第66話
私は勝負に勝ちました。
私もハンザも禁欲生活を守っていたという面も大きかったです。
計算すれば、ハンザが帰国して直ぐの成果だと思います。
私は妊娠したのです!
私とハンザの子、ホワイト王国とドレイク王国を結びつける二人目の子供を妊娠できたのです!
絶対に流すわけにはいきません。
必ず無事に生まなければなりません。
政務を疎かにするわけにはいきませんが、今までと同じようにもできません。
監査というかチェックというか、実務は家臣に任せて、その途中経過と結果の確認だけをやるようにしました。
最初は自分で全てできないことに苛立ちを覚えました。
できるだけ自分でやりたい性格なのです。
ですが、無事に子供を生むという役目の方が大切なのは重々承知しています。
でも任せられる人が限られています。
単に仕事ができる人では駄目なのです。
私が安心できる人でないと、不安が募って心の負担になってしまいます。
そういう意味でも、ハンザが安心信頼できると確認できたのは大きかったです。
アーサーが生まれ、二人目を妊娠したことで、配偶者であるハンザの立場はさらに強くなりました。
まず間違いなく、ハンザは母国であるドレイク王国よりも我が国ホワイト王国を優先してくれるでしょう。
「摂政殿下、ミルドレッド王国義勇軍が出発したと報告がありました」
「そうですか、無事にたどり着いてくれればいいのですが」
海の状態を見て、難破事故が起こらないように細心の注意を払って、ミルドレッド王国義勇軍をマイヤー王国に送り出しました。
ゲラン王国と戦うことなく、せっかくの義勇軍が海の藻屑になるなど、絶対にあってはならないことです。
ですが逆に言えば、ゲラン王国やズダレフ王国にとっては、絶対にマイヤー王国にたどり着かせたくないのです。
我が国に入りこんでいる間者の組織が壊滅することになっても、妨害しようとするとだろうと、少し考えればだれにもわかることです。
いえ、間者組織だけではありません。
我が国に敵意を持っている者、我が国に力を持たせたくない者、ミルドレッド王国義勇軍の縁者に手柄を立てさせたくない者も、あの手この手を使って妨害工作をしてきました。
当然ですが、ゲラン王国やズダレフ王国に内通している者もです。
今回のミルドレッド王国義勇軍をマイヤー王国に派遣する作戦は、味方のフリをしている内部の敵をあぶりだす作戦でもあったのです。
こういう謀略は本来苦手なのですが、今までは私がやっていました。
しかしこんな謀略は、胎教に悪すぎます。
ハンザに任せたいところですが、性格的に不向きです。
ホワイト侯爵家時代からの家臣はもう手一杯です。
しかたなくベイリー王家時代から国に仕える適任者、レイスリーに任せることになりましたが、見事にやり遂げてくれました。
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