第47話 大ゲンカ(ラウンド 2)

「わかった。いいよ。じゃあ、話すよ」

 何かをふっきるように、大きく息をついて、はるは日高の前に座った。

「何が気に入らないの?」

「何がって何もかも」

「違うところ探すって言ってるじゃん。何区ならいいわけ?」

「23区外のここがいいの」

「ここは東京って言っても郊外じゃん。はるだって祥子さんの所行くのに遠いでしょ」

「私は移動中の時間も楽しんでいるから」

「あー、そっか。祥子さんに会うまでの道程みちのりが楽しくて仕方ないんだ」

「どうやったら、そういう風に聞こえるわけ?」

 バカなんじゃないの?って、思わず言いかけて、はるは口をつぐんだ。

「ほら今、また何か言いかけてめたでしょ。言えばいいじゃん、思ってること全て。どうせ、お芝居しか能がない高卒ですからねー。大学通ってるモデルさんとは出来が違うからー」

 何こいつ。

 完全に頭にきたんだけど。

 無言になったはるに。

「ほら、結局、だんまりじゃん」

 日高が追い打ちをかけた。

「私はここに残るから。大学も近いし、連ちゃんもめいもいる、鉄工所にも近いから、ここがいい。嫌なら日高一人で出て行って」

 そう言って。

 泣きながら、ベッドルームへ駆け込んだ。

(何あいつ。別れてやる‼︎)

 ふとんをひき被って。

 はるは声をたてずに泣いた。

 日高は。

「じゃあ、そうする」

 そう言って。

 出て行ってしまった。

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