第70話 イザナミの舞
ユウヤはいつものように朝起きると、台所に向かい朝食の作っているイザナミに声をかけた。
「おはよう」
「おはよう、ユウヤ。もうすぐ出来るから箸とお茶の準備をしておいて」
「分かった」
イザナミに言われた通りにユウヤは箸とお茶を居間へ持って行き、机の上に箸とお茶を置いてコップを取りに台所に戻ってすでに料理が盛られている皿と一緒に居間へと持って行った。
準備が終わると、イザナミが朝食を作り終わるのを座って待った。
「お待たせ、料理運ぶの手伝って」
「分かった」
朝食を作り終わったイザナミがユウヤのところに来ると、ユウヤに料理を運ぶ手伝いを頼んで二人で台所に向かい、全ての料理を居間へ運んだ。
運び終わって二人は座布団に座って、手を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
二人はいつものように一般的な和食の朝食を食べながら、今日の予定について話し始めた。
「それじゃあ、今日は朝食を食べた後はお祭りの準備をするってことでいいのか?」
「ええ、やることは後で教えるわ」
「その間、イザナミは舞の練習をするんだよな」
「ええ、最初にユウヤと模擬戦をした部屋で練習してるから終わったら呼びに来て」
「分かった」
二人は朝食を食べ終わると、台所に食器を持って向かい二人で食器を洗ってイザナミの案内で建物の外に出て裏庭にあった倉庫に向かった。
倉庫に着くとイザナミは扉についていた鍵を開けて扉を開いて中に入った。
「ここにあるものを整理して欲しいの」
「整理はいいが、具体的に何をすればいいんだ?」
ユウヤの質問にイザナミは置かれている演舞場や屋台を組むための木材の中から一つを取ってユウヤに見せながら説明した。
「これみたいに古くて傷んでいる物とまだ使える物を分けて、使える物はあそこにある雑巾を水で濡らして拭いて綺麗にしてここに戻しておいて」
「分かった。古い物はどうしたらいいんだ?」
「端の方に避けて置いてくれたらいいわ。後で私が直しておくから、明日また整理してくれたらいいわ」
「分かった」
「じゃあ、私は舞の練習をしてるから」
「おう、頑張れよ」
「ユウヤもね」
イザナミはユウヤに手を振って倉庫から出て行った。
ユウヤはイザナミを見送り、倉庫に積み上げられている大量の木材や幕などを見た。
「さて、頑張って整理するか」
ユウヤは呟いた後、大量の木材などを一つ一つ丁寧に倉庫の外に運び出し、倉庫の中を置いてあった箒で履いて雑巾がけをして綺麗にした後、使える物と使えない物に分けた。
分け終わった後、雑巾を洗って一つ一つ綺麗に拭いて綺麗にしてから倉庫の中に戻していった。
使える物を片付けた後、使えない物を倉庫の分かりやすいように端の方に避けて戻していった。
イザナミに言われた作業が終わったのは、昼少し過ぎくらいだった。
「思った以上に時間が掛かったな」
ユウヤは太陽の位置で時間を確認して、イザナミが舞の練習をしている建物の中に入り、模擬戦をした広い部屋に向かった。
部屋の戸を開けて中に入ると、イザナミが木刀を片手に持ち長い黒髪と巫女服の袖をなびかせながら舞っていた。
ユウヤは一心不乱に舞の練習をしているイザナミの美しさに見惚れて声をかけること忘れて見入っていた。
(師匠より洗練された剣技のようで、マユリの踊り以上に人を魅了する美しい舞なのに違和感がない)
まるで見えない敵と戦っているかのように木刀を振るっていながら、頭から足先まで人を魅了するように美しく派手な動きをしていながら不自然さが一切感じられない舞を舞っていた。
ユウヤがイザナミの舞の美しさに見惚れていると、イザナミがユウヤが見ていることに気づいて舞うのをやめてユウヤに声をかけた。
「いたなら声をかけてくれて良かったのに」
「ああ、かなり集中していたからな声をかけるかちょっと迷ってな」
「気にしなくていいのに、それで私の舞どうだった」
「とても美しい舞だったよ」
「ありがとう」
「まあ、練習終わってすぐで悪いが昼食を簡単に作って食べようか」
「そうね」
ユウヤはイザナミと二人で台所に向かい昼食を簡単に作って居間で食べながら話し始めた。
「さっきの舞剣技のように見えたんだが、あれは何なんだ?」
「ええ、少し違うけど間違いじゃないわ」
「?どういうことだ?」
ユウヤはイザナミの言葉に何を言っているか分からずに首を傾げて問い返した。
「あの舞は神話の再現みたいなものだから、神話の剣技を模して舞として踊っているだけで剣技としては実在しないわ」
「つまり、どういうことだ?」
「簡単に言うと、剣技は敵を倒すために動きを限定して急所を狙えるようにするもので、さっきの舞は敵を倒すことより人に見せることが目的って言えば分かる」
「ああ、よくわかった。つまり、剣技ほど敵を倒すことに特化してないってことだな」
「そういうこと」
「なるほどな」
ユウヤは納得したように頷いて残りの昼食を食べて食器をイザナミと一緒に片づけていつも修行をしている裏山に向かった。
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