第43話 迷いの中

 ホテルで。

 日高は、はるが一面を飾った週刊誌を全て購入した。

 けれど、ベッドの上に置いたまま、なぜか読もうとはしなかった。

「僕もさっき社長に聞いたら、はるちゃんはただ、パーティーに参加しただけらしいんだ。詳しくは東京帰って、はるちゃん本人から聞いた方がいい」

 太一は日高にそう言葉をかけていたけれど。

 日高は俯いて。

 何も言わなかった。

(はると別れたら、お芝居に集中出来るのかなあ)

 ぼんやり考えてみても。

 答えが出ないくらい、やっぱりはるを求めていて。

 でもどこかで。

 はるを愛していく中での安らぎがなくなっていく事実にも、日高は気がついていた。

 でも。

 翌日、そんな中ででも。

 いや、そんな中だからか。

 日高の集中力は凄まじく。

 一度のNGも出さず、瞳の中の鋭さは、レンズ越しからでも迫力が伝わってくるほどで、

「OK出すの、忘れちゃったよ」

 って。

 監督が笑うほどだった。



「日高ちゃん、荷物持って来るから、ここで待っててね」

「うん」

 ホテルのエントランスで。

 日高は、カウンターに寄りかかって。

 見るともなしに、窓の外に目をやっていた。

 そこへ。

 一台のタクシーが止まった。

 中から現れたのは。

 真っ白いコートと、真っ白い帽子を被った、

 はるだった。

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