第77話 修行の発展
ユウヤが剣技の修行を初めて一ヶ月が経った。
一ヶ月の修行でユウヤはイザナミが飛ばす石の速度に慣れ、最初の速度でならずっと続けられるようになった。
石の速度を上げても最低でも三週は続けられるようになり、上手く続けられた場合は一時間程度の間続けられるようになった。
ユウヤはいつものようにイザナミと朝食を食べて、裏庭で刀を抜いていつもの修行をしようと刀を構えると、イザナミに手で構えを解くように指示され、ユウヤは疑問に思いながらも構えを解いた。
「どうしたんだ?」
「今までの修行である程度は剣技を続けられるようになったわ。だから、今日からはさらに厳しい修行に移るわ」
「厳しい修行?」
イザナミの言葉にユウヤは首を傾げて聞き返した。
イザナミは近くにあった木を手刀で斬り倒し、細かく切り分けた。
切り分けた木にイザナミは触れていつものように力を使い木を大きくして少し太い薪くらいの大きさにした。
「今回はこれを斬ってもらうわ」
「斬るものが木に変わっただけじゃないのか?」
「普通に斬ればね」
イザナミの言葉にユウヤが首を傾げると、イザナミは少し微笑んで一つの木を上に投げた。
ユウヤが投げられた木を目で追い、イザナミは木が肩くらいの高さに落ちたところで手刀により木を真っ二つに斬った。
木はイザナミが木を縦に真っ二つに斬ったことで、普通の薪と変わらない太さになった。
「こういう風に太い薪を真っ二つに斬って普通の薪と同じ太さにするの」
「……は?」
ユウヤはイザナミの説明に理解が追いつかずに惚けた声を漏らした。
「言いたいことは分かるわ。この修行はかなり難しいもの」
「あ、ああ。この修行はどんな意味があるんだ?」
「今までの修行は狙った場所を斬るだけ、ここからの修行は相手の防御を上手く避けて相手を斬る修行」
「相手の防御を避ける……」
イザナミの言葉をユウヤは確認するように呟くと、イザナミは頷いて肯定した。
「戦闘中に特定の角度を狙って斬ることはかなり難しい。けど、ユウヤの剣技の特性上どんな角度を斬ることになっても型を変えることは出来ない」
「……それって、今まで以上に型の体制が複雑になるってことか?」
「ええ、地面に足をつけたままだと斬れない場合も必ずあることを忘れないで」
「分かった」
ユウヤは刀を構えて集中力を高めた。
「始めてくれ」
「分かったわ」
ユウヤの言葉を聞いてイザナミは太い薪を石の時と同じ様に飛ばしてきた。
薪は一個一個それぞれの方向にゆっくりと回転しており、斬るための角度が常に変わり続けている。
ユウヤは回転している薪を見て一瞬だけ苦い表情を浮かべ、最初に飛んで来た薪に体を向け、体を少し左側に倒し横なぎの角度を変えて薪に合わせることで真っ二つに斬った。
そこからユウヤは体勢を無理矢理に戻して、二つ目の薪を斬るために少し飛び体を無理矢理に側転のように横に回転させて、上下を反転させた状態で薪を斬った。
しかし、ユウヤは次の薪が飛んでくる前に体制を整えることが出来ずに薪を斜めに斬ってしまった。
「間に合わなかったか」
「ユウヤ、無茶し過ぎよ」
イザナミは薪を飛ばすのをやめてユウヤに近づいて来た。
イザナミはユウヤの腕や足を軽く触り始めた。
「急にどうしたんだ?」
「さっき滅茶苦茶に力を使って体制を戻したでしょ」
「ああ、それがどうしたんだ?」
「丈夫な身体で良かったわね。普通あれだけ無茶な動きすると、骨折してもおかしくくないわよ」
「骨折なんて大げさな」
ユウヤは体を触って怪我をしてないか確かめているイザナミにため息をついて手でイザナミの肩を掴んで引き離した。
「怪我はしてないから大丈夫だ」
「なら、いいけど」
イザナミは無茶をしたユウヤの顔を目を細めて少しの間黙って見たが、軽くため息をついて先ほどのだめだったことなどを説明し始めた。
「ユウヤ、無理やりに体制を変えてもいずれ限界が来るわよ」
「けど、慣れれば……」
「だめよ。無理矢理に体制を変え続ければ刀の勢いが落ちて速度も落ちるわ」
「じゃあ、どうしたらいいんだ?」
「私の舞覚えてる?」
ユウヤの問いに対してイザナミは問いを返してきた。
ユウヤは少し戸惑いながらイザナミに返した。
「ああ、覚えてる。剣技の参考にしたからな」
「それは本番のお祭りで見せた舞でしょ」
「ああ、そうだが」
「練習の時の舞は覚えてる?」
イザナミに言われてユウヤは練習の時の舞を思い出そうとしたが、お祭りの時の舞しかしっかりと思い出せなかった。
「いや、覚えてない」
「なら、ちょっと見せるから良く見ていてね」
「分かった」
イザナミは薪を一つ拾い力を使って薪を木刀に変えて軽く息を吐いた。
イザナミはお祭りの時と同じ舞をお祭りの時以上の速度で舞を舞った。
舞は先ほどのユウヤほど体制が変わるわけではないが、それでも体制はかなり変化するはずなのに、流れるように自然な動きで体制を変えていく。
ユウヤがイザナミの舞をじっくりと見ていると、イザナミは先ほどのユウヤと同じように体を横に倒したり、上下反転したりと体制を変化させた。
「すごいな」
イザナミは先ほど以上に体制を複雑に変化させているが、先ほどと同じように流れるような動きで体制を変えていった。
ユウヤが呟いて少しすると、イザナミは舞を終わらせるとユウヤに近づいて来た。
「分かった?」
「ああ、自然な流れるような動きだった」
「そう。力で無理矢理に変えるんじゃなくて、流れるように変えるのよ」
「難しいが、頑張ってみる」
ユウヤはイザナミの舞を思い浮かべながら刀を構えた。
「イザナミ、やってくれ」
「分かったわ」
ユウヤの言葉を聞いてイザナミは再びユウヤに薪を飛ばし始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます