第22話 魔物の群れ

 ユウヤ達が修行しながら移動すること三日後に目的の場所に到着した。

 目的の場所に着くと、四人は木の影に隠れながら森の奥を見ていた。

 そこには見える範囲だけでも数えるのが嫌になるほど大量の魔物たちだった。

 小さいものはゴブリンや狼などの魔物は見えるもの見えないもの合わせて数千匹を超えるだろう、大きいものはオークやオーガは数十体程度いるだろう。


「すごい数の魔物だな」

「聞いていた話より数が多いようじゃの」

「魔力探知の結果だと一万くらいね。その中に一、二体厄介そうなのがいるわね」

「その魔物があの群れを率いているんでしょうか?」

「恐らくね」

「あの群れを率いてるとかなりの大物ってことか?」

「じゃろうな。まあ、大丈夫じゃろ」

「それじゃあ、私とレティシアが最初に派手にぶちかますわ」

「よし、それを合図にわしとユウヤが突撃しよう。ユウヤは今回は今まで通りに戦っていいぞ」

「分かった」


 四人はそれぞれの場所に移動してレティシア達が魔法を放つまでユウヤと龍壱は隠れて待った。


「レティシア、極大魔法は使える?」

「いえ、高位魔法までしか使えません」

「じゃあ、高位の中で最高火力の魔法を用意して、私は極大魔法を用意するから準備が出来たら私の合図で放ついいわね」

「はい」


 レティシアはドロシーに言われた通りに扱える最高火力の高位魔法を放てる準備をした。

 魔法を放つ用意が終わって少し経つと、ドロシーは魔法の準備を終えた。


(早い、私が高位魔法を準備するのとほとんど変わらないなんて……)


 ドロシーの魔法を用意する早さにレティシアが驚いていると、ドロシーが話しかけてきた。


「準備はいい?」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ、行くわよ」

「はい」


 ドロシーが極大魔法を放とうとするのを見て、レティシアも高位魔法を放った。

 ドロシーの魔法は強大な竜巻を引き起こし数百の魔物を巻き上げ切り刻み、竜巻は分裂し小さな竜巻となってさらに多くの魔物を切り刻んで消え去った。

 レティシアの魔法は巨大な雷の球体を生み出して魔物の群れに大量の雷が降り注いで魔物を焼き払った。

 ユウヤと龍壱は魔法が放たれたことを確認すると、魔物群れに突撃した。

 ユウヤは七割の魔力で身体強化を行い大剣の一振りで数体の魔物を切り裂いた。

 大剣を振り回して突撃していくユウヤとは違う方向から龍壱も刀を振るいユウヤ以上のスピードで魔物の首を的確に斬り落としながら群れの中に突っ込んでいった。

 魔物の群れに突撃するユウヤと龍壱の姿を少し離れたところで魔法で魔物を一体一体的確に打ち抜いていた。


「龍壱さんは相変わらずだけど、ユウヤ君もすごいわね。あの大剣を木の棒でも振るように軽々と振り回して敵を殲滅するなんて」

「ユウヤは七歳の時から剣を振っているから、途中から刀の修行に切り替わったけど、ユウヤは子供のころからあの剣を扱う気で鍛えてたから刀より大剣で戦う方がやりやすいんだと思いますよ」

「へー、ユウヤ君のこと詳しいのね」

「今は戦闘に集中しないので、あんまり長話は出来ません」

「あら、長々と話し始めたのはレティシアの方よ」

「知りません」


 ドロシーがレティシアをからかうような顔でレティシアを見るが、それに気づいてすぐにドロシーから視線を外して魔法を放ち話を切った。


「じゃあ、帰ったらゆっくり話しましょうね」

「……」

「あら、どうかしたの?」

「なんでもありません」


 レティシアはドロシーの言葉にどうやってごまかすかを考えながら冷や汗を流した。


「どうしよう……」


 レティシアの小さい呟きは隣で魔法を同じように放っているドロシーの耳には届かなかった。

 しばらく、魔法を撃っているとユウヤの前に一体のオーガが現れた。

 そのオーガは緑色ではなく赤色の肌をしていて、他のオーガよりも一回り大きくとても体格がいい変わった個体だった。


「あれは……オーガの変異種ね。あの個体が群れを率いているのね」

「あのオーガは何ですか?」

「たまに魔物の中で生まれる特殊な個体がいるのよ。それも通常の個体をはるかに上回る魔力を内包した個体で、そういう個体をまとめて変異種って言うの」

「そんな魔物もいるんですね」

「まあ、稀だけどね。魔物も人と同じで一体一体違うってことよ」

「変異種と接触したユウヤのサポートした方がいいですか?」


 レティシアの問いにドロシーは少し考えて返した。


「しない方がいいわね。オーガの変異種となると下位の魔法はほとんど効果無いだろうし、中位の魔法を使うとユウヤ君も巻き込みかねないわ。それに何かあれば龍壱さんが助けに行くだろうから大丈夫よ」

「分かりました」


 ドロシーはそういう言いながら魔法を放ちユウヤを狙おうとしている魔物を撃ち抜き近づかないようにサポートしていた。


 ユウヤは目の前に現れた先ほどまでとは違った個体のオーガを不思議に思いながら大剣を構えた。


「こいつ、なんだ?」


 赤いオーガは怒り顔で唸りながら手にユウヤの物より一回り小さい大剣を持ってユウヤに襲い掛かってきた。

 ユウヤは赤いオーガの攻撃を回避し、大剣を振り抜くがギリギリで攻撃を回避した。

 赤いオーガが大剣を構えるより速くユウヤは大剣を赤いオーガの頭を振り下ろしたが、オーガの大剣で防がれた。


「!?まさか、受け止められるとは」


 ユウヤは力を込めて赤いオーガを押しつぶそうとするが、赤いオーガは大剣を斜めにしてユウヤの大剣を滑らせて逸らした。


「!?」


 赤いオーガの以外な行動に驚いて固まったユウヤに赤いオーガは大剣を振り下ろすが、全魔力を体に流して身体強化して回避した。

 ユウヤは回避と同時に赤いオーガの大剣を右手で殴り破壊して、もう一度赤いオーガの頭に大剣を振り下ろした。

 ユウヤは勝ちを確信したが、赤いオーガは本能的に動き大剣を白羽取りと言われる両掌で挟んで受け止める方法で止めた。


「この!?」


 ユウヤは先ほどと同じようにさらに力を入れると、赤いオーガはユウヤの力に押されて膝を突き最後はきれいに真っ二つに斬られた。

 ユウヤは予想外にてこずったことに驚いていると、目の前に現れた魔物が氷の槍に頭を撃ち抜かれたのを見て振り向いた。


「なるほど、敵が来ないようにレティシア達がサポートしてくれていたってことか」


 目に入ったレティシア達と二人が撃ち抜いただろう魔物の死体が転がっていた。


「はあ、俺ももうひと頑張りしますか」


 ユウヤは大剣を構え直して残った魔物を殲滅するために、魔物達に向かって走って突っ込んだ。

 それから少しすると、すべての魔物が殲滅された。

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