第80話 休憩
ユウヤ達が魔力の修行を初めて三か月が経ち、ユウヤがイザナミのもとで修行を初めて十か月が経った。
「修行を初めてそろそろ一年経つな」
「そうね。ユウヤも大分強くなったわね」
建物の中の広い部屋で魔力の修行をする前、何となく呟いたユウヤの言葉にイザナミは返した。
「それでもまだイザナミには届かないんだろ?」
「私、依り代でも神様なんだからそう簡単に人間に追いつかれるわけないでしょ」
「けど、一年で対等にはなるんだろ」
ユウヤはイザナミの答えに少し不満そうな顔で聞き返した。
「身体能力と剣技はね」
「ん、どういう意味だ?」
イザナミの含みのある言い方にユウヤは疑問に思い聞き返した。
ユウヤの問いにイザナミはどこからか木刀を取り出して、ユウヤに見せた。
「私には神としての力も依り代になったこの娘の魔力を使った魔法もあるってことよ」
「ああ、そういえばそうだったな、すっかり忘れてた」
ユウヤはイザナミの言葉に納得し声を出していつものように座って魔力の修行を始める準備をした。
「魔法や神の力をものともしないくらい強くなってね」
「剣技の腕を超えるのは難しいとなると、魔力を上げて強くなれと」
「剣技の腕もしっかりと上げないとだめよ」
「分かってるよ」
ユウヤはイザナミに返しながらいつものように魔力を増やすため生成した。
ユウヤは三か月前の十倍、極大魔法十発分の魔力を生成した。
魔力を生成して集中力を落とすと、ユウヤは三か月の間に何度も経験した全身に走るわずかな痛みに顔を少し歪めた。
ユウヤは魔力の制御に意識を回しながら、イザナミに話しかけた。
「そういえば、イザナミは神ってことは勇者より強いのか?」
「神としては強いわよ。けど、依り代の状態だと勝てないかな」
イザナミの言葉にユウヤは呆れたような顔をして返した。
「勇者ってそんなに強いのかよ」
「当たり前でしょ。勇者は私達神や精霊の祝福で生まれた人なんだから」
「らしいな」
「知ってたの?」
イザナミの説明に前にルイスの説明を思い出しながら返した。
ユウヤの言葉にイザナミは意外だったのか首を傾げて問いかけてきた。
「ああ、仲間の精霊王から聞いた」
精霊王の言葉にイザナミは驚いて目を見開いた。
「まさか、仲間に精霊王がいるなんて」
「仲間の一人が精霊に愛されていてな。彼女の護衛らしい」
「あなたの仲間すごいのね」
驚いた顔で言うイザナミにユウヤは自慢げに胸を張った。
「俺の自慢の仲間たちさ」
「仲間に恵まれたのね」
ユウヤの態度にイザナミは優しい微笑みを浮かべて返した。
イザナミの微笑みにユウヤは少し見惚れてたが、意識が逸れたことで全身に痛みが走りすぐに魔力の制御に意識を戻した。
魔力の制御に意識を戻したユウヤは、イザナミに提案するように話しかけた。
「なあ、イザナミ」
「なに?」
「俺達と一緒に来る気はないか?」
「え?」
イザナミはユウヤの言葉に惚けた顔で首を傾げた。
「俺の仲間になって一緒に冒険する気は無いか?」
「……それもいいかもしれないわね」
「本当か?」
断られると思ったうえで聞いたユウヤは、イザナミの意外な答えに嬉しそうに微笑み聞き返した。
「ええ、巫女の仕事もそろそろ他の人に任せようと考えていたころだったから」
「じゃあ……」
「私も一緒に行くわ」
「はあ、良かった」
イザナミの言葉に安心してユウヤは息を吐いた。
イザナミは魔力制御をしているユウヤを見ながら何かを考え始めた。
「ユウヤ、明日の修行は休みにして町に行きましょ」
「別にいいが、どうしてだ?」
「すこし用事があるの」
「ん?そうか」
用事の内容を聞いたつもりだったが、イザナミは話す気がないようなので聞くことを諦めた。
ユウヤは目を瞑り、修行に集中して魔力の操作を始めた。
イザナミは目を瞑ったユウヤを真剣な目で見つめた。
(たった三ヶ月で増やせる魔力量が十倍まで増え、魔力操作もさらに速くなったわ)
ユウヤの成長速度にイザナミは呆れて軽く息を吐いてユウヤの力量を詳しく測り始めた。
(剣技の腕も大分上達したし、魔力も三か月で急激に増えた。私を超えるのに魔力を増やす速度が気がかりだったけど、これなら問題なさそうね)
イザナミは安心したように軽く息を吐いてユウヤの顔を見つめた。
ユウヤの顔を見てイザナミは、ユウヤの仲間になってくれという言葉を思い出して嬉しそうに微笑んだ。
「……ありがとうね、ユウヤ」
「ん?何か言ったか?」
イザナミはユウヤに聞こえないくらい小さな声で呟いたが、ユウヤは内容は分からなかったがイザナミが何かを言ったことは分かったようだ。
「夕飯何を作ろうかなって言ったのよ」
「そうか。俺はなんでもいいぞ」
「分かってるわ」
ユウヤはイザナミに返して目を瞑り、修行を再開した。
イザナミもユウヤの様子を見た後、本当に夕飯何を作るか考え始めた。
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