるよ。交渉とか取引は苦手でな」
「任せとけ、さっき楽させてもらった分はきっちりと働くさ」
「まあ、当然よね」
「ですね」
「そうですね」
「……俺の扱い酷くないか?」
「気にしないで交渉しなさい」
「……分かったよ」
ルクスは女性陣の言葉が酷いことが少し気になったが、ギルドマスターの前で話すことでもないため諦めて報酬の交渉を始めた。
交渉は意外と早く終わり、長期の旅に必要な資金は十分に稼ぐことが出来た。
ギルドマスターとの交渉を終えて報酬を受け取ったユウヤ達はギルドを出て、宿に戻り夕食を食べて翌日の予定を簡単に決めてすぐに休んだ。
翌日の朝、ユウヤ達は宿で朝食を食べ前日に決めた予定通りに旅に必要なものをそろえるために町を回った。
必要なものを買い終わったユウヤ達は町で少し早めの昼食を食べ、昼頃に町を出発した。
「このまま西に行けば着くのか?」
「ああ、結構大きい国を通るから野宿の回数も少なくて済むはずだ」
「大きい国?」
「?」
「もしかして、帝国ですか?」
「ええ、そうよ」
ルクスの言葉に田舎の村で育ったユウヤとレティシアには全く心当たりが無かったが、マユリは思い浮かんだ国であっているか確認すると、ルクスではなくレイラが答えた。
レイラの答えを聞いてマユリは納得したような顔をするが、ユウヤとレティシアは分からないままで首を傾げてお互いに顔を見合った。
そんな二人を見てルクスは軽く微笑み話を続けた。
「ユウヤとレティシアは田舎育ちだから知らないのか。結構すごい国だから楽しみにしてろ」
「教えてはくれないんだな」
「それは着いてからのお楽しみってやつだ」
ユウヤとレティシアはルクスの返しに少し不満そうな顔をし、レイラはルクスの言葉に呆れてため息をつき、マユリは苦笑しながら四人を見た。
ユウヤはマユリが帝国と呼んだ国について問いかけた。
「マユリはその国に行ったことあるのか?」
「んーん、私も話では聞いたことがあるけど、実際に行ったことはないよ」
「そんなにすごい国なの?」
「聞いた限りだと、かなりすごい国みたいだよ。私も一度は行ってみたかったんだよね」
「それは少し気になるな」
「ああ、あそこは本当にすごい国だぞ」
話を聞いたことがあるだけのマユリも帝国によると聞いて少し嬉しそうにしている姿と、少し浮かれているルクスを呆れながらも何も言わないレイラを見てユウヤとレティシアも期待を膨らませて帝国に向かい始めた。
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