第82話 町の謎

 イザナミの刀を買った後、二人は町の中を歩いて回り昼食を食べるための飲食店を探して回った。

 ユウヤは今まであまり見なかった珍しい飲食店に興味深そうに周りを見回していた。


「やっぱり、国が違うと食べ物も変わるんだな」

「私が作る料理とあまり変わらないでしょ。手間がかかるうどんやそばは作らないから食べたこと無いだろうけど」


 イザナミは周りを見回しているユウヤを見ながら話しかけた。

 ユウヤはイザナミを見て返事をした。


「まあ、そうなんだが。実際にそういう飲食店が多いと、改めて違うなって思っただけだ」

「じゃあ、今日は普段食べないうどんでも食べに行く?」

「そうだな。じゃあ、それ食べに行こうか」

「じゃあ、美味しいお店案内するわね」

「頼む」


 二人は雑談をしながら、イザナミの案内でうどん屋へ向かった。

 二人がうどん屋に着くと、店員に席に案内されて座った。

 注文はイザナミがユウヤの分も注文した。

 うどんが来るまで二人は雑談をして待ち、うどんが来るとユウヤは初めて食べる料理に少し警戒しながら食べた。


「ん!?美味いな、これ」

「私の料理とどっちが美味しい」


 うどんを一口食べて目を見開いて驚き、少し微笑んだユウヤ。

 そんなユウヤにイザナミはからかうように問いかけた。


「そりゃあ、イザナミの料理の方が美味いな」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

「本当のことだろ。確かにこれも美味しいが、飲食店で食べる料理としては美味しいってだけだ」

「そう」


 ユウヤの言葉にイザナミは嬉しそうに微笑んでうどんの食べ始めた。

 二人がうどんを食べ終わると、イザナミがお金を払って店を出た。


「これからどうする?」

「そうだな。あんまり町に下りて来ることもないし、もう少し見て歩くか」

「そうね。ついでに、少し寄り道していい?」

「ああ、特に行く場所があるわけじゃないからな」

「そう。じゃあ、行きましょうか」


 ユウヤの答えを聞いてイザナミは歩き始めた。

 ユウヤもイザナミの隣で町を見渡しながら歩いて回った。


「そういえば、どこに行くんだ?」

「私がいなくなった後に巫女の仕事を任せる子のところよ」

「ああ、巫女の仕事を辞めるって言いに行くのか?」

「ええ、今年の奉納の舞も任せようと思ってね」

「なるほどな」


 ユウヤはイザナミと話しながら町を見て歩いていると、五十代くらいの女性が二人から少し離れたところで倒れた。

 ユウヤは女性が倒れたのを見て、走って近づいて女性に声をかけた。


「大丈夫か?」

「ええ、少し疲れただけなので」

「家は近いのか?」

「はい、ここから少し行ったところです」

「家まで俺が背負っていくよ。イザナミもいいだろ?」


 ユウヤは女性の答えを聞く前にイザナミに確認を取った。

 イザナミはユウヤの問いに頷いてから返した。


「ええ、そんなに急いでないから大丈夫よ」

「じゃあ、俺の背中に乗ってくれ」


 ユウヤは女性に背中を向けて女性が乗りやすいようにしゃがみこんだ。

 女性は遠慮しようとしたが、余程しんどかったのかユウヤの背中に乗った。


「すみません。ありがとうございます」

「気にするな。困った時はお互い様だ」

「本当にありがとうございます」


 女性はユウヤに何度も御礼を言いながら、ユウヤに家までの道を伝えた。

 ユウヤは女性の指示に従って女性の家に向かって歩いた。

 イザナミはユウヤに背負われている女性を心配そうに見ながらユウヤの隣を歩いた。


「ここで良いのか?」

「はい、もう大丈夫ですので降ろしてください」

「分かった」


 ユウヤは女性の家の前まで来ると、女性を降ろした。

 女性はユウヤとイザナミに頭を深く下げて御礼を言い家の中に入った。

 ユウヤとイザナミはイザナミの目的の場所に向かって歩き始めた。


「なあ、イザナミ」

「なに?」


 ユウヤは先ほどまでと違い何かを探るように町を見回しながらイザナミに問いかけた。

 ユウヤの問いにイザナミも真剣な顔で聞き返した。


「この町、何かおかしくないか?」

「……やっぱり、気づいたのね」

「ああ、最初はあまり気にならなかったが、さっきの女性が倒れたことで気になってな」


 ユウヤが町をしっかりと見回してみると、すれ違う町の人は全員が若く四十代以上の人がほとんどいない。

 さきほどの女性と同じように五十代くらいの人もたまに見かけるが、元気がなく少しふらついている。


「どうして、この町の老人はあんなに元気がないんだ」

「……もう隠せそうにないわね」

「一体何を隠してたんだ?」

「帰ったら、全部話すわ。この町の秘密も私が出した条件も」

「分かった」


 ユウヤはイザナミの真剣な顔を見て今は聞くことをやめてイザナミの目的の場所に向かって歩いた。

 しばらくは気まずい空気だったが、目的の場所に着くころにはいつもの空気に戻っていた。

 イザナミは巫女の仕事を任せる子の家に着くと、扉を叩いて出て来た子と一緒にしばらく話していた。

 話終わったのか出て来た子がイザナミに頭を下げて、二人を見送った。

 ユウヤとイザナミは雑談をしながら神社に向かって歩いて帰った。

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