第51話
「待ってください、大将軍殿、摂政殿下!
それは幾らなんでも言い過ぎです!
ドレイク王国の名誉を損なう発言です!
撤回して下さい!」
やはりヒルメスが反論してきました。
ハンザの後任大使としてドレイク王国から派遣された第三王子です。
ハンザは文武両道でしたが、ヒルメスは武に偏っています。
ですから知略や損得よりも武や名誉に重きを置いています。
それだけに、私がドレイク王国の義勇兵を謗ったのが許せないのでしょう。
ですが許せないのは私の方です。
「あら?
私、何か間違った事を申しましたか?
私、ヒルメス殿にも何度も何度も御願いいたしましたよね?
何の罪もない民に剣を向け、金品を強請るのも、婦女子に乱暴するのも止めて下さい、ヒルメス殿の力で止めて下さいと。
それが、一向に減らないどころか、むしろ増えています。
彼らに対処するために、民を助けるために、兵を増強しています。
これではドレイク王国の義勇兵ではなく、ゲラン王国の工作兵ではありませんか!
ドレイク王国の名誉を損なったのは私ではなく、ドレイク王国の傭兵であり貴族の子弟です!
本当にドレイク王国の名誉を護りたいのなら、貴男が義勇兵を率いて国に帰って下さい!
貴男や義勇兵がいると勝てる戦も勝てなくなります!」
「そんな事はない!
ドレイク王国の義勇兵は誇り高い勇者だ。
名誉を損なうような事はせん!」
切れましたね。
最初は丁寧な話し方をしていましたが、少し化けの皮がはがれましたね。
「ならばその命を賭けますか?
今後一人でも、金品を強請る者や婦女子に乱暴する者が義勇軍から現れたら、ヒルメス殿が責任をとって自害する。
ここでそう誓えますか?
誓えませんよね?
既に何度も善処すると約束して、その約束を踏み躙って何の責任も取らない、嘘つきで卑怯な恥知らず王子ですものね」
「おのれ、おのれ、おのれ!
自国だけでは国も護れない弱小国がふざけやがって!
そこまで言うのなら自分達だけで国を護ってみろ!
俺は国に帰らせてもらう」
完全に本性が出ましたね。
完全に化けの皮がはがれています。
「帰るのは勝手ですが、傭兵契約を破るのなら前金と違約金を支払って頂きます。
今までの犯罪に対する賠償金も支払って頂きます。
既に今までの事はドレイク王国のオレイク陛下には通達しています」
「それがどうした。
弱者は強者に従うしかないんだ。
ホワイト王国はドレイク王国に従うしかないんだ」
やれやれ、馬鹿としか言いようがありませんね。
ですがこのような馬鹿を送ってきたオレイク王の真意が分かりません。
「もうおやめください、殿下!
何度も本国から叱責の手紙が届いているではありませんか!
このままでは廃嫡されてしまいますぞ!」
「黙れ!
父上の事は母上に任せていればいい。
ここで手柄を立ててら、俺が次期国王だ!」
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