第76話 剣技の修行
イザナミに剣技を見せた次の日、二人で朝食を食べた後いつもの裏庭でイザナミと向かい合っていた。
「それじゃあ、剣技の修行方法を説明するわよ」
「頼む」
確認するように聞いて来るイザナミに頷いて返すと、イザナミも軽く頷いて説明を始めた。
「昨日確認した限りだと、一応連続で繋げることは出来ていたわ。だから、今日からは間合いに入る標的を斬りながら長く繋げられるように鍛えるわ」
イザナミはそう言うと近くに大量に転がっている前回の修行で使った砕けたり、割られている岩に近づいた。
イザナミが岩に触れると、岩は掌に乗る大きさの球状の石となり大量にイザナミの目の前に転がった。
イザナミはその一つを拾い、こちらに見せてきた。
「私がこれを一定の速度でユウヤを狙って様々な方向から飛ばします。あなたは飛んでくる方向関係なく決めた順番で型を繋げてください」
「それってどういう?」
「例え斬りにくい場所から来たとしても型を変えずに斬るということ」
「分かった」
イザナミの真剣な言葉にユウヤは気を引き締めて返した。
「正直な話、狙いにくい場所でも型を変えられないことが、この剣技が難しい理由よ」
「頑張るよ」
「まあ、やってみればどれだけ難しいか」
「ああ、さっそく頼む」
ユウヤは刀を抜いて集中力を高め、いつでも剣技を出せるように構えた。
「じゃあ、始めるわよ」
イザナミがそう言うと、後ろに転がっていた大量の石が浮き上がり一つずつユウヤに向かって飛んで来た。
「最初はゆっくりだから安心して」
イザナミはそういうが、石は全て時速二百キロ程度でユウヤ目掛けて飛んで行った。
石はユウヤの背後から飛んで来たが、ユウヤは反応して振り向き左から右への横なぎで斬り捨てた。
そこから順番通りに型を繋げていき、一周して二週目の左下から右上への斬り上げが終わったとこに、ユウヤの左足を狙って背後から石が飛んで来た。
ユウヤは慌てて右足を軸に左足を動かして石の方を向いて真下から斬り上げを行い斬る際に位置が低かったため、膝を少し曲げて姿勢を低くしたことで動きが遅れ、背後から飛んで来た石を斬れずに直撃した。
「大丈夫?」
「ああ、丈夫な身体で助かった」
イザナミは心配して近づいて来てユウヤに手を差し伸べた。
ユウヤはイザナミの手を掴んで立ち上がり、刀を構え直した。
「続きを頼む」
「分かったわ。言い忘れたけど、石は全部斬ってね」
「分かった」
ユウヤは少しの間目を瞑り、集中力を高めて目を開いた。
「いいぞ」
「行くわね」
イザナミは再びユウヤに複数の石を飛ばした。
ユウヤはまた型を順調に繋げていき三週目が終わり、四週目の途中で体制を崩して石を斬り損ねて石が直撃した。
「さっきより続いたわね」
「たまたまだ。飛んでくる方向が良かっただけだ」
「そうね。けど、分かったでしょ。型を変えずに無理矢理石を斬るのが大変なのは」
「ああ、イザナミが言っている以上に難しいのが良く分かった」
ユウヤは刀を持った手を見ながら感じたことをイザナミに話した。
「上から来る攻撃はまだ何とかなるが、問題は下から来る攻撃だ」
「下から来る攻撃は体勢を体制を低くしないと、対処出来ない場合があるものね」
「そうだな。それに速度が遅いから何とか判断できているが、これ以上速くなると状況判断が追いつかなくて余計に体制が崩れるだろうし」
「ええ、今はまだいいけど、そのうち魔力操作と同じで考えずに反射のみで体制を体を動かして体制を整え、標的を斬れるようになることが最終目標よ」
「考えずにか、これは本当にきついな」
ユウヤは力なく微笑んで頭を振って刀を構え直した。
「休んでる時間も惜しい、続けよう」
「あんまり焦るのも良くないわよ」
「分かってる。けど、少し焦るくらいがちょうどいいだろ」
「はあ、少しだけですよ」
「分かってる」
それからユウヤは昼食の時間を除いて、日が暮れるまで修行を続けた。
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